7月30日、ライプツィヒ対バイエルン・ミュンヘンのスーパーカップでドイツの新シーズンが幕を開ける。

 この夏、ドイツでの移籍市場に関する最も大きな話題はロベルト・レヴァンドフスキのバイエルン退団だった。かねてからレヴァンドフスキに移籍願望があることは報じられていたが、オリバー・カーン社長はじめバイエルン上層部には手放すつもりがなく、2023年夏までの契約を全うすると明言。バルセロナからの過去3回のオファーは放置したとされている。

 だが5月、おそらくそんな状況にしびれを切らしていたレヴァンドフスキ本人が、インターナショナルウイーク中の取材の場で、公に退団を希望していることを口にしたことで状況は変わった。水面下では移籍金のつり上げや時間稼ぎといったドタバタ劇が展開され、ようやく決着がついたのは、すでにバイエルンが始動し、レヴァンドフスキもいったん練習に合流してからの7月半ばを過ぎてからだった。

 バイエルンがレヴァンドフスキをバルセロナに売却したことによって得た移籍金は4500万ユーロ(約63億円)、出来高でプラス500万ユーロ(約7億円)とされている。33歳以上での移籍としては、クリスティアーノ・ロナウドを獲得した時にユベントスがレアル・マドリードに支払った1億1700万ユーロ(約153億円)につぐ移籍金だそうで、これによりバイエルンに大きな選択肢が生まれたことは間違いない。

 昨季はフランス代表ダヨ・ウパメカノとオーストリア代表マルセル・ザビッツァーをライプツィヒから獲得した一方、オーストリア代表ダビド・アラバがフリーでレアル・マドリードに移籍。一昨季はドイツ代表レロイ・サネをマンチェスター・シティから獲得する一方で、スペイン代表チアゴ・アルカンタラをリバプールに売却した程度と、堅実な補強を続けてきたバイエルンだが、この夏は、久々に派手な動きを見せている。


リバプールからバイエルンに移籍したサディオ・マネ(右)

 セネガル代表サディオ・マネをリバプールから、オランダ代表マタイス・デ・リフトをユベントスから、同じくオランダ代表ライアン・フラーフェンベルフをアヤックスから獲得。さらに、U−18フランス代表で17歳の期待のストライカー、マティス・テルをレンヌから2000万ユーロ(約28億円)で獲得している。

監督にとっては腕の見せどころ

 一方でドイツ代表ニクラス・ジューレがドルトムントに、フランス代表コランタン・トリッソがリヨンへと移籍。また、フランス代表ベンジャマン・パヴァールも移籍願望があると報じられており、開幕後もまだ少し動きがあるかもしれない。

 さて、レヴァンドフスキという絶対的なストライカーが抜けた今、ユリアン・ナーゲルスマン監督はどのようなサッカーを描こうとしているのか。

 加入前からドイツメディアがあれこれと予想をしていたのはマネのポジションだ。トップでもいいはずだが、ナーゲルスマンはサイドで起用するのではないかとも言われている。その場合、マネはサネやセルジュ・ニャブリらとポジションを争うことになる。

 肝心のマネは、アメリカ遠征に同行したものの、21日のDCユナイテッド戦に出場したあと、アフリカ年間最優秀選手賞受賞のためにモロッコに旅立った。移動による疲労が考慮され、アメリカには戻らずそのままドイツへ。そのため24日のマンチェスター・シティ戦には出場していない。

 マネが先発出場したDCユナイテッド戦では、4−4−2の布陣でニャブリと2トップを組み、PKで1得点を挙げると、前半のみで退いている。この日は6−2でバイエルンが勝利しているが、すべての得点を異なる選手が獲っていた。これまでのようにレヴァンドフスキの得点力に頼ることなく、得点源を分散させることができるかもしれないと期待させた。

 また、3日後のマンチェスター・シティ戦では3バックでスタート。昨季は不安定さを見せ続けた最終ラインを立て直そうと試行錯誤をしている。この日の3バックはパヴァール、ウパメカノ、リュカ・エルナンデスという昨季からのメンバーだったが、アーリング・ブラウト・ハーランドにゴールを決められ、0−1で敗れている。

 いずれにせよこれまでのバイエルンは、レヴァンドフスキという常にセンターフォワードでプレーする選手がいたことで、常にポジションのひとつが固定されていた。それが抜けたことで、攻撃に関してはかなりの変化が見られることになるだろう。マネが毎試合出場することになっても、さまざまなポジションでプレーできるのは大きな違いだ。

 バイエルンの監督に就任して以来、試合中に大きな戦術変更をせず、選手交代の冴えもあまりないと、評価を落としていたナーゲルスマン監督にとっては、持ち駒が増えたことも含めて、腕の見せどころとなるだろう。

 また、大きな移籍がなかったここ数シーズンのバイエルンの弱点は、マンネリだという指摘もあった。「ロッカールームで仲が良すぎるのではないか」「選手がなあなあの関係に陥っているのではないか」などと『ビルト』紙に書かれ、選手が「仲はいいが、決して馴れ合いではない」(トマス・ミュラー)などと反論することもあった。

 そんなチームの雰囲気も、レヴァンドフスキがいなくなり、複数の主力候補の選手が入ってきたことで大幅に変わるはずだ。

 国内2冠はもちろんのこと、今季はチャンピオンズリーグでの躍進も見せたいバイエルン。まずは選手を揃えた。あとはピッチ上で戦うだけである。