女子100メートル決勝、スタートラインに立った小針陽葉(中央)【写真:荒川裕史】

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インターハイ陸上女子100m決勝で0秒03の2位「ちょっと悔しい!」

 陸上の全国高校総体(インターハイ)第2日は4日、徳島の大塚スポーツパーク・ポカリスエットスタジアムで行われ、女子100メートル決勝(向かい風0.7メートル)で唯一の1年生、小針陽葉(富士市立)が11秒88で2位。優勝した3年生、藏重みう(中京大中京)に0秒03差に迫り、将来の飛躍を感じさせた。

 高校入学から、わずか4か月。静岡の1年生スプリンターが全国2位になった。

 予選、さらに11秒72(追い風0.8メートル)の自己ベストを出した準決を経て、1日3レース目となった決勝。6レーンの小針は「予選、準決は凄く楽しかったけど、独特の緊張感があった」とスタートで体勢が起き上がり、やや出遅れた。

 リアクションタイムで0秒103と抜群のスタートを切った藏重を懸命に追い、持ち味の後半で差を詰めた。ほぼ並んでゴールイン。しかし、結果は0秒03差の2位、距離にして30センチだ。6月の東海大会でも同様に藏重を追い上げ、同タイムで2位となったが、再び3年生の底力を実感した。

「スタートで出遅れた割には藏重さんを追えたけど、東海より背中が小さく遠くに見えた。さすが仕上げてきたなあって。追いきれませんでした」

 1年生にして、夏のインターハイ2位は立派な結果。ただ、本人は「1年生で2位というのは嬉しいのと(優勝を)狙える順位だったので悔しいのと……ちょっと悔しさの方が大きいです!」と天真爛漫に本音をのぞかせたあたり、大物感が漂った。

陸上一家で育った小針、憧れはフレイザープライス&トンプソンヘラ

 陸上一家で育った。元選手だった両親がコーチを務める陸上クラブで、兄・姉の背中を追って小1から競技を始めた。

 中3で全中2位となるなど世代トップクラスの実績を積んできた。憧れは日本人なら福島千里、海外ならシェリーアン・フレイザープライス、エレイン・トンプソンヘラ(ともにジャマイカ)。2人が出場した7月のオレゴン世界陸上は「テレビの前でがっついて見た」という。

「もう、見ていて鳥肌が立ちました。後半の伸びだったり、脚の回転の前さばきだったり……」。興奮気味に語る口調は、陸上愛にあふれていた。

 今後の目標は「高校生のうちは来年、再来年の優勝。高校でタイムは11秒前半から11秒5までは伸ばしたい」と小針。「大学生になったらインカレで活躍したい。いずれは日本代表になって世陸や五輪に出てみたい」と夢は大きい。

「1年生で優勝はおこがましいと思っていました(笑)。でもメダルは欲しかったので3番以内には入りたいと。1年生から全国大会に出られて、全国でしか経験できな緊張感も味わえた。憧れの先輩たちに勝って2位になれてうれしいし、今後のモチベーションが上がりました」

 最後まで明るく笑みを絶やさなかった小針。地元の富士山から望む景色のように、1年生の未来は大きく広がっている。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)