怖くなかった初めてのインターハイ 学校は「ここから10分」鳴門・竜田そらと徳島の夏
インターハイ陸上女子1500m予選5着、救済で決勝進出「怖がらずに自分の走りできた」
陸上の全国高校総体(インターハイ)が3日に開幕した。5日間、さまざまな種目で高校日本一を決める晴れ舞台は、徳島の大塚スポーツパーク・ポカリスエットスタジアム。女子1500メートル予選では、地元の鳴門・竜田そら(2年)が組5着と奮闘した。開催が決まった中学1年生の冬から想い続けた地元の夢舞台で自己ベストをマークし、他の選手が転倒した影響による救済で4日の決勝進出となった。
◇ ◇ ◇
初めてのインターハイも怖くなかった。
「持ちタイムは組(12人)で一番遅くて。でも、怖がらずに自分のベストを目指した走りができた。今日出せる自分の力は全部、出せたかなって思います」
組5着で駆け抜けたレース後、徳島訛りで話した竜田の表情に屈託のない笑顔が咲いた。
アクシデントにもめげなかった。
各組3着+タイム上位4人が決勝に進める予選4組。想定より位置取りが後ろになり、集団後方でレースを展開。前を走っていた選手の転倒があり、ロスがあった。しかし、集団で隠れそうな小さな体で、自分よりタイムが上位の選手を一人、また一人と抜いていった。
レース直後は言い訳することなく「諦めずに最後まで走り抜けた」と晴れやかに話していたが、救済による17人目の決勝進出者になった。
「この大会のために頑張ってきたと言っても過言じゃないくらい、やってきた」
そう言えるほど、憧れを持ち続けた高2の夏だった。
味方してくれた徳島の空気「ひと回り強くさせてくれる気がした」
中1の冬、2022年インターハイの徳島開催が決定。しかも、地元の鳴門市にあるポカリスエットスタジアムが舞台だった。
鳴門一中から「ここ(競技場)から10分くらい」という鳴門高に進学。「2年生は選手としてものびのびとやれる時期」と1年半後に照準を合わせ、中距離は男子に交じって練習した。入学から地道にタイムを伸ばし、2年目の夏に初めてのインターハイ切符を掴んだ。
「インターハイをこんな地元でできることが凄く嬉しかったし、環境にも恵まれました。一緒に練習してくれたチームメートや顧問の先生に感謝したいし、今日は元気に走る姿を見せられたかなって思います」
4分28秒15は自己ベスト。アクシデントがありながら、全国の大舞台で一気に7秒も更新したことは大きな価値がある。
その力を与えてくれたのも地元の力。「大きい大会になると、“周りの選手が怖く見える”と言われるけど、普段と変わらない優しい雰囲気で競技ができた」。地元の空気を「ひと回り強くさせてくれる気がした」と表現し、笑った。
今大会は800メートルも控えるが「一番好き」という1500メートルに懸け、この大会に挑んでいる。
まずは4日に行われる決勝。残りのレースに向けて「自分の走りがしたい」と意気込んでいた竜田。この場所に怖いものなんてない。4年前からこの夏に懸けてきた想いを、風物詩の阿波おどりも控える徳島の空気が味方してくれる。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)