電動キックボードの飲酒運転が急増し、警察やシェアリング事業者、飲食店が啓発に乗り出しました。2年以内には基本的に免許不要となる電動キックボード、その気軽さゆえの意識を、関係者らは免許が必要な今のうちに正していく構えです。

夜間の電動キックボードシェア「利用停止」 飲酒運転防止

 コロナ禍の行動制限が緩和され、電動キックボードの利用が大幅に増える中、飲酒運転による違反が目立っています。警視庁はシェアサービスの業界団体とともに、飲食店への協力要請を行っています。


渋谷駅付近のLuupのポート。週末夜間に利用制限をかける(中島みなみ撮影)。

 事態を重く見た電動キックボードなどのシェアサービス「LUUP」を展開するLuupは、新宿、渋谷、六本木の繁華街3エリアにある10か所のポート(電動キックボードの乗り場)で、週末24時〜5時の夜間利用制限に踏み切りました。対象ポートの電動キックボードを遠隔で操作し、利用できなくします。

 10か所のポートには「飲酒撲滅のための対策として特定の夜間乗れなくなっております」という説明が掲示されています。利用停止時間中は、車両にスマホのQRコードをかざすと「このポートは現在乗ることができません」という通知が出るだけで、車両の電源が入らない仕組みです。

 社長兼CEOの岡井大輝氏は、その判断についてこう語ります。

「利用制限は抜本的な解決にはならない。根本的に正しいルールの啓発活動、逸脱した違反行為は取締りがあるということを浸透させる必要があると考えている。ただ、短期的には『利用できない』ということが大きな啓発活動になる」

電動キックボードも「STOP! 飲酒運転」

 2022年7月4日夕方の渋谷区道玄坂。岡井氏が会長を務める業界団体「マイクロモビリティ推進協議会」と警視庁交通部が駅周辺の飲食店を訪問し、飲酒運転防止の協力を呼びかけました。「STOP! 飲酒運転」と書かれたコルク・コースターなど飲酒運転の根絶を訴えるグッズを店舗や通行人に手渡す関係者ら。飲酒の機会が増える夏場の呼びかけは珍しくありませんが、そこには交通総務課長の姿もありました。

 その狙いを田中真美課長はこう話しました。

「電動キックボードでも飲酒運転は重大な犯罪である。運転することを知りながらお酒を提供すると、場合によっては飲食店も責任を免れない。周知とともに、我々もしっかりと取締りをしたい」

新しい乗りもの、交通ルールどう伝えるか

 協力を依頼されたワイン&カフェ「Sai」(サイ)の福泉栄治店長は、こう話します。

「飲酒運転の防止は、警察とシェアサービスの事業者、我々のような飲食店が三位一体で取り組んでいかないとだめだからね」

 電動キックボードの利用は「昨年比で10倍以上」(Luup岡井社長)と、好調です。今後。2年以内の改正道交法が施行されるタイミングでは、シェアサービス以外にも個人所有の電動キックボードや、それ以外の新しい乗り物も増えることが予想されます。

 そうした状況で、電動キックボードの飲酒運転が急増しました。東京都内では2022年6月末で23件。現行法では電動キックボードにも運転免許が必要であり、重大な違反といえます。


飲酒運転防止呼びかけの先頭に立つ警視庁田中交通総務課長(中島みなみ撮影)。

 冒頭の利用制限のほかにも、Luupはスマホのアプリを立ち上げた時に違反走行の注意喚起を新たに加えました。また、Luupのサービスは事前にスマホで交通ルールに関するテストを受けて全問正解しなければ利用できない仕組みですが、そのテストも警察庁などの監修を受け内容を刷新、難易度を上げていく方向です。

「法改正に伴って電動キックボードが市場に増えていく前に、黎明期である今、しっかり正しいルールを知っていただく努力を尽くす必要がある」(Luup岡井社長)

 改正道交法が施行されると、電動キックボードなどの「原動機付自転車(特定小型)」は、16歳から免許不要で運転できるようになります。原付免許必須で免許教育が行き届く今、交通ルールの浸透が求められています。