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再生計画で進むモデルレンジの拡大

グレートブリテン島の北東部、ノーサンバーランド州の放牧地で、羊がゆっくりと草をはんでいる。筆者は、真新しいロータスのミドシップ・スポーツカー、エミーラでその横を通り過ぎる。見た目通り、素晴らしい印象を残してくれた。

【画像】新世代ロータス エミーラ 競合のポルシェ718ケイマンと写真で比較 先代エヴォーラも 全89枚

コーナーへ飛び込むと、路面を舐めるように旋回していく。真っ赤に塗られたロータスが、にぎやかなサウンドを放ちながら緑の原野を進む。アスファルトが大好物のようだ。


レッドのロータス・エミーラ V6 ファーストエディションと、グリーンのポルシェ718ケイマン GTS 4.0

特別自然公園のノースペニンズ地域には、広大な自然が残されている。言葉にならないほど美しい景色が続く。エミーラは、リボンのように伸びる1本の道を縫っていく。

近年までのロータスは、負のスパイラルといえる問題に悩まされてきた。経営者が入れ替わるなかで、新たな方向性を模索し、開発資金に飢えてきた。軽さとシンプルさという独自性は保っていたが、少々時代遅れのモデルラインナップに頼ってもいた。

間違いなく、新たなテコ入れが必要だった。そこに手を差し伸べたのが中国の巨人、ジーリー・ホールディングスだ。経営への介入から5年間で、1億ポンド(167億円)という設備投資が行われた。

思い切った再生計画が立案され、モデルレンジの拡大が進められている。2022年の後半には、バッテリーEV(BEV)のスーパーカー、エヴァイヤも完成する予定にある。中国の工場で製造される、BEVのSUVも2025年には姿を表すという。

エントリーモデルとなる、BEVのスポーツカーも控えている。サイズの大きい、グランドツアラーも。

アルミ押出材シャシーに3.5L V6スーチャー

ロータスは、世界中のスポーツカー・ファンの要望を聞き入れようとしている。自らの作るクマを、最高にしようと励んでいる。長い停滞期間が続いたものの、思い切った変化を受け入れた結果、正のスパイラルが生まれたようだ。

新しいブランドを象徴するものとして、橋渡しとなるモデルが早期に必要だったのかもしれない。今後も確かに生き残るために。


ロータス・エミーラ V6 ファーストエディション(英国仕様)

ロータスは、自社最後となる内燃エンジンのスポーツカー、エミーラはまったく新しいと主張する。だが誤解を恐れなければ、エヴォーラの大幅なバージョンアップだと捉えられると、筆者は考えている。

アルミニウムの押出成形材を接着したシャシーは、新設計だとはいえ、エヴォーラの再設計版ともいえる。グレートブリテン島の東、ノーフォーク・ヘセルに構える本社から遠くない場所へ用意された新工場で組み立てられるが、ホイールベースは同じだ。

左右のタイヤの間隔、トレッドは違うが、ミドシップされるトヨタ由来の3.5L V6スーパーチャージド・ガソリンエンジンも、基本的にはエヴォーラのアップデート仕様。6速MTも同様。技術的なスペックを見ると、筆者の考えは否定できないだろう。

だがしかし、エミーラは間違いなくこれまでとは違う。スタイリングや製造品質だけではない。今後の道筋を指し示す存在としても相応しい。

高級でハイテクで現代的なスポーツカー

2022年にスポーツカーを選ぼうとする人は、軽さや生々しさ、純粋さ、感覚の豊かさといったもの以上を求めている。使い勝手が良く、運転しやすいパッケージングや、快適なシートとドライビングポジションも欠かせない。

上質で見惚れるようなインテリアも欲しいし、モダンなインフォテインメント技術も外せない。小旅行の荷物を詰めるラゲッジスペースも。エミーラは、それらを叶えた乗りやすいスポーツカーに仕上がっている。高級でハイテクで、現代的ともいえる。


レッドのロータス・エミーラ V6 ファーストエディションと、グリーンのポルシェ718ケイマン GTS 4.0

これらの特長は、商業的にも成功を掴んできたドイツ・ブランドが意識してきた内容そのもの。今回の比較相手も、自ずと導かれる。このクラスの精鋭でベンチマークといえる、ミドシップのポルシェ718ケイマンだ。しかも、4.0L 6気筒のGTSを設定した。

ちなみに718ケイマンには、水平対向4気筒を積むモデルも存在する。そちらは今後、メルセデスAMG由来の直列4気筒を搭載するエミーラが、対峙することになる。

ノーサンバーランド州まで運転してきたから、718ケイマンとエミーラのストロングポイントはある程度見えている。ロータス・エミーラにとってこの比較は、手強いものになりそうだ。

現行の982世代の718ケイマンは、登場から6年が経過した。2023年には、次期型の発売が始まる予定にある。モデルサイクルとしては末期になるが、特にGTSの場合は、このクラスで他に例のない運転のしやすさと、走りの魅力とを両立させている。

鮮明な感触やタイトな姿勢制御、一体感

アルピーヌA110も素晴らしいスポーツカーだ。軽く空間効率も良い。流麗な操縦性を備え、ドライバーへの訴求力は高い。だが、販売数では718ケイマンには届いていない。

エミーラは大きくワイド。見た目の軽快感でいえば、718ケイマンの方が上だろう。だが、より鮮明な感触や、タイトな姿勢制御、ドライバーとの一体感といった面では勝る。これは古いロータス・ファンにとっても、歓迎すべきストロングポイントだと思う。


ポルシェ718ケイマン GTS 4.0(英国仕様)

一方で、より軽快な印象を与えてくれるのは、718ケイマンの方。ポルシェらしく、存分に没頭することもできる。とはいえ、エミーラも紛れもないドライバーズカーだ。

走りの個性へ話を進める前に、インテリアに触れておこう。エミーラのシートは適度にクッションが効いていて、レザーも高品質。身長の高い筆者にとっては、718ケイマンより若干乗り降りしにくく感じたが、慣れの問題でもあるだろう。

新しいロータスの車内は、新鮮味が強い。3枚のペダルは、エヴォーラよりずっと奥に並んでいる。ホイールアーチに影響を受けることなく、ほぼドライバーの正面に位置しており、ステアリングホイールとの関係性も良好。これも同社のモデルとしては新しい。

2台とも着座位置は低い。エミーラの方は、ダッシュボードやウインドウ、ルーフの位置が低く、車内に納まったという印象が強い。718ケイマンは人間工学をより重視しており、一層快適に思えるが、エミーラも負けてはいない。

この続きは後編にて。