●「賢秀はきっと大丈夫です!」優子目線でフォロー

連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK総合 毎週月〜土曜8:00〜ほか)で、主演の黒島結菜演じる比嘉暢子たち4兄妹の母・優子役を好演している仲間由紀恵。黒島と同じく沖縄出身者である仲間は、本作に特別な想いを持って参加したそうだ。夫亡きあと、息子1人と娘3人を女手一つで育てあげた強くて優しい母親・優子役に、仲間はどうアプローチしてきたのか。



『ちむどんどん』は、本土復帰50年を迎えた沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかけるヒロイン・暢子ら4兄妹の奮闘を描く物語。母の優子は、常に人を信じる底抜けのお人好しだ。長男の賢秀(竜星涼)からお金をせがまれると、毎回なけなしのお金を工面してきたが、視聴者から「ちょっと息子に甘すぎるのではないか」という声も上がった。

仲間はそのことについて「最近の評判として、そういう声が多くあるということは認識していますし、それは間違ってはいないと思います」と苦笑しつつ「でもそれは、賢秀という子は長男坊で、とにかく妹たちを自分が守らなければいけないという責任感がずっとあるからです」とまさに優子目線でフォローする。

「賢秀は比嘉家のみんなを幸せにするためにはどうしたらいいかと、ずっと長い間、模索し続けている子だと思っています。根本には家族のために苦労してきた母親や、妹たちのために、自分がなんとかしなきゃいけないという想いがあり、優子はそこをよく分かっているからこそ、頑張っていろんなことに挑戦していく賢秀を、無条件で応援してあげたくなる、という図式です」

では、もしも仲間自身が賢秀にアドバイスとするとしたら? と尋ねると、仲間は笑いながら「大丈夫です!」とキッパリ。「賢秀はあんな調子ですが、あの子は根本がしっかりしていますから。今は苦労する道を自分から選んでいますが、いつもみんなの幸せを考えてくれる子なので、きっと大丈夫だと私は思っています」と心からエールを送る。

そんなトラブルメーカーである賢秀をはじめ、努力家の優等生である長女の良子(川口春奈)、ガッツのある次女の暢子(黒島)、引っ込み思案で病弱な歌子(上白石萌歌)ら子供たちに対して、優子は常に温かい視線を注いできた。そんな仲間に、娘たちの印象についても聞いた。

「暢子は自分がコレだと決めたものや好きなものに対して本当に真っ直ぐに向かっていくとても誠実な子です。でも、一生懸命すぎて、目の前のことが見えてなかったり、ちょっと抜けている部分があったりもしますが、そこも可愛らしいし、その真っ直ぐさが暢子の長所です。また、周りの人たちもそんな暢子を愛してくれるし、支えてくれています」と暢子の人となりを称える。

暢子役の黒島については「結菜ちゃんもそうで、役に対してとても誠実に向き合っています。今回はヒロインという大役を担っていますし、緊張感やプレッシャーも抱えていると思いますが、私たちにはそれを全く感じさせないし、現場では本当に明るくて、キャストさん、スタッフさんにも別け隔てなく親しげに声をかけていく子です。また、同じ沖縄の出身者ということで、私も気持ちが近いと思っています」と同郷ならではの親近感も口にする。



長女の良子については「すごくしっかりしている女の子だからこそ、ニーニーのことを頼りないと思っていて、妹たちのためにも自分が頑張らなければと感じています。好きなことも我慢して生きてきた子だから、その部分がとても愛しいです。時に優子は、良子から厳しく怒られることもありますが、とても頼りにしていると思います」と良子をねぎらう。

そして、良子役の川口については「春奈ちゃんは今、女優としてすごく活躍されていますが、良子という役についてもきちんと捉えていて、まるで憑依しているように演じていらっしゃいます。そばで見ていても、ごく自然体で良子を演じているところがすごいなと思っています」と心から称賛する。

続いて、歌子については「一番末っ子で自分の体が弱いことをとても気にしているし、やりたいことがあってもそれをやっていいのか、自分にできるのかという不安を常に抱えていて、いつも悶々としています。優子としては、そんな歌子がこの先、どんなふうに自分の好きなことを見つけていくのかと心配しつつも、サポートしていきたいと思っています」と大らかに構えている。

歌子役の上白石については「歌子は体が弱いから、気持ちの部分も弱くなってしまった部分もあると思いますが、萌歌ちゃん自体はとても明るい強さを持つ女の子です。目上の人や先輩俳優、子役の子だけではなく、スタッフさんに対しても、自分からどんどん話しかけていくタイプの女優さんで、そこはけっこう意外で驚きました。歌子役と本人とのキャップも素敵だなと思っています」と素顔の意外性について語ってくれた。

●良子の出産シーンでアドバイスも「私の分かる範囲で」

また、良子の出産シーンでは、実際に母でもある仲間がアドバイスをしたとのことで、仲間は「それほどのものではないのですが、自分は出産の経験があるので少しだけ」と恐縮し、柔らかい笑みをこぼす。

「妊婦さんといってもいろんな方がいらっしゃると思いますが、呼吸法やどれぐらい苦しくて声が出ないかということを、私の分かる範囲でお伝えしました。また、妊娠中の動き方というか、体のどこが重いのか、どこがだるいのかという実感が自分の体験としてあったので、春奈ちゃんにもできうる限りをお伝えしたら、彼女はすぐに取り込んでいました。実際に素晴らしい妊婦さんぶりで、出産シーンも本当に頑張ってやっていらしたと思います」

どんなことが起こっても、常に懐の深い愛情を持って、子供たちに接してきた優子。そんな優子の母性は、実際に母である仲間だからこそ、より一層深く醸し出されるだろうか。仲間は「どうなんでしょうか? 自分では分からないですが、子役の時代から子供たちの成長を見ているという設定なので、あんなに小さかった子たちがいろんな壁を乗り越えて、それぞれに自分のやりたいことを見つけ、踏み出しているんだと思うだけでも泣けてきます」と述懐。

そこは、朝ドラならではの長いスパンでの撮影も影響しているようで、仲間は「これだけ長い時間一緒にいるので、子供たちに対して愛情や母性は完全にあるという実感があります。自分が本当にこの子たちの長い人生を見ているという気持ちが、自然と自分のなかに湧いてくるので、みんなが頑張っている姿を見るだけでも、気持ちがジーンとなります」としみじみ語る。

確かに仲間の表情からは、リアルな母性がにじみ出ていて、心がほっこりする。今後も人生のいろんな荒波にもまれていくであろう比嘉ファミリーを応援していきたい。

■仲間由紀恵(なかま・ゆきえ)

1979年10月30日生まれ、沖縄県出身。1995年にドラマ『日本一短い母への手紙2』で女優デビュー。主演を務めた『TRICK』シリーズで注目され、その後も主演ドラマ『ごくせん』で人気を博し、『相棒』シリーズにも長きにわたって出演。NHK大河ドラマは『功名が辻』(06)で主演を務めた。NHK連続テレビ小説は『天うらら』(98)、『花子とアン』(14)に続き、『ちむどんどん』で3度目の出演。映画の近作は『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』(22)、『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』(22)が現在公開中。

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