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●「湘南ベルマーレの攻撃をけん引している」背番号18

明治安田生命J1リーグ第19節、湘南ベルマーレ対名古屋グランパスが2日に行われ、0-0の引き分けに終わった。4勝1敗1分と好調を維持する湘南を牽引するのは、その間に6得点を挙げている町野修斗だろう。サッカー日本代表入りへの期待も高まる長身FWは、攻撃のリズムを生み出している。(取材・文:元川悦子)
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【動画】驚異の決定力! 町野修斗の今季7ゴールがこれだ!

「J1・5位を狙う」という大きな目標を掲げながら、湘南ベルマーレは今季の開幕から8試合未勝利という苦境に直面した。4月17日のガンバ大阪戦でリーグ戦初白星を飾ったものの、そこから再び4戦未勝利。山口智監督も1勝の難しさを切々と感じていたはずだ。

 しかしながら、5月21日に残留争いのライバル・ヴィッセル神戸を撃破してから風向きが大きく変化する。J1王者・川崎フロンターレを4-0で粉砕し、直近2戦ではFC東京と京都サンガに連勝。18試合終了時点で15位まで順位を上げてきていた。

 その立役者は、今季8ゴールと勢いに乗る22歳のエース・町野修斗だ。大阪・履正社高校から2018年に横浜F・マリノス入りした後、翌2019年にギラヴァンツ北九州へレンタルされ、2シーズンプレー。2021年から湘南に完全移籍してきたプロ5年目の大型FWだ。

「日本人では上田綺世に次ぐ2番目の得点を取っている選手で、背後の抜け出しや前線の起点になるプレーで湘南の攻撃をけん引している。非常にアグレッシブにチャレンジする姿勢がすごくいい」と日本代表の森保一監督も前向きに評価。7月19日に開幕するEAFF E-1サッカー選手権の有力候補と目されるまでになった。

 昨季からの最大の課題だった「確固たる得点源」が生まれたことで、湘南は勝ち点を積み上げられるようになってきた。その流れを持続すべく、7月2日の名古屋グランパス戦に勝って3連勝したかった。

 同じ3-1-4-2の布陣を採るチーム同士の一戦は、序盤から湘南が主導権を握った。田中聡のロブパスを瀬川祐輔が積極果敢に狙った開始3分の決定機を皮切りに、彼らは得点への意欲を強く押し出した。特に町野と瀬川の2トップ、右インサイドハーフの池田昌生、右ウイングバックの石原広教のユニットが絡んだ攻めには迫力と厚みが感じられた。

●「守る側としても嫌だった」名古屋グランパスから見た湘南ベルマーレの攻撃

「昌生と町野、僕という関係性は良くなってきてますし、広教とか(高橋)諒、畑(大雅)まで見て、流れるように意識しています」と瀬川は語る。彼の気の利いたポジショニングや相手をはがす動きがアクセントになっているのは事実だ。

 対峙した名古屋の中谷進之介も「2トップが前後に位置して、ボールを取った後の深さを作っていたんで、守る側としても嫌だった」と威圧感を覚えながらプレーしていたという。瀬川らの力強い援護射撃によって、町野のゴール数が増えていると言っていい。

 彼らアタッカー陣がうまく絡んだ最たるシーンと言えるのが、32分の決定機だ。名古屋の中谷が内田宅哉に出した瞬間、高橋がプレスをかけてボールを引っかけ、拾った田中聡が縦パスを入れて杉岡大暉が前方へフリック。ここに瀬川が侵入し、ゴール前にラストパスを送った。次の瞬間、町野は完全フリー状態になる。

 しかし、左足のシュートは惜しくも枠の上。対峙した名手・ランゲラックの威圧感を覚えたのかもしれないが、これは是が非でもモノにしたかった。「町野には決めてもらいたかった」と瀬川も悔しさをにじませたが、本人が誰よりも強くそう感じているはずだ。

 ただ、こういった守から攻の鋭さと素早さ、複数人の連動性が出せているのは湘南にとって非常に明るい材料。町野という得点源に全体が引っ張られているところはあるだろう。

●「同じことを繰り返してもダメ」

 後半突入後も湘南のアグレッシブさは衰えなかった。山口智監督は途中からタリクとウェリントンを投入。高さとパワーのある人材を前線に配置して名古屋守備陣に襲い掛かる。それでも相手の手堅い守りは崩れず、スコアレスのまま時間が過ぎていく。終盤には杉岡の左CKが5本連続であったが、わずかに精度を欠き、1点をもぎ取ることはできなかった。

「セットプレーに関しては、同じことを繰り返してもダメ。ショートであったりキッカーを変えたりと変化をつけることが必要かなと感じた。中の入りも迫力がないし、単調では崩せない」と山口監督も苦言を呈したが、膠着状態を打破するためにも、リスタートの工夫をもっともっとつけることが、彼らにとっての今後の課題と言っていい。

 さらに厳しかったのが、後半ロスタイムにエース・町野がチアゴにチャージを受け、左足首をねんざするアクシデントにも見舞われたこと。試合は0-0で終わり、勝ち点2を失うという厳しい幕切れに加え、町野が今後数試合欠場を強いられることになれば、湘南にとっては痛手となるだろう。

 J1はここからE-1サッカー選手権の中断まで3連戦と過密日程となるだけに、いかにして点を取ってポイントを上積みするかというのは、彼らにとって非常に大きなテーマになってくる。

●湘南ベルマーレは「町野修斗だけじゃない」

「町野に頼って勝つのは僕も嫌だし、他の選手もそうだと思う。町野が出られないんだったら、大橋(祐紀)やウェリ(ントン)がいますし、僕も出たらアシストとかゴールという結果にもっと絡みたい。『町野だけじゃない』ってところをしっかり表現することで、自然と順位が上がっていくと思います」

 瀬川は語気を強めていたが、「町野効果」で攻撃のリズムが生まれている今だからこそ、幅広い得点源を作り上げていくべきなのだ。確かにここまで大橋、ウェリントン、瀬川が揃ってリーグ1ゴールというのは物足りない。彼らが奮起し、「どこからでも点が取れる」という状態を作ること。それが湘南のJ1残留の絶対条件と言っても過言ではなさそうだ。試合内容で名古屋を上回ったことを自信にしつつ、貪欲に前進してもらいたい。

 町野に関して言うと、怪我の状況によってはE-1サッカー選手権での日本代表入りが微妙な情勢になってきた。上田のベルギー移籍もあり、前線でターゲットマンになれるタイプの日本人FWが少ない中、彼への期待値は高い。相手を背負って起点を作れる185cmの長身FWは今後の日本サッカー界のためにもじっくりと育てていくべき。町野自身もここで国際舞台に立てるか否かはこの先のキャリアを大きく左右する可能性もある。それだけにいち早い回復を祈りたいものだ。

(取材・文:元川悦子)

【了】

text by 元川悦子