ライブ配信プラットフォームのTwitchでは、何十万人ものフォロワーを抱える人気配信者がたくさん活動しています。そんなTwitchの人気配信者に対して、Twitchの競合サービスである「YouTube Gaming」を提供するYouTubeが積極的に独占契約を交わしており、何人もの配信者がYouTubeに活動の場を移しています。YouTubeがTwitchの人気配信者を囲い込む戦略の狙いについて、アメリカ日刊紙のワシントン・ポストが解説しています。

Why YouTube signed LilyPichu, Myth and other Twitch stars - The Washington Post

https://www.washingtonpost.com/video-games/2022/07/15/twitch-youtube-myth-lilypichu-ludwig/

Twitchの人気配信者であるLilyPichuことLily Ki氏が2022年7月8日に、ライブ配信活動の本拠地をYouTubeのみにすると発表しました。

Ki氏はYouTubeでの最初のライブ配信で、「Twitchだと進む先がないような気がしました。経済的な安定や状況の変化……落ちぶれるなら、お金をもらえるYouTubeで落ちぶれた方がいいだろうと思いました」と語っています。

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そして7月12日には、同じくTwitchで人気の配信者だったMythことAli Kabbani氏も、YouTubeでライブ配信を行っていくことを明らかにしました。Kabbani氏もまた「断るなんてバカげているであろう金額」をYouTubeから提示されたと語りました。

ワシントンポストによると、YouTubeは2019年からTwitchでライブ配信活動を行う配信者と独占契約を交わす戦略を取っているとのこと。一方でTwitchも、人気配信者と「再契約」する動きを見せています。例えば、PokimaneことImane Anys氏はTwitterで「赤(YouTube)か紫(Twitch)かを選ぶ余地なく、私は片方の道を行きます。そしていつも通り、Twitchで」とつぶやき、YouTubeではなくこれまで通りにTwitchでライブ配信活動を続けていく意志を明らかにしました。

「YouTubeに人材が流出している」という表現をするとTwitchから人が離れていっているように思えますが、実際のところライブ配信プラットフォームのシェアはTwitchが圧倒している状況が続いています。調査分析企業のStreamlabsとStream Hatchetが発表した報告によると、2022年第1四半期(1月〜3月)におけるライブ配信の総視聴時間のうち、Twitchが76%を占めており、YouTubeはわずか14%でした。ライブ配信ツールを開発するStream Elementsのジェイソン・クレブスCEOは「LilyPichuもMythも非常に人気がありますが、視聴者の大多数はTwitchで活動する他の配信者のファンでもあります。そのため、Twitchは依然として多くの視聴者から支持されています」と述べています。

人気配信者・Ludwig Ahgren氏が設立したアパレルブランド企業であるMogul MerchのNick Allen社長は、「2020年後半に宇宙人狼ゲーム『Among Us』がYouTubeで大ヒットしてから、配信者同士のコラボレーションという新しい文化が生まれています」と指摘し、「Twitchには10年以上にわたって培ってきた独自の文化が存在します。YouTubeの戦略は、Twitchのコミュニティを刺激して発展させることで、YouTube独自の新しい文化を生み出すことを期待するというものです」と述べています。

by Erick Anthony Dagohoy

人気配信者たちが公に批判しているように、YouTubeのライブ配信プラットフォームとしての機能はTwitchよりも足りない部分が多いといえます。しかし、コミュニティこそがプラットフォームの盛衰を決定し、ツールはあくまでも一部でしかない、とワシントン・ポスト。Allen社長は「実際には機能セットよりも文化の方が重要だと思います。配信者がYouTubeに移行し、皆がおおむね満足していることがわかると、さらにより多くの人が安心してYouTubeに移行するようになるでしょう」と述べました。