現役ディーラーが語る、株で負ける投資家に共通する3つの危機的な思考法とは? (写真:SB/Getty Images Plus)

利益を生み出すことは、決して簡単ではない株式投資の世界。20年以上のキャリアを誇る現役トレーダーである筆者は、負ける投資家には3つの共通する考え方があると指摘します。

『1日で数百億を動かす現役ディーラーが教える 勝者のトレード』より一部抜粋・再構成してお届けします。

仕事柄、これまで多くの投資家を見てきました。取引スタイルを投資期間で分類すると、スキャルピング、デイトレード、 スイングトレード、中長期投資などがあり、投資手法には順張り、逆張り、あるいは分析手法にはファンダメンタルズ、テクニカルと多くのアプローチがあります。十人十色の投資家が存在し、やり方もさまざまですが、負けパターンには共通点があります。


出典:『1日で数百億を動かす現役ディーラーが教える 勝者のトレード』(KADOKAWA)

負ける投資家の3つの共通点

負ける投資家の共通点 値ごろ感で取引している

1つ目の共通点は「値ごろ感で取引している」ということです。

値ごろ感というのは、「なんとなく高い」とか、「なんとなく安い」とか、なんの根拠もなしに判断してしまうことです。たとえば、スーパーマーケットへ行って、昨日大根が100円だったとします。それが今日、90円に値下がりしていれば、安く感じます。それで買ってしまいます。

マーケットでは、現在の価格がつねに適正価格です。現在の株価が500円の銘柄があれば、それが適正価格です。昨日の株価が600円でも400円でも関係ありません。過去の価格と比較して、「安い」とか「高い」とか判断するのは意味がないのです。

負ける投資家の共通点 ポジションに依存してしまう

2つ目はポジション依存です。たとえば、トヨタ自動車の株式を購入すると、トヨタを応援したい気持ちになります。ニュースなどを見ていても、自然とトヨタのいい情報ばかり目にとまるようになります。悪いニュースを目にしても、希望的観測でいいほうに考えようとします。

つまり、トヨタの株式を買ってポジションを持ったことで、そのポジションに依存してしまうことがよくあるのです。

投資で利益を得るには、つねに冷静な判断を求められます。上がるのか下がるのか、客観的に判断する目を持っている必要があります。それができなくなってしまうのがポジション依存です。

負ける投資家の共通点 ナンピンをしてしまう

ポジションを持って含み損が出てしまうと、手っ取り早く負けを取り返したいと思います。そのためには大きく儲けなければなりません。そのときやってしまいがちなのがナンピンです。

たとえば、A社の株式を500円で100株購入すると、投資金額は5万円です。その後に株価が400円になると、時価は4万円になり1万円の含み損になります。

その損失を軽減するために下がった株価、このケースでは400円で再び投資してしまうのがナンピン買いです。この場合の投資金額は次のようになります。

1回目の投資=500円×100株=5万円
2回目の投資=400円×100株=4万円(ナンピン買い)

1回目の投資だけでは、購入単価は500円です。しかし、2回目の投資をすると、合計投資額が9万円で200株を保有していることになりますので、9万円÷200株で購入単価を450円に下げることができます。

その後に株価が450円まで回復すれば、損失がゼロになりますし、500円まで回復すれば、50円×200株で1万円の含み益になります。

株価が下がり続けているときにナンピンを繰り返していけば、平均購入単価をどんどん下げることができるので、株価が上昇したときに一気に損失を取り戻せます。

ナンピンは「大ケガのもと」になる

しかし、これが大ケガのもとになるのです。ナンピンで大儲けするには、いずれ株価が上がることが前提です。そのまま下がり続ければ、大きな損失を抱えることになります。その結果、ナンピンする投資家は「頼むから上がってくれ」などと神頼みするしかなくなったりします。


出典:『1日で数百億を動かす現役ディーラーが教える 勝者のトレード』(KADOKAWA)

以上、負ける投資家の共通点を3つ紹介しましたが、これは個人投資家だけの話ではありません。プロの投資家にも言えることです。私自身も値ごろ感で取引をしてしまうこともありますし、ポジション依存もしてしまいます。「これからドルは上がると思う」など、自分が持っているポジションについていいことをTwitterでつぶやいたりします。こうしたポジショントークはポジション依存している証拠です。リスクにさらされている中で、なんとか自分の気持ちを落ち着かせようと思ってポジショントークをすることもあります。

ナンピンも日常茶飯事です。神様へのお祈りもよくしています。すでに20年、この世界にいますが、それでもやってしまうのですから、避けて通れない面があります。では、どうすればいいのか。

「負ける投資家」から脱出する唯一の方法

それは損切りです。当たり前のことだと感じるかもしれませんが、これしかありません。誤解をしないでほしいのですが、「損切りをしない」投資方法もあります。

たとえばレバレッジを抑えて、現物に近い形で長期投資をするのであれば、損切りをする必要はありません。


出典:『1日で数百億を動かす現役ディーラーが教える 勝者のトレード』(KADOKAWA)

10万円の株式を自己資金10万円で買うのであれば、その後、どんなに値下がりしてもマーケットから強制退場させられることはありません。長期投資として株式や外貨を資産のポートフォリオに入れていくというのは、使い方としてとてもいいと思います。

ただ、レバレッジを利かせるなら話は違ってきます。

10万円の自己資金(証拠金)で100万円の投資をするなら、レバレッジは10倍です。この場合、10%値下がりして100万円が90万円になった段階で、自己資金はゼロになってしまいます。


出典:『1日で数百億を動かす現役ディーラーが教える 勝者のトレード』(KADOKAWA)

そうならないためには、損切りが重要です。マーケットで生き残り、相場の世界で収益を上げていくには、損切りは欠かせないのです。

損切りをしなければ1回の失敗で強制退場になる可能性も


どんなに勝っている投資家でも、損切りを怠ったために、1回の取引で退場させられてしまうことがあります。それはプロの世界でも同じです。私はそんな投資家を数多く見てきました。

特に自信があるトレードポイントでは強気になってしまいますし、勝ち続けてきたこれまでの経験値がアダになってしまうこともあります。

マーケットは時に理不尽な動きをします。無慈悲にすべてを奪っていきます。私自身も何度も地獄を見てきました。

そして出した結論が損切りなのです。

(井口 喜雄 : トレイダーズ証券株式会社・取締役(CSO)認定テクニカルアナリスト)