国語の読解力はどうすれば身に付くのか。中学受験国語塾β(ベータ)国語教室代表の善方威さんは「読書好きでも読解力の乏しい子がいる。そういう子は『AI読み』の悪い癖をもつことが多い」という――。
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■超・長文を読ませる塾の弊害

「先生、塾で出題される長文読解問題が長すぎて、どうしても時間内に終わらないんです」

国語の成績が伸びずに困っている中学受験生の駆け込み寺のようになっている私の教室には、大手有名塾から移ってきたり、並行して通ったりする生徒がたくさんいます。そんな生徒たちが訴えるのが、この「塾の長文問題が長すぎる」というものです。

近年、大手塾の模試では、長文読解の問題文が非常に長くなっています。例えば、今、手元にある某有名大手塾の5年生向けテストを見てみると、1行40字33行で14ページ。制限時間は50分です。小学5年生に1万5000字以上の問題文と設問に50分で答えることを要求しているのです。

そんな「超・長文」を読まされ続ける子どもたちは、その弊害として、「読み飛ばし」という悪い癖を身に付けるようになります。

たとえば本文を通読することを諦めて、傍線部分の前後だけをさっと読んで問題に答える。あるいは文中にある単語を勝手につなぎ合わせて、文意を自己流で解釈してしまう。こうした読み飛ばしは、「AI読み」などとも呼ばれています。

長文読解では「精密に読む力」が大切であるのに、超・長文問題を読ませる指導がその妨げになっているのです。

■指示語がわからなかった開成生

長文に書かれた事実関係を正確に読み取るには、文法知識も重要になります。

後に、開成中学校に合格し、現在は医師として活躍するA君を初めて指導したときのこと。

「『そんなこと』とありますが、それはどんなことですか?」といった典型的な「指示語」の問題に、A君は、十数行も前にある文章から抜き出して答えました。もちろん不正解です。

「“そのような”という指示語が指すものって、普通どこにあるの? 近く? 遠く?」と聞くと、A君は「遠く」と答えるので、私は面食らってしまいました。

文章においては、「指示語が指す内容は直前にある」のが大原則です。「それ」「これ」の指すものが何十行も前にある文章など、読みにくくて仕方ありません。

例外もありますが、基本的には直前の文章から指示内容を探していくのがセオリーです。指示語を正確に読み取るということは、読解の基礎の基礎であり、これができなければ文章を正しく理解することはできません。

ですが、A君は、塾で出される、例えば「それの内容を最もよく表す一文を書きなさい」といった、一見指示語の問題のように見えて、実は指示語の知識があるとかえって解きにくくなるように作られたいわば「操作された設問」によって悪い癖が付いていたのでした。

このような問いの場合は、たいてい、答えは指示語からずいぶんと離れたところにあります。

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■文章の主語がわからなかった東大理三生

こんなこともありました。

当時、東大理三を目指す浪人生だったB君は、ほかの科目は極めて優秀な成績であるのに、現代文だけが極端にできないというのです。

試しに小学5年生向けの問題を解かせてみたところ、それすらも満足に解けません。そこで、私はある一文を指し、「この文章の主語は何だと思う?」と問いかけました。

すると、なんとB君は、「日本語で主語って考えるんですか?」と答えたのです。

たしかに、日本語は、英語などに比べて主語の省略が多い言葉ではあります。

「(私は)コーヒーが飲みたい」
「(私も)昨日の夜、その番組観たよ」

など、普段の会話では主語を省くことがかなり多く、文章においても、主語の意識が曖昧なままでなんとなく読めてしまいます。

いっぽう英語では主語はほとんどの場合必要です。省略すると命令文になるなど、意味が変わってしまうこともあります。

また、英語のテストでは「どれが主語か」「どこまでが主語か」が出題されることが多く、英語が非常に得意なB君はこの種の問題にはきちんと答えることができるのです。

しかし、国語ではまるでその意識がありません。B君いわく、「国語の授業で“主語は何?”と問われたことがない」と言うのです。

私の塾では、お子さんと一緒に保護者の方も勉強してもらうことが多いのですが、一流企業に勤める聡明な方でも、文中の台詞をまったく違う人物の発言だと取り違えたまま読み進めていることも…。主語をしっかり意識しなければ、大人でも誤読してしまうことは往々にしてあるのです。

これは、指導する側の問題でもあります。

学校や塾でも、前述した「指示語」の指示内容は直前にある、という大原則や「主語」をはじめとする文法の指導にもっと時間を割くべきですし、日々の読解の指導の中で、反復して意識づけてあげるべきなのだと思います。

ちなみに、文法に意識的に取り組み、精読の方法を身に付けたB君は、翌年、見事に東大理三に合格しました。

■読書習慣は読解力アップにはそれほど貢献しない

「うちの子は本をたくさん読むので、読解は得意だろう」と安心している親御さんもいるかもしれません。

しかし、読書習慣は読解力アップにはそれほど貢献しない、というのが私の実感です。読書習慣によって、長い文を読むことに対する抵抗感がなくなったり、早く読めるようになったりするとは思いますが、そのことと「文章を正しく読解できるか」は別の話なのです。

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善方威『全教科対応! 読める・わかる・解ける 超読解力』(かんき出版)

お子さんの読解力を測るには、次のような質問をしてみましょう。

まずは、物語文の中の一文を示し、「○○したのは誰?」と主語について尋ねてみます。

最初は主語が省略されていない文で質問し、それが正解できたら、次に主語が省略されている文で同じように質問します。

それも正解できるようであれば、今度は、短めの物語を読ませて“あらすじ”を聞いてみましょう。これらの質問にうまく答えられなければ、「事実関係の読み取り」がうまくできていないと判断できます。その原因は「指示語」や「主語」など文法の知識が曖昧だからかもしれません。

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善方 威(ぜんぽう・たけし)
β(ベータ)国語教室 代表
早稲田大学法学部卒。四谷大塚講師を経て、1994年文京区千駄木に日本初の中学受験国語塾β(ベータ)国語教室を開設。以来、千駄木、本駒込、南青山、白金高輪、お茶の水の5教室を展開し、約700人の受験生を、独自のノウハウに基づく一対一の指導で合格に導いている。著書に『全教科対応! 読める・わかる・解ける 超読解力』『全試験対応! わかる・書ける・受かる 超思考力』(ともにかんき出版)がある。
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(β(ベータ)国語教室 代表 善方 威)