今大会で自信をつけた選手は多い

 E-1サッカー選手権優勝をかけた日本対韓国の一戦は、引き分け以上でタイトルを獲得できる韓国に対し、ホームの日本が3−0で完勝。森保一監督にとっては、代表監督として初めてのタイトルとなった。


韓国戦で抜群の存在感を見せた、藤田譲瑠チマ

 試合の流れを大きく変えたのは、後半立ち上がりの相馬勇紀(名古屋グランパス)の先制ゴールだ。前半は両チームともイージーなミスが多く、試合が無得点ドローで終わっても不思議ではない展開だったが、相馬のヘディングシュートが決まったことで、確実に天秤は日本に傾いた。

「早い時間帯に点が入っていれば、香港戦のような結果になっていたかもしれません」

 とは、0−0で終わった中国戦後の森保監督のコメントだが、この韓国戦では、後半の早い時間帯でゴールを奪えたことが、完勝につながったと言えるだろう。

 そんななか、この試合で際立っていた選手がいた。1ゴール1アシストを決めた相馬と、先制ゴールのアシストなど抜群の存在感を発揮していた藤田譲瑠チマの2人だ。

 東京五輪メンバーでもある相馬は、今シーズンのJリーグではそれほど目立った活躍ができていなかったが、今大会では香港戦で2ゴール1アシストをマークし、韓国戦でもチームを勝利に導く活躍ぶりで、大会MVPに選出された。

 これをきっかけに、所属クラブで復調する可能性は十分。仮にその通りになれば、相馬にとってのE-1サッカー選手権は、タイトル以上の意義と価値があったと言えるだろう。

 一方の藤田は、パリ五輪世代の注目株。今回の招集は将来を見据えた部分が強かったと思われるが、いざ蓋を開けてみれば、韓国相手に実力を存分に発揮し、攻守にわたって大車輪の活躍。攻撃面では違いを生み出した。

 とりわけ評価すべきは、初戦の香港戦からわずか1週間ほどで、目に見える成長を遂げたことだろう。しかも香港よりもレベルが高い韓国に対し、いくつかの決定的な仕事をしたのは、その成長速度の速さを証明するものだった。

 20歳という年齢に関係なく、次もA代表で起用したくなる選手。おそらく、森保監督はそう感じたのではないだろうか。少なくとも、今大会で得た自信は再開後のJリーグで生かされることは間違いなく、所属クラブでもさらなる飛躍が期待できそうだ。

 そのほかにも、横浜F・マリノス勢や町野修斗(湘南ベルマーレ)らを中心に、今大会で自信をつけた選手は多い。しかも優勝という結果がついてきたことで、メンタリティの部分も向上するはずだ。

 さすがに今大会のクオリティと対戦相手のレベルからすれば、彼らがカタールW杯のメンバーに加わる可能性は低い。しかしながら、それとは別のところにある意義を、それぞれが見つけられた大会になったのではないだろうか。

<出場選手採点>

谷晃生(GK/湘南ベルマーレ)=6.0点

 東京五輪の正GKが代表デビューを飾った。相手のシュートが4本だったこともあって見せ場は少なったが、77分には好セーブで失点を防いだ。無失点で終え、自信をつかんだはず。

小池龍太(DF/横浜F・マリノス)=6.0点

 先発が予想された山根視来(川崎フロンターレ)がメンバー外となったため、中国戦に続いて右サイドバック(SB)としてスタメン出場。水沼宏太とのコンビも上々で、前半から積極的に攻撃に絡んだ。守備ではやや不安定さも。

谷口彰悟(DF/川崎フロンターレ)=6.5点

 相手の1トップに対して対人の強さを見せ、安定感のあるパフォーマンスで最終ラインを統率した。攻撃面では最終ラインから良質なパス供給を見せ、クオリティを発揮していた。

畠中槙之輔(DF/横浜F・マリノス)=6.0点

 香港戦同様に左センターバックでプレーしたが、イエローカードをもらったほか、細かいミスもあった。守備面では谷口とともに相手FWをしっかり潰して、チャンスを与えない力強さを見せた。

佐々木翔(DF/サンフレッチェ広島)=6.5点

 64分のCKのチャンスでヘディングシュートを決め、中国戦の不出来から汚名返上を果たした。ただ、攻撃面では効果的なプレーが少なく、4バックのSBとしては今回も不発。

藤田譲瑠チマ(MF/横浜F・マリノス)=7.0点

 質の高いクロスボールを供給して、後半に入って49分の相馬の先制ゴールをアシスト。縦パスで町野のゴールの起点となったほか、展開力も見せつけた。守備ではボール奪取力の高さを見せた。

岩田智輝(MF/横浜F・マリノス)=6.5点

 香港戦以上に序盤から前線に顔を出し、豊富な運動量で攻撃にアクセントをつけた。前を意識しすぎたことでスペースを空けるシーンも散見されたが、全体としては上々の内容。

水沼宏太(MF/横浜F・マリノス)=5.5点

 前半からボールに絡み、得意のクロスボールを右サイドから供給したが、香港戦と違って精度が低かった。34分には代表初ゴールのチャンスを迎えたが、シュートはGK正面に。

西村拓真(MF/横浜F・マリノス)=6.0点

 72分のゴールシーンでは、相手ボックス内で小池に絶妙なワンタッチパス。そのほかにもチャンスメイクにかかわったが、決定的な仕事は少なめ。及第点のパフォーマンスだった。

相馬勇紀(MF/名古屋グランパス)=7.0点

 後半早々に試合の流れを大きく変える先制ゴールをヘディングで決め、質の高いコーナーキックで佐々木のゴールもアシスト。大会MVPに選出されるなど、実力を存分に発揮した。

町野修斗(FW/湘南ベルマーレ)=6.5点

 香港戦の2得点に続き、この試合でも72分にダメ押しゴールを決めて勝負強さを発揮した。プレー精度はまだ改善の余地があるが、得点に対する積極性や強気な姿勢は評価に値する。

<交代出場メンバー>

宮市亮(MF/横浜F・マリノス)=採点なし

 水沼に代わって後半途中から右ウイングでプレー。ただ、出場してから15分ほどでヒザを負傷してしまい、78分に交代。不運に見舞われてしまった。

脇坂泰斗(MF/川崎フロンターレ)=5.5点

 西村に代わって後半途中から1トップ下でプレー。短い時間のなかで積極性を見せたが、3−0とリードした状況での出場ということで、攻撃面で能力を発揮できる機会が少なかった。

森島司(MF/サンフレッチェ広島)=5.5点

 宮市に代わって後半途中から右ウイングでプレー。宮市の負傷により緊急出場となったため、難しい状況でのプレーになった。効果的なプレーをできず、不発に終わってしまった。

橋本拳人(MF/ウエスカ)=採点なし

 藤田に代わって後半最後にボランチでプレー。出場時間が短く採点不能。

満田誠(MF/サンフレッチェ広島)=採点なし

 後半最後に相馬に代わって左ウイングでプレーした。出場時間が短く採点不能。

森保一監督=6.5点

 優勝するには勝利が絶対条件というなか、韓国に完勝して代表監督として初タイトルを手にした。ベンチワークで試合を動かしたわけではなく、スタメンの選択が当たった印象。