ジャイアンツ戦に先発したパドレス・ダルビッシュ有【写真:Getty Images】

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カットボール偏重の2回に失点「曲がり球だけを狙っている感じがした」

■ジャイアンツ 3ー1 パドレス(日本時間10日・サンディエゴ)

 パドレスのダルビッシュ有投手は9日(日本時間10日)、本拠地でのジャイアンツ戦に登板。7回を投げて3安打6奪三振1失点の内容で勝敗は付かなかったが、前回4月12日(同13日)の対戦で今季自己ワーストの1回1/3で9失点のノックアウトを食らった打線相手に101球を投じ役割を果たした。

 相手の狙いをきっちりと見極め流れは渡さなかった。

「どう考えても曲がり球だけを狙っているという感じがしていたので、(捕手の)ノラと『どうなってもいいから真っすぐをいっぱい投げようぜ』っていう話をして。それを変えたことがすごくよかったなという気がします」

 唯一の失点となった2回のマウンドがその後の安定を支えた配球と組み立てを導いた。

 ジャイアンツの各打者はカットボール(曲がり球)への目付けをして一丸で臨んできた。献上した先取点にはその意図が色濃く出ていた。先頭の4番・ベルトにその球を右翼線に運ばれる二塁打を許すと、四球と右前打で満塁とされ、7番・クロフォードには初球のスライダーを狙われ犠飛であっさりと1点を失った。この回投じた15球のうち11球がカッターで、降板する7回までで最も多かった。

 3回は配球を一転。切れのあるツーシームを軸にした。18球中10球を占め、カッターは1球のみ。中盤からはストレート、カーブ、スプリットなど持ち球をバランスよく配して安打は1本に抑えた。

昨年の同カードでは途中から速球勝負、12三振を奪った

 思い起こせば、昨季4月30日(同5月1日)のジャイアンツ戦でも相手の振りから切り替えた投球を見せている。その試合の中盤で主軸のベルトに速球勝負を挑んだ。

「(序盤は)カット、スライダーにちょっと合っていた。凡打でも嫌な感じがあるなと思ったので、カーブやスプリットを入れたり初球にツーシームも投げたりしました」

 あのとき、ダルビッシュはもう一つの意図を口にしている。

「ベルトに対して急に全部速球系でいったのは、相手ベンチにも見せるためで、途中からちょっと“かき回したい”というのがありました」

 ベルトには、縦に変化する97マイル(約156キロ)のツーシームを膝元に決める5球連続の速球勝負。その裏には、敵のベンチを欺くため、最も効果的な、強打者を見せしめにする狙いがあった。次打席を待つ打者の観察眼と、攻略の糸口を探すコーチの炯眼はかすみ、ダルビッシュは2019年9月22日(同23日)のカージナルス戦以来となる12奪三振を記録している。

打線の援護なく日米180勝は持ち越し「我慢してやっていくしかない」

 ロンゴリア、ラステラを怪我で欠く打線は迫力に欠けるだけに、今回は相手ベンチとの駆け引きには至らなかったと明かす。

「ツーシームを投げていくにつれてすごく自信を持っていけたというのがあったので。どんどん速球系でいったというだけで、かき回すというのは、今日は考えてなかったですね」

 今季自己最多の10三振を奪った今月2日(同3日)のドジャース戦では、1イニング3被弾の辛酸をなめたが6回を持ち堪えた。5月19日(同20日)からの9登板で強靭な心身を映す100球を費やす6回以上の登板はこの日を含め8度を数える。まさに試合を作る投球を積み重ね、チームの信頼は揺るぎない。

 3登板連続で白星から遠ざかり、日米通算180勝に足踏みが続くダルビッシュ。今後への気持ちを問われると、淡々と返した――。

「我慢してやっていくしかないのかなと思います」(木崎英夫 / Hideo Kizaki)