シャインマスカットやイチゴの種苗が流出、高級日本酒のニセモノも...”見える化”でブランドを守れ!:ガイアの夜明け

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7月1日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「誰が、いつ、どこで、どのように?〜『食品追跡』が価値を生む〜」。

食の安全と信頼性の確保など、さまざまな観点から取り組まなければならない大きな課題。新たな段階に入った食品流通の「見える化」の取り組みを追った。

産地偽装問題で揺れる「熊本県産アサリ」の信頼を取り戻せ!


日本一の干潟、熊本・有明海で水産業界を揺るがす事件が起きた。
2月、農水省はDNA分析の結果、熊本産アサリの97%に外国産の疑いがあると発表。輸入したアサリは、それまでの生育期間より、国内で蓄養(貝類を短期間一定の場所に保存すること)した期間が長ければ"国産"と表記できるため、「長いところルール」に乗っ取り、熊本産と表記してきた。
しかし、一部の関係者が、畜養期間の短いアサリや蓄養すらしていないものまで、熊本産として出荷していたのだ。


熊本県はすぐさま、アサリの出荷を2ヵ月間停止。農水省も、畜養期間が1年半以下の輸入アサリは国産表示を認めないと、規制を厳しくした。

3月、熊本県庁は産地偽装の再発防止を目指し、特命の対策チームを立ち上げた。水産行政に長く携わってきた水産振興課 課長補佐の那須博史さんがリーダーを務め、スタッフはさまざまな部署から緊急で集められた。


取り組むのは、流通を「見える化」するトレーサビリティだ。特に中国産が入り込む危険がある工場や販売店は、県が認定したところだけに限定。他のアサリが入り込まないよう、重点的にチェックすることにした。


4月9日、那須さんは7つの漁場、3つの認定工場、93の販売協力店に監視員を動員すると発表する。

「ずっと張り付かないといけないのか。1日1回チェックすればいいのか」

職員からの質問に、那須さんは「ずっといる。ずっと張り付く」と答えたが、それでも反対するメンバーはいなかった。

4月14日、天然アサリの漁が始まった。みんなで採る漁は3年ぶり。資源確保のために、アサリを採るのをやめていたのだ。
熊本・荒尾市にある荒尾漁協で行われたアサリ漁には、早速、監視する県職員の姿があった。まずは採れたアサリの袋の数を数える。この日は想定以上の40袋、480キロを収穫した。


山口県にある、熊本のアサリを扱う「サンヨー」にも、プロジェクトチームのメンバーがいた。加工場を担当する熊本県県北広域本部の永田大生さんは、アサリが届く前に加工場の中を見て回る。「今からアサリが届くまでを見届けます。しっかり流れを確認するために」と話す永田さん。

夜、熊本からトラックが到着すると、その後ろにもプロジェクトチームの車が同行していた。輸送中に中国産が混ざるリスクがないかをチェックするためだ。
到着したアサリを砂抜きの水槽に移すときも監視。すると、「熊本入札アサリ」の水槽のすぐ隣に「中国産」の水槽があることが分かった。中国産アサリが混入する機会があることを目の当たりにしたのだ。


永田さんは、割れた貝を取り除く選別作業にも、袋詰め作業にも立ち会う。こうした取り組みについて、「サンヨー」の藤岡友三専務は「私たちも協力する。『さすが熊本』という品物を届けるために、最大限の努力をする」と話す。

熊本市内にあるスーパー「ゆめマート帯山店」では、箱から取り出され、小分けにされるアサリをプロジェクトチームのメンバーが見守る。小分けのパックには"熊本産"を証明するくまモンシールが貼られ、店頭に並ぶ。

2ヵ月ぶりの販売再開。新たに、アサリがいつどこで採れたのかを示す「産地証明書」の発行が義務付けられた。客は「これ地物ですか? 中国産じゃない? 産地証明書、安心して買えますよね」と笑顔で話す。


しかし、アサリを販売する店舗が増えていけば、監視の目は行き届かなくなる。職員による人海戦術も、6月には限界が見えてきた。
そこで手を組んだのが、自動車部品メーカー「デンソー」だ。果たして、「デンソー」による新たなシステムとは――。熊本産のアサリは、産地偽装問題を乗り越え、県外の消費者に思いを伝えることができるのか。



日本の品種をもとに無断で開発した韓国産イチゴ


水産業界の問題は他にもある。2020年の密漁の検挙件数は1426件で、被害額は数十億円とも言われている。密猟が横行するのは、合法的に漁獲されたものかどうかを証明する方法がないからだ。特に高値で売買されるのが、アワビ、ナマコ、シラスウナギ。罰金は過去最高額の3000万円になったが、その悪行は後を絶たない。

こうした密漁や不正流通に対し、水産庁は、取引情報を報告することを義務付ける「水産流通適正化法」を作った。今、水産物の取引の透明化に期待が寄せられている。


不正との戦いは世界規模に。福井・鯖江市で代々日本酒を作っている蔵元「加藤吉平商店」。「梵(ぼん)」は世界105の国と地域に輸出(2022年5月現在)、海外の名だたるコンクールで数々の受賞を誇るが、それ故の悩みがあった。なんと、海外のサイトで、空ビンが6000円以上で取引されているのだ。


11代目当主の加藤団秀さんは、「本物の空ビンの中に違う酒を入れて出される。アメリカなどで偽物が出回っている。よく言えば偽物が出るくらい有名になった。非常に困っている」と話す。
そこで、加藤さんが頼ったのが「SBIトレーサビリティ」の輪島智仁さんだ。輪島さんが用意したのは、特殊なチップが埋め込まれたタグ。このタグを瓶の開封シールの内側に貼り、スマホをタップすると開封済みかどうかを確認することができる。


開封し、切れた状態のタグをタップすると...


"開封済"との表示が。これで、不正な流通が防げるようになるのだ。加藤さんは「非常に画期的な方法だと思う」と話し、近い将来、トレーサビリティにも応用できるのではないかと期待する。

一方、果物の世界でも輸出品が大きな問題を抱えている。韓国のスーパーで売られている韓国産イチゴの9割が日本の品種をもとに無断で開発されたといわれ、これまで「とちおとめ」や「レッドパール」などの品種が流出した。
輸出先のアジアでは安い韓国産が売れ、その結果、2020年の韓国のイチゴの輸出額は約58億円に上り、日本の倍以上に。ブランドを育ててきた日本の生産者の苦労が報われない実情がある。


中国雲南省で生産されているシャインマスカットも、日本から2016年頃に流出したと言われている。現地の生産者は「育てやすいし人気もあるから利益が大きい」と話す。
中国で生産されているにもかかわらず、パッケージはまるで日本産。日本のものは約1万8000円なのに対し、中国産は約8000円と半額以下。生産者は「日本の良い品種をどんどん紹介してほしいね。俺たちがどんどん育てるからさ」と笑う。


こうした事態に立ち向かうにはどうすれば良いのか。ジャパンブランドの確立に向け、輪島さんが動き出した――。

番組ではこの他、漁の結果を記録した操業日誌や人工衛星による海水温、潮流の解析データをAIに学習させ、漁師の判断をサポートするアプリ「トリトンの矛」を紹介。
さらにこのアプリを使って、魚が水揚げされ、お客さんに届くまでを追跡するトレーサビリティの詳細について伝える。

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