スマホで薬物を買う子どもたち(新潮社)

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 人気アイドルグループの元メンバーが、覚せい剤を所持していたとして逮捕されたのは記憶に新しい。ここ最近はスマホで薬物に手を染める子どもたちも増えているという。

 これまで日本は、先進国にしては例外的に薬物乱用が少ない国だったが、ネットやSNSの普及によって、誰もがどこからでも薬物にアクセスできるようになってしまった。子どもたちの交友関係も見えづらくなっている今、親の不安は募る。


 2022年7月19日に厚生労働省麻薬取締部(通称:マトリ)のトップを務めた瀬戸晴海さんによる『スマホで薬物を買う子どもたち』(新潮社)が発売される。

「密売の自由化」が始まっている

 実際の薬物の取引画面を見ると「野菜」「ストロベリーコフ」「ウエディングケーキ」などの隠語が使われている。この画面を見て、あなたは薬物の取引だと見分けられるだろうか。

画像は、ネットでの薬物の取引画面(新潮社提供)

 2020年には薬物事犯の検挙数は過去10年で最多を記録したという。特に、大麻乱用が増えている。

「一部の若者はお酒を飲む程度の軽い感覚で大麻に手を出します。それのみならず、クラブに繰り出すときにはMDMA、身体をシャキッとさせたいときには覚醒剤やコカインと、多剤を乱用する者も珍しくありません。」(「はじめに」より)

 瀬戸さんは、素人が密売人になることも特殊なケースではなくなり、「密売の自由化」が始まっていると警鐘を鳴らす。

 今やどの子もスマホに触れる時代だ。「ウチの子は大丈夫」と楽観的に構えるのは危険。犯罪に巻き込まれないよう、大人が最新の知識を身につけておくことも、子どもを守ることにつながる。

 本書の目次は以下の通り。

■目次
はじめに――ネットで激変、薬物事情の今

第1章 スマホとクスリ――SNSでは毎日が「薬物」特売セール
SNSの普及がもたらした「密売革命」  隠語を駆使するネット密売の実態  最新のトレンドは「絵文字」  子どもが持つスマホのアプリは要確認

第2章 「わが子に限って」は通用しない(一)――真面目な女子大生が大麻に嵌るまで
最愛の娘が尿の提出を求められた  沖縄旅行で「大麻」初体験  ツイッターで売人に接触  ついに家族にバレるも......  マトリの「ガサ入れ」に遭遇  大麻は「お洒落なハーブ」  薬物乱用は仲間へ伝播する  「金パブ」に酔う若者たち

第3章 「わが子に限って」は通用しない(二)――女子高生を狙う「レイプドラッグ」
睡眠薬が犯罪ツールに  「お姉ちゃん、泣いてるで」  少女に何が起こったか  「学校にも友達にも知られたくない」  出会い系はネット犯罪の温床  「ツイッターはかかりがいい」  SNSで騙されないための注意点  お酒もレイプドラッグになる  出会わなくても「性被害」には巻き込まれる

第4章 「わが子に限って」は通用しない(三)――大学生が覚醒剤密売に手を染めるまで
わが子が密売人として逮捕される  プロが嗅ぎ取った"あやしい"兆候  垣間見える「特有の症状」  ガサ入れ開始  サイレン音で激しい発作  「エスはすげえぞ」  失恋の痛手から薬物に嵌る  タタキに遭った素人「密売人」  親からもらった金が注射痕に化ける  薬物の本当の怖さ  骨までしゃぶるから"シャブ"

第5章 乱用から依存、そして死へ――薬物乱用者のリアルな証言
薬物乱用者は見た目で分かるのか  入手先は意外な人物  「乱用」の結果、「依存」が生じる  精神依存と身体依存  なぜ5回も6回も逮捕されるのか  多岐にわたる薬物の種類と、その効果  記憶に残る乱用者「健太」の証言  深入りした先に待つのは死のみ

第6章  危険ドラッグが奪った人生――「被害者にも加害者にもなってほしくない」
猛毒「危険ドラッグ」  数週間で「新種」が登場  遺族の悲痛な胸中と、切なる願い〈長野県中野市での事故〉〈香川県善通寺市での事故〉  二度と悲劇を繰り返してはならない

第7章 緊急提言:大麻合法化は危険である
近年、海外での一部合法化とともに、依存性や健康被害が少ないという安直な誤解が広がり、若者たちの間で急速に蔓延しているのが大麻だ。そもそも大麻とは何か、危険性はどこにあるのか。成分や効力など基礎知識から最新事情まで、27の質疑応答。

薬物は「自分事」――あとがきに代えて
※画像提供:新潮社

書名:  スマホで薬物を買う子どもたち
監修・編集・著者名: 瀬戸晴海 著
出版社名: 新潮社
出版年月日: 2022年7月19日
定価: 924円(税込)
判型・ページ数: 新書判
ISBN: 9784106109577


(BOOKウォッチ編集部)