医療医薬品で国内2位のアステラス製薬(東証プライム)が、好調な収益推移を示している。前立腺癌治療薬が主体。遺伝子・細胞治療薬の技術育成に注力している。

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 前2022年3月期の「3.7%増収、14.4%営業増益、2.9%最終増益、8円増配50円配」に続き今期は、「11.3%の増収(1兆4430億円)、72.8%の営業増益(2690億円)、67.6%の最終増益(2080億円)、10円増配60円配」計画。

 主用医薬品の伸長がその背景。前期でみると、「イクスタジン(前立腺癌治療剤):前々期比16.6%増収」「ゾスパタ(急性骨髄性白血病治療剤):42.9%増収」「エベレンゾ(腎性貧血治療剤):131.5%増収」etcといった具合。また地域別売上高では、国内の7.3%減を「米国13.6%増」「欧州・カナダ・豪州7.5%増」「中国・香港・台湾11.8%増」がカバーした状態。

 株価動向も時価2100円台(予想税引き後配当利回り2・2%強)と年初来高値圏。対してIFIS目標平均株価は、算出アナリスト15人中3人が「強気」の2592円。

 そうした状況下で6月29日、安川健司CEOが『大企業病打破へ』『イノベーションを起こし続ける企業に』とする発言をしたと知った。

 アステラス製薬は安川氏の「何がイノベーションを妨げているのかを調べ、対処法を検討せよ」という指示で、動きを開始した。1年の検討を経て浮上してきたのが、「失敗を恐れすぎる文化」「目標設定が保守的すぎる」「人事の不公平感」「部門ごとの孤立と相互信頼間の喪失」「部門優先主義のはびこり」「ITシステムとプロセスの老朽化」。

 安川氏はこれを受け、具体的にどんな改革策を打ち出していったのか、いくのか。

★「ボーナス査定で部門指標廃止」: 同じ組織体系が長く続くと、全社業績より部門業績が優先するようになる。部門横断的な共通目標に軸足を移すために、例えばボーナス査定を変えた。「全社指標/部門指標/個人指標」から部門指標を外し、2項目に絞った。

★現場のアイディアが経営陣まで届きづらい状況の元凶は「社長から新入社員」まで10階層に分かれていた階層を、1〜2年かけ6階層まで減らし組織をフラットにする計画。

★年功序列を廃止。適材適所の人員配置を行うため空きポストには、国籍・年齢・現在の等級を問わず公募できる「グローバル・ジョブポスティング制度」を導入した。既に300ポストに適用、延べ2000人以上が応募しているという。

 安川氏は、一連の改革を3-4年で仕上げるとしている。

 アステラス製薬は、一皮むけるだろうか!?