女子400メートル障害で準決勝進出を決めた仙台一・千葉史織【写真:荒川祐史】

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陸上インターハイの“文武両道アスリート”女子400m障害 仙台一・千葉史織(2年)

 陸上の全国高校総体(インターハイ)が3日に開幕し、5日間にわたって熱戦が繰り広げられている。「THE ANSWER」は文武両道で励み、全国の大舞台に出場した選手たちをピックアップ。4日は、政治学者の吉野作造などを輩出した宮城の名門進学校、仙台一・千葉史織(2年)が女子400メートル障害に出場。予選組3着で5日の準決勝進出を決めた。陸上で全国クラスとなり、学業も学年350人中20位という両立の秘訣には「登下校1時間の電車内の習慣」があった。

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「5台目までは練習通り、スムーズな流れは作れたのですが、その中でもまだ改善するところがありました。ハードルとハードルの間のインターバルがちょっと抑えに入っていたので、もうちょっと最初の流れを繋げていくような走りにしたかったし、(ハードル間を)17歩でどこまでいけるかを一つの目安にしているので、19歩にせず、一番上手くこなして17歩でいけるようにしないといけないと思っています」

 10台のハードルを飛び、400メートルを駆け抜けたレース直後ながら、千葉は1分2秒15の間に感じた収穫と課題をすらすらと並べた。

 1892年(明治25年)に開校され、創立130周年を迎えた仙台一といえば、仙台二と並ぶ県内屈指の進学校だ。

 古くは政治学者の吉野作造など、政財界に多くの人材を輩出する。小説家・井上ひさし、映画監督・岩井俊二のほか、多くの才能がこの学び舎から巣立った。男子校から2010年に共学化。制服もない自由な校風と文武両道を標榜し、昨年度は67人が合格した地元の東北大を中心に国公立大学に多く進学する。

「私が一高に行きたかったのも、文武両道がいいなって思ったので」

 古川黎明中から進学した千葉も、その校風に惹かれ、仙台一を選んだ。「宮城の高校は勉強か部活か、どちらかに偏ってしまう学校が多い。でも、一高に行けば、勉強も部活も両方、頑張れると思った」。強い意志で二兎を追ってきた。

 練習は週5日。ただ、1日2時間と短く、自分の創意工夫で両立することが仙台一陸上部の伝統。数学が得意という千葉は、成績は「学年350人で20番くらい」と控えめに笑うが、陸上部でも学業トップクラスの一人という。その秘訣は、登下校中の習慣にある。

「家がわりと遠くて、電車で1時間かかるんです。そこでまとめて時間が取れるので、英単語を覚えたり、課題だったりをこなして、できるだけ時間を有効に活用するようにしています。ちょっと寝ちゃう時もありますけど……(笑)」

 眠気や疲れに負けず、「周りも文武両道でやっているので、それが当たり前に思っている」と勉強も陸上も成績を着実に伸ばしてきた。

勉強と部活の相乗効果「どっちかを捨てて絞った時に…」

 勉強と部活の相乗効果もあるという。

「やっぱり、考える力は自然と身について、競技にも生かされると思います」。自分の体ひとつで勝負する陸上のトラック種目。練習の1本ごとに自ら内省し、動作を改善していく作業の質は、学業で鍛えられる思考力と無関係ではない。

 さらに、スポーツにはコンディションなどで必ず好不調の波がある。

「どっちかを捨てて絞った時に、その一つがダメだったら自分を保つ術がなくなる気がする」。だから、時には2つが相互に心の逃げ場にもなる。「部活がダメな時は勉強を頑張ろうと思えるのが良いところだと思います」と明かした。

 まだ2年生、卒業後は受験で大学進学を検討。将来の夢は漠然としているものの、「今まで陸上では、個人個人としっかり向き合って教えてくださる先生方といっぱい出会ってきたので、そういう人間に私もなりたい」としっかり話した。

「一高は、みんな自分を出していく校風。中学校はどちらかというと和を重んじる空気がありましたが、個人個人の良さを発揮できる。私はそういう(自分を出す)のが、ちょっと苦手な方なんですけど、一高に入ってちょっと変われた気がします」

 ユニホームの胸には、漢字で書かれた「仙台一高」の文字。高校生活の目標は「3年夏のインターハイ優勝と、人間として少しでも成長すること」と千葉。まずは目の前の準決勝ですべてを注ぎ、母校の誇りを10台のハードルにぶつける。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)