今週から福島、小倉開催がスタート。いよいよ本格的な夏競馬へと突入する。

 小倉の開幕週には、短距離重賞のGIII CBC賞(7月3日/小倉・芝1200m)が行なわれる。通常、中京競馬場が舞台となるレースだが、京都競馬場の改修工事によるスケジュール変更を受けて、一昨年は阪神競馬場で施行され、今年は昨年に続いて小倉競馬場で行なわれる。

 過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気は2勝、2着1回、3着1回と今ひとつ。一方で伏兵の台頭が頻繁に見られ、比較的波乱の多い一戦だ。日刊スポーツの奥田隼人記者もこう語る。

「過去10年で1着こそ1〜4番人気が8勝を挙げていますが、2着には7番人気以下の穴馬が6度も突っ込んできています。傾向としては"ヒモ荒れ"の向きが強いですね。

 おかげで、馬連も万馬券が3度飛び出すなど、平均配当は1万9023円。3連単も2020年に200万円超えの特大万馬券が出たこともありますが、平均配当は34万円オーバーと高額になっています」

 こうした状況を受けて、奥田記者は「今年も波乱の目は十分」と踏んで、まずはベテラン牝馬に注目する。

「アンコールプリュ(牝7歳)です。前走のオープン特別・韋駄天S(5月22日/新潟・芝1000m)では14着と惨敗。その結果を受けて、さらに人気を落としそうですが、レースの内容自体は(次戦に向けて)見直せるものがあったと思います。


CBC賞での大駆けが期待されるアンコールプリュ

 新潟の芝千直らしく、結果は外ラチ沿いを通った馬が上位を独占。そんななか、4枠8番発走のアンコールプリュはスタート後に躓いて出負け。外ラチ沿いに潜り込めず、馬群の後方を追走する形になりました。

 加えて、初の直線競馬ということもあって、追走に苦労したうえ、前が壁になって満足に追うこともできませんでした。それでも、最後に見せた伸び脚からは、スムーズならもう少し上の着順もあったのではないか、と思わせるものがありました。

 昨年7月に初めて芝1200m戦を使われて、同条件ではここまで2戦して3着と5着。ともに差のない競馬を見せています。

 初のスプリント戦となった昨夏のオープン特別・福島テレビオープン(福島・芝1200m)では、今年のGI高松宮記念(中京・芝1200m)で3着となったキルロードにコンマ3秒差の3着と奮闘。レース内容も評価できるもので、短距離適性があるのは確かです。

 今回手綱をとる藤岡康太騎手も、『(今のアンコールプリュには)1200mくらいがちょうどいいと思います。まだまだ力は衰えていないですし、いい位置がとれて、いい競馬ができれば......』と期待していました。

 2020年に大波乱を演出したラブカンプー(13番人気1着)も、韋駄天S敗戦(7着)からの巻き返しでした。その再現も可能と見ています」

 奥田記者はもう1頭、格上挑戦となるタマモティータイム(牝5歳)も気になるという。

「昨年のCBC賞では小倉開幕週の馬場を味方に、今年も出走予定のファストフォース(牡6歳)が52kgの軽ハンデを生かして逃げきり勝ち。勝ち時計は日本レコードとなる1分6秒0という超高速決着でした。

 同条件となる今年も、高速馬場になることは必至。ある程度前で運べて、時計勝負に対応できる能力が必要不可欠だと思います。

 そうしたなか、タマモティータイムは条件馬ですが、芝1200mの持ち時計が今回の出走メンバーのなかで5番目となる1分7秒1。そして実は、他の上位4頭の記録は日本レコードが出るほど馬場がよかった昨年の小倉開幕週に記録したもの。

 つまり、それとは違う条件でこの時計をマークしているタマモティータイムは、その順位以上に評価できると思います。高速決着に対応しうる下地は十分にあるはずです」

 タマモティータイムがこれまでに挙げた全3勝はすべて小倉・芝1200m。最も得意とする舞台ゆえ、大駆けへの期待は一段と膨らむ。

「今年は、3勝クラスの巌流島S(1月30日/小倉・芝1200m)で16着、同じく3勝クラスのやまびこS(4月16日/福島・ダート1150m)で15着と惨敗続きですが、3歳時には夏の小倉で連勝を飾っているように、牝馬らしく暑い季節に調子を上げてくるタイプ。50kgという軽ハンデも魅力で、持ち前の先行力を生かしきることができれば、高速馬場での粘り込みが大いに期待できます。大穴をあけてもおかしくない存在だと思いますよ」

 タマモティータムの近親には、短距離路線で活躍したタマモホットプレイ、タマモナイスプレイといった叔父がいて、この舞台で好走できる血統的な裏づけもある。

 波乱含みの短距離ハンデ重賞。「夏は牝馬」といった格言どおり、ここに挙げた2頭が周囲をアッと言わせるような激走を見せるのか、注目である。