天然ガス高騰がグリーン認定に与える影響

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●天然ガスのグリーン化を巡って対立

 欧州議会は6日、天然ガスや原子力発電を気候変動抑制に寄与する投資先とする規則案に反対する動議を、否決した。これによって、天然ガスや原子力をグリーン認定する法制化への道が開けたと、ロイター通信が報じている

 だがこれには反発が強く、ロイターによれば、オーストリアやルクセンブルクなどは法制化されれば、EUを提訴するとしており、英国でも首相宛に投資家団体が天然ガスを分類から外すように書簡を送るなど混とんとしている。

 天然ガスはロシアのウクライナ侵攻による供給不安で価格が高騰している。また石油や石炭ほどでなくてもCO2を排出していることや、ロシア依存を高めかねないことから、グリーン認定に反対の声は大きい。

●EUタクソミーとは?

 EUタクソミー(分類)は、企業の経済活動が地球環境にとって、持続可能かどうかを判定し、投資を促す独自の仕組みである。

 その中で、EUグリーン・タクソミーはどのような事業や製品が持続可能かを、“グリーン”として列挙している。

 EUタクソミーでは原子力と天然ガスを“グリーン”とし、EUが目指す2050年までのカーボンニュートラル達成への移行期に必要な経済活動に含めるとしている。EUタクソミー規則が効力を持つのは、2022年からである。

●天然ガス高騰とグリーン

 天然ガスの高騰は、まだまだ収まりそうにない。

 ウクライナ問題に加え、ロシアから欧州へのパイプライン「ノルドストリーム1」がメンテナンスにより供給が減少している。

 価格を吊り上げるための手段との批判もあるが、いずれにしても安定供給は期待できない。

 EUはカーボンニュートラルの旗印を上げているが、自然エネルギーの安定供給は一朝一夕では実現せず、化石燃料に頼らざるを得ない。

 CO2を排出する天然ガスのグリーン認定は、ある意味苦肉の策ではあるが、グリーン認定で排出基準が厳しくなるとさらに供給面が減少する恐れがある。

 インフレ対策をとるか、カーボンニュートラルをとるか、2択を迫られていることの象徴的なニュースでもある。