揖保乃糸ブランドの手延べパスタ「龍の夢パスタ」のパッケージ(兵庫県手延素麺協同組合提供)

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 そうめんがおいしい季節ですが、そうめんの代表ブランドの一つ「揖保乃糸(いぼのいと)」に、パスタや中華麺、うどんがあるのをご存じでしょうか。また、そうめんについても、製造時期や原材料などに応じて7種類以上の等級を設けているそうです。

 ネット上では「揖保乃糸に中華麺があることを初めて知った」「等級があるなんて」「奥が深い」などの声が上がっています。「揖保乃糸」を販売する兵庫県手延素麺(てのべそうめん)協同組合(兵庫県たつの市)の担当者に聞きました。

手延べ技術でさまざまな麺に挑戦

「揖保乃糸」は、兵庫県南西部の西播磨地方(姫路市、たつの市、宍粟市、太子町、佐用町)にある、約430の事業者が製造に携わっています。西播磨地方のそうめん作りは600年の歴史があるとされ、本格的に産地として形成されたのは、江戸時代後期の1820年ごろと言われています。

 手延べうどんは1898(明治31)年から作られていたそうですが、1910年以降製造を休止し、1987年に再開されました。手延べ中華麺は2006年、手延べパスタは2014年にそれぞれ発売されています。

 兵庫県手延素麺協同組合営業部企画課の担当者に聞きました。

Q.なぜ中華麺やパスタ、うどんも製造しているのですか。

担当者「兵庫県手延素麺協同組合は、そうめんの伝統製法や品質を守る組織です。1887年の設立以来、生産者の技術指導や原材料の品質管理、販売などを行ってきました。伝統を守るのも大切ですが、それにばかり目を向けていては時代に取り残されます。揖保乃糸の手延べの技術でいろんな麺に挑戦したいという思いから、日々新たなことに取り組んでいます」

Q.中華麺やパスタの生産量の割合について、教えてください。

担当者「揖保乃糸全体から見ると、ごくわずかです。消費者からは、乾麺の簡便性や、ゆで時間の短さ、手延べ独特の食感やのど越しを楽しめると大変好評です。おいしさは口コミで広がり、テレビ番組などで取り上げていただく機会も増えています」

Q.そうめんの等級を設けたのはいつからですか。

担当者「1894年です。兵庫県手延素麺協同組合の前身である播磨国揖東西両郡素麺製造業組合が基準を設け、検査で1〜7等級に分けました。最上位の『三神(さんしん)』を製造するのは、わずか数軒です。続く『特級』も、製造は組合が選抜指定した熟練製造者に限られています」

Q.麺類の製造時期が10月から翌年4月に集中しているそうですが、なぜですか。

担当者「揖保乃糸は何本もの麺の帯を縄のようにねじり合わせ、縒(よ)りをかけながら、何度も熟成を繰り返して一本の細い麺に仕上げていきます。気温が高過ぎる場合や、湿度が安定していない場合、麺を効率よく延ばすことが難しくなります。そのため、製造は気温や湿度が比較的安定した時期に行い、冬の時期にピークを迎えます。製造は道具の力を借りながら、職人の長年の経験や勘を頼りに効率よく延ばしていきます」