『展覧会 岡本太郎』会場入口

写真拡大

7月23日(土)から大阪中之島美術館で『展覧会 岡本太郎』が始まった。岡本太郎と言えば、万博記念公園内にある《太陽の塔》の作者として、大阪人にとってはなじみ深い芸術家だ。

【全15枚】エネルギーあふれる作品の数々!『展覧会 岡本太郎』写真をもっと見る

しかし岡本太郎は、大阪出身のアーティストではない。しかも実は、大阪で岡本太郎の作品を幅広く紹介することさえ、初めてに近い。

この展覧会は、「何かと不安を感じざるを得ない今だからこそ、何か漠然としたものに対して戦い続けてきた、エネルギーあふれる岡本太郎を見せたい」という思いから、企画された。

そもそも岡本太郎とは何者だろうか?

そもそも岡本太郎とは何者だろうか? 6章立ての展覧会場を通して、私たちは知ることができる。

岡本太郎(1911〜1996)は、漫画家の父・岡本一平と歌人で小説家の岡本かの子の長男として生まれる。

1930年から、両親とともにフランス・パリに渡り、《空間》シリーズや《傷ましき腕》を制作し、現地の展覧会で発表した。

第1章では、岡本のパリ時代の作品を紹介。新たに発見された、パリ時代に制作したと思われる作品3点も見ることができる。

戦後、岡本太郎は日本に戻った。第2章、第3章では、岡本が改めて日本を見つめる中で、つくられた作品が並ぶ。

これらの作品は、日本の戦後まもない1940年代後半から50年代に描かれている。作品と向き合うと、その力強い色や筆づかい、表現された形に圧倒されるだろう。岡本はどれだけあふれるエネルギーを持っていたのだろうか。

岡本太郎は、絵画や立体といった表現形態にとらわれることなく、文章を書いたり、書籍の装丁をするなど、さまざまな活動をしていた。

他ジャンルの表現者と交流しながら世界を広げる

第3章を見終わると、いったん美術館の通路へ。岡本太郎のフィギュア、天井から吊られた《光る彫刻》、実際に座れる《坐ることを拒否する椅子》などが置かれて、また違う岡本ワールドを体感できる。

第4章からさらに、岡本ワールドは進化(あるいは深化)していく。大きな画面の絵画、FRPの立体やモザイク・タイルをつかったパブリックアート、家具やインテリアといったプロダクトまで、他ジャンルの表現者と交流しながら、世界を広げていった。

また、大阪ならではの展示もなされている。あの近鉄バファローズのロゴマークが、岡本太郎デザインだったなんて!

そして第5章では、皆さんご存じの《太陽の塔》と東京渋谷駅にある《明日の神話》についての展示空間が広がっている。模型、ドローイングや映像資料で、作品の制作背景も理解できるようになっている。

たえず探求を続けた岡本太郎の姿勢

《太陽の塔》の展示空間を抜けると、《明日の神話》の空間だ。

太陽の塔が1970年、岡本太郎が亡くなったのは1996年。その間の岡本太郎は何してたの?というのが、最後の第6章でギュッと分かる。たえず探求を続けた岡本太郎の姿勢が、作品となって表れている。

注目したいのは、過去の作品に上描きされた作品群だろう。会場のキャプションでは、元の作品と今見える作品の両方を紹介。元のものに加筆しただけなのか、まったく別のものとして上描きしたのかなど、研究はこれからだというが、とても興味深い。

展覧会場には、約300点の作品や資料が並んでいるが、岡本太郎の画業だけを紹介する内容ではない。作品の背景には、岡本太郎が実際に足を運んだ場所、彼の行動力、考え、思い、さらに多くの人たちとの関わりが含まれている。

展覧会を見終わった後、私たちは岡本太郎がどういう人間であったか、ということを改めて知ることができるだろう。

なお、この展覧会は東京都美術館(2022年10月18日〜12月28日)、愛知県美術館(2023年1月14日〜3月14日)に巡回される。それぞれの会場でしか見られない作品もあるので、チェックしてほしい。

開催概要

『展覧会 岡本太郎』
会期:2022年7月23日(土)〜10月2日(日)
会場:大阪中之島美術館 4F展示室
時間:10:00〜18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜(9月19日は開館) *日時指定制
料金:一般1,800円、大高1,400円