この記事をまとめると

■パンクしても一定の距離を走ることができるランフラットタイヤが実用化されている

■ランフラットタイヤ装着車両は開発段階から重量や剛性を検証してセッティングされている

■適合車種以外にランフラットタイヤを履かせると乗り心地の悪化や運動性能の低下などのデメリットが考えられる

パンク対策のひとつとして実用化されたランフラットタイヤ

 タイヤには古くから4つの基本的役割があるといわれている。ひとつは「荷重を支える」。これは車体の重さを支える基本的機能だ。ふたつ目は「駆動力・制動力を伝える」。また3つ目として「操縦性・走行安定性」があり、4つ目は「路面からの衝撃を緩和する減衰性」だ。これらはクルマが走る、止まる、曲がる上で重要な機能であり、またクルマの耐久性や乗員の快適性を確保するうえで無視することができない基本性能といえるだろう。

 一方で、近年はタイヤに対する要求性能はますます高まり、重要視されるようになってきている。よくいわれることだが、クルマのパーツで地面に接しているのはタイヤだけ。はがき1枚程度の接地面積が4輪なら4箇所で接地しているのだが、どんなに高性能なエンジンやパワートレイン、サスペンションや空力を備えていても、このタイヤと地面の関係性が悪ければ意味を成さないわけだ。

 そこで、タイヤにはいくつもの性能が求められている。その理想像として「絶対に滑らない」「絶対に減らない」「絶対にパンクしない」「転がり抵抗がない」「軽い」という無理難題がタイヤには突きつけられているのだが、現代の技術でもすべてを達成することは不可能だ。

 そのなかで、パンクに関しては「パンクしても走れる」というレベルのランフラットタイヤが実用化を果たしている。

 パンクはタイヤのトレッドやサイドウォールなどに釘やネジなどの異物が突き刺さりエア抜けが生じて発生する。通常のタイヤではパンクするとタイヤが外径形状を維持できず、潰れて走行できなくなってしまう。

 無理に走行をし続けるとタイヤの変形の大きな部分が摩擦熱で引きちぎれてしまいバースト、修理不能な状態になってしまう。そこでドライバーは、パンクを感知したら直ちに減速し安全な場所に停止。スペアタイヤに交換するかパンク修理材により一時的な修復を試みなければならない。

標準指定されていないモデルへの装着はおススメできない

 ところが、ふたり乗りのスーパーカーや高級車などで大径ホイール/タイヤを装着しているモデルでは、スペアタイヤを装備するスペースがそもそもなかったり、また装備できたとしてもジャッキアップできずタイヤ/ホイールも大きく重くてひとりでは対処できないようなサイズ・寸法の車両が増えている。

 スペースを小型化できるテンパータイヤ、スペースセーバータイヤをスペアとして装備するモデルもある。車載修理キットを備えていても、悪天候で足もとの状態が悪いような場所で正しく動作させるのは至難の業だ。

 そこで重宝されるのがランフラットタイヤだ。ランフラットタイヤも釘などが刺さればエアが抜けパンクする。しかし、エアが完全に抜けてしまってもケーシングがしっかりしていて車体荷重を支えることができ、低速走行なら数十キロは走れるというのが一般的だ。タイヤをホイールに圧着接続するビード部分やサイドウォールを支えるフィラー構造などの剛性を高めるタイプのものや、タイヤトレッドの内側にパンクした際に荷重を支える構造帯を組み込まんだものなどがあるが、現在はほとんどが前者の仕様といえるだろう。

 しかし、ビード剛性を強くしたり、フィラーを頑丈な素材にしたりすると、まずケーシングの撓みが減少して衝撃減衰性が悪化する。つまり、乗り心地が悪化するわけだ。また、高剛性素材は重く、高価なためにタイヤ重量(=バネ下重量)が増し、運動性能にも悪影響をきたす。さらに重く、頑丈なタイヤとなることでサスペンションのブッシュや取り付け剛性にも影響するため、ランフラットタイヤを装着する車両は開発段階から重量や剛性を検証して装着しセッティングされているのである。

 そこで普通のタイヤを装着しているクルマのタイヤだけをランフラットにしてらどうかと疑問を持つユーザーも多いだろう。パンクしても、その場で修理や交換の必要がなく、一定距離を走行できて修理工場やディラーなどで修理できれば安全・安心な気持ちでドライブできる。確かにそうだが、前述した理由により、乗り心地の悪化や車体側の耐久性の低下、運動性能の悪化に高い購入価格を覚悟しなければならない。

 さらにランフラットタイヤは、パンクしてもケーシング形状が保たれて走れてしまうため、一般道でパンクしても気がつかないドライバーも多い。規定距離以上走行し続ければランフラットタイヤといえども破損しバーストしてしまう。パンクしていることをドライバーに気付かせるためにTPMS(タイヤ空気圧モニターシステム)を装着し、低内圧となった時は警告表示させる必要がある。

 タイヤの理想形に近づくために現在のランフラットタイヤは意味ある存在だが、適合していない車両に安易に取り付けるのはおススメできることではない。