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 安倍晋三元首相が凶弾に倒れたことで、「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」がクローズアップされている。民放各社は、統一教会による被害者の実態や統一教会二世信者の苦悩、自民党との関係などを連日のように報じている。ところがNHKは、安倍氏殺害事件の捜査状況や政治家の発言を伝えるのみ。統一教会の深い闇に鋭く切り込んだ報道が皆無なのである。

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【写真を見る】36年前、昭恵さんとの結納を済ませた安倍晋三元首相。当時32歳。

 言うまでもなく、安倍氏を殺害した山下徹也容疑者の動機は、母親が統一教会に多額の献金を要求され、経済的苦境に陥ったことである。一般国民からすれば、自民党はそんな宗教団体と付き合ってきたのか、と問題視したくなるのも当然である。さる民放テレビマンはこう語る。

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「統一教会による信者からの長年にわたる搾取。そして政治家はなぜそんな問題ある宗教団体と付き合っていたのか、等々。統一教会問題は、視聴者にとって今年一番の関心事かもしれません。我々も力を入れて報じています。ところが、民放に比べ、天下のNHKはこの問題を積極的に扱っていません。どうしちゃったんでしょうか。もう少し、視聴者の期待に応えても良いと思うのですが……」

人生を破壊

 例えば日本テレビは、7月12日放送の「news every.」で統一教会が信者に売る書籍について報じた。一般人にとってはほとんど価値のない本を統一教会は3000万円で買わせているという。全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士は「全ての財産は神様。『全てささげなさい』というのが残念ながら統一教会の教えですから、その結果、家庭崩壊になってしまうということです」と解説した。

 同じく、7月28日放送の「news zero」で、有働由美子キャスターは「全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、1987〜2021年の35年間で全国の弁護団などに相談された、いわゆる“統一教会”の霊感商法による被害額は、約1237億円でした。去年も、統一教会から購入させられたとして、印鑑21万円、つぼ70万円、絵画美術品70万円、献金約9000万円など、約3億3000万円の被害が報告されています」と説明した。

 一方、7月13日、テレビ朝日の「モーニングショー」では、統一教会の元信者の女性を出演させている。元信者は衝立ごしに「(山上徹也)容疑者がしたことは何一つ正しいとは思わないが、人生を統一教会によって破綻させられた身としては苦しい心情です。統一教会は人生を破壊します」と語った。

 むろんこれはほんの一部にすぎない。

 民放各社が競って統一教会の実態を報じる中、なぜかNHKだけは、この種の報道がほとんどない。全国津々浦々にある取材網を使えば、まだまだ知られていない事実を掘り起こすことができるはずなのに。なぜなのか。

受信料拒否運動

「NHKには、取材対象者に対するガイドラインがあって、その中に、宗教団体を取材する際、どのように行うか細かく書かれています」

 と解説するのは、放送ジャーナリストの小田桐誠氏。

「ガイドラインには過去の事例も明記されており、前例を踏襲して取材に当たることになっています。NHKは、宗教団体を取材する時は、民放よりもかなり慎重に行います。実態を暴露するような報道はしません。それによって、抗議されるのを嫌うからです」

 統一教会の問題に詳しいジャーナリストの有田芳生氏は、ワイドショーに連日のように出演しているが、7月21日の読売テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」で統一教会と国会議員の関係を暴露した。すると、読売テレビに抗議の電話が殺到したという。NHKにすれば、有田氏の出演はあり得ないということになるのか。

「統一教会は最初、1980年代に問題となり、メディアも大きく報じました。しかし当時からNHKの報道は消極的でした。オウム真理教の時も当初、報道は控え目でした。その他問題ある宗教にも、深い取材はしていません。NHKは、信者数の多い宗教団体に対して、どうしても及び腰になってしまうところがあります。組織的に受信料拒否運動が起こされるのを恐れているからです」

 どうやら、信仰の自由を侵したくないというのとはワケが違うようである。

「統一教会は、オウム真理教よりもカルト色の強い宗教団体と言えます。だから、下手に取材すると、どんな報復がくるかわからない。民放のように、突撃取材などやりません。非常に警戒しているわけですよ。危険を冒すような取材はあえてしないのです」

 NHKに期待する方が無理ということらしい。

デイリー新潮編集部