歯のオールセラミックって何がいいの? メリットやお手入れ時の注意点

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歯の欠損を補う治療の選択肢として、オールセラミックがあります。保険が適用されない、自費による治療ですが、見た目の美しさや機能性などから多くの人がオールセラミックを採用しています。一体、オールセラミックにはどのような利点があるのでしょうか。また、長持ちさせるために必要なお手入れとは? 中西歯科医院の中西茂先生にお聞きしました。

監修歯科医師:
中西 茂(中西歯科医院 副院長)

2008年北海道医療大学卒業。同大学研修後、もりかわ歯科志紀診療所院長を経て2017年より現職。歯科医院の苦手な人にもわかりやすい治療を徹底。一度治療した歯の再治療を限りなく減らすことを心がける。

セラミック治療とは?

編集部

セラミック治療とはどのようなものですか?

中西先生

一般的に、むし歯などで歯がなくなってしまったところにセラミックの詰め物や被せ物を使用し、再び噛めるように治す治療をセラミック治療といいます。

編集部

そもそもセラミックとはなんでしょうか?

中西先生

簡単にいえば、「陶器」のことです。茶碗やお皿などにも使われている素材なので、誰でも触れたことがあるでしょう。実際にはセラミックといっても、素材の違いによってさまざまな種類があります。

編集部

どのような種類があるのですか?

中西先生

まずは、100%セラミックでできたもので、これは「オールセラミック」と呼ばれます。そのほか、天然ダイヤモンドといわれるジルコニアで作る「ジルコニアセラミック」や、一部プラスチックを混ぜて作る「ハイブリッドセラミック」があります。

編集部

それぞれ特徴が異なるのですか?

中西先生

はい、強度でいえばジルコニアセラミックが一番硬く、ハイブリッドセラミックが一番弱くなります。しかし、ジルコニアであっても割れないということではありません。そして、強度が高ければ高いほどよいというわけでもなく、周囲の歯とのバランスを考えなければ、その他の歯はダメージを受けてしまいます。また、セラミックは種類によって治療費が異なるので、予算や治療する歯の位置などを考えながら、選択することをお勧めします。

オールセラミックの特徴は?

編集部

100%セラミックで作られるオールセラミックの特徴を教えてください。

中西先生

オールセラミックの一番のメリットは、なんといっても経年劣化しにくいところです。金属でも質の悪い金銀パラジウム合金などは、5~7年で錆び付いてしまいますし、プラスチックは汚れを吸い込みやすく、年数が経てば劣化してしまいます。しかしセラミックは茶碗やお皿と同じ材質のため汚れがつきにくく、トラブルがなければずっと使うことができます。

編集部

長く使い続けられるというのが、一番のメリットなのですね。

中西先生

意外と知らない人が多いのですが、1本の歯は、およそ5~6回しか治療をすることができません。なぜかというと、治療をすればするほど歯がなくなってしまい、やがて歯の上に被せ物を置くことができなくなってしまうからです。そのため、当院では長く使えない一部の金属やプラスチックよりも、10~20年使ってもらえるセラミックをお勧めし、歯の治療回数をできるだけ少なくすることで、歯そのものの寿命を伸ばすように心がけています。

編集部

ほかには、どのような特徴がありますか?

中西先生

当院では、その日のうちにセラミックをお口のなかに入れられるよう、迅速性を大事にしています。そのため、当院はCAD/CAMシステムを用いて治療を行っています。これは粘土を用いて型を取るのではなく、光学印象という光で型取りを行い、コンピュータ上で設計から削り出しを行うため、通常1週間から10日でセラミックができるところ、最短1時間でできあがります。

編集部

1時間でできあがるとは、早いですね。

中西先生

そのあと、技工士さんに調整・研磨をしてもらい、その日のうちにお口のなかに入れて使ってもらうことが可能です。なぜ、その日のうちに入れるのが良いかというと、汚れは6時間くらいで歯の表面についてしまうからです。

編集部

汚れがついてしまうと、仕上がりに影響するのですか?

中西先生

通常は粘土で型取りをし、1週間~10日後にセットします。セラミックが出来上がるまでは、歯の欠損部分に仮蓋をしますが、細菌はどこでも入ってしまうため、蓋のなかにもプラークや食べかすが侵入してしまいます。汚れがあるところにセラミックをつけるのと、汚れがないところにセラミックをつけるのとではむし歯の再発リスクが大きく違うため、型取りをした当日にセラミックをつけることを徹底しているのです。

編集部

なるほど。では反対に、オールセラミックのデメリットはありますか?

中西先生

デメリットとしては、自費診療になるので治療費が高額ということがあります。また、特に男性など、噛む力が強い人はオールセラミックといえども欠けたり、割れたりする場合があります。特に噛む力が強くなる奥歯に使用する場合は、歯科医師に相談すると良いでしょう。

オールセラミックのお手入れは、どうすればいい?

編集部

さきほど、オールセラミックの平均耐久年数は10~20年とお聞きしましたが、永久に使い続けられるわけではないのですね。

中西先生

確かに平均では10年程度とされていますが、お手入れの仕方次第ではもっと寿命を伸ばすこともできます。反対に、お手入れの方法が悪いと、10年もたずに歯が欠けたり割れたりしてしまうこともあるので、注意が必要です。

編集部

寿命を長く伸ばすためには、どのように手入れをすれば良いのでしょうか?

中西先生

まずは当然ですが、歯磨きを徹底することが必要です。歯磨きを怠ると、詰め物や被せ物の間に汚れが溜まり、むし歯や歯周病の原因になってしまいます。また、歯磨きをする時はやさしく行うことも大切です。毛が硬い歯ブラシを使ったり、ゴシゴシと強くこすったりすると、歯や歯肉を傷つけてしまうことがあります。

編集部

ほかには、どんなことに注意すれば良いでしょうか?

中西先生

歯ぎしりをする癖がある人は、知らず知らずのうちにセラミックが欠けたり割れたりすることがあります。ナイトガードというマウスピースを就寝中に使用することをお勧めします。

編集部

治療が終わったあとも、通院する必要はありますか?

中西先生

セラミックの寿命を長持ちさせるために、歯科医院へ定期的に通い、クリーニングをしてもらうと良いでしょう。歯科医院では、日常的な歯磨きで落としきれなかった汚れを特殊な機械で取り除きます。また、セラミックや周辺の歯に異常がないかどうかチェックしてもらい、問題があればすぐに対処することも、寿命を長くするためには大切です。

編集部

最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。

中西先生

セラミックは、現在、歯科治療で使われている材料のなかでは経年劣化もなく、硬さもあり、汚れがつきにくいため、もっとも良い材料と言えると思います。もし今、金属やプラスチックの詰め物や被せ物を使っていて、やり直しを考えている場合には、セラミックで治療することを強くお勧めします。ただし、セラミック治療は手技のひとつであり、天然歯に勝るものはありません。セラミックで治療するのではなく、セラミックで治療する必要のないくらい健康な歯を維持することを、ぜひ、心がけてもらいたいと思います。

編集部まとめ

審美面、機能面から考えて、オールセラミックはすぐれた治療法といえますが、オールセラミックといえども天然歯には劣ります。高齢になっても自分の歯で飲食することができるように、若いときから口腔内の衛生管理を徹底することが大切ですね。

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