喝!「若者の青春を大人が取り上げている!」前田日明が憂う日本&格闘技の問題点、前田日明×大山峻護スペシャル対談2

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 「新日本プロレス」、「UWF」、「リングス」、「アウトサイダー」と世の中を熱狂させてきた格闘王・前田日明さんと、元PRIDE戦士・大山峻護さんによる対談第2弾!

 日本への提言を綴った著書「日本人はもっと幸せになっていいはずだ」(サイゾー/2021年)を上梓した前田さんが、日本の矛盾点、格闘技の改善点を一刀両断!

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好奇心が人生を作る

大山:リングスやアウトサイダーなど、前田さんはいつも新しいもの、人がやらないものを作ってきました。レジェンドでありながら、今の時流も柔軟に取り入れて、常にアップデートされている。そういった生き方とか、発想はどうやって生まれるんでしょうか?

前田:別に発想があるわけじゃないんだよね。好奇心が強いから、とりあえずいろんなことに手を突っ込んでみる。そこから自分に合うもの合わないものが見つかるし、経験や知識、価値観が生まれてくる。

大山:前田さんのすごいところは知識の広さと深さ。大学の教授とか、いろいろな文化人と真っ向勝負で話せるところがすごいです。視野が広いですよね。

前田:昔から活字中毒だったからね。プロレスラーになる前は1人の生活が多くて、10代の頃にずっと家に1人でいると、頭が狂いそうになるのよ。だから本を読むしかなかった。俺が高校入って空手を始めた昭和の時代って、柔道や剣道、空手をやっている人たちは本に埋もれて暮らしているような人がいっぱいいた。それで俺も先輩に文学を読めって言われて、太宰治とか三島由紀夫とかを読むようになったんだよね。

大山:どういったところが前田青年にささったんですか?

前田:太宰治を読んで憂鬱になった時に読んだ三島由紀夫の『不道徳教育講座』はおもしろかったね。「不道徳の勧め」と言う体裁何だけど、今の日本の堕落は善だけでは無く悪の道徳の腐敗が在る。それを正す為、国立ヤクザ学校や国立泥棒学校を作って今の半端なヤクザや泥棒をビシビシ教育する。そうなると今の悪党供は落第する。悪の学校で落第すると善人になるしか無いので善人が急速に増え犯罪がへる。と言った様なことが不道徳を論じながら語られる。世の中の事象は視点を変えるだけで見え方が変わるって事が面白かったですね。

大山:前田さんは小説とかだけでなく、論語も勉強していましたし、ノンフィクションも好まれますよね?

前田:当時知り合いに論語オタクいて、それで論語を勉強することになって。でも論語をきっかけにして中国の歴史おもしろいなって思って、春秋戦国時代とかも興味を持つようになったね。小説は十代の頃はよく読んでいたけど、二十代になってからはノンフィクションばかりで取り分け壮絶なアルピニズムの話には嵌りました。

大山:前田さんの知識の広さと深さ、掘り下げ方が凄まじいです。趣味もウイスキーや葉巻、日本刀、サバゲー、釣りと趣味も多彩。時間ってどうやって使っているんですか?

前田:本とか調べものは、トイレとか寝る前に。それが習慣付いちゃって、読みながらじゃないと眠れないし、寝るつもりだったのが朝まで夢中で起きてしまっていることもよくあるね。

今の日本は大人が若者の青春を取り上げている!

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大山:前田さんの著書『日本人はもっと幸せになっていいはずだ』(サイゾー)を読んで、とても衝撃を受けました。国防のこと、防災のことなど、僕の知らないことばかりで目からうろこ、勉強になりました。

前田:俺は若い頃からリングスとかで海外によく行っていたけど、そこで現地の選手といろんな話をしたのよ。政治の話とか、年金の話とか。当時、海外の選手に「それだけ年金払っているなら、将来は安泰だね」って言われていた。で、今俺63歳だから65歳から年金をもらおうかなって思っていたら、年金事務所の人に「75歳からにした方がいいですよ」って言われて。ひどい話だよ。日本人男性の平均寿命が83歳とかだから、8年しかもらえないじゃん。総額で言うと85歳以上生きないと損をする。こんな子供騙しが今の日本は溢れている。

大山:南海トラフ巨大地震についても著書で書かれていました。こういう知識、危機意識はもっとみんなが持っていかないといけないですよね。

前田:南海トラフは今後30年以内に70%の確率で来ると言われている。内閣府で試算されている死者数は約33万人。東日本大震災でさえ死者数は1万6千人だから、南海トラフはその25倍の被害が発生すると予想されている。そうなったら、最悪、国の機能は止まり災害支援という名目で中国とかがあっという間に日本を占領するなんてことも十分考えられる。今のウクライナ情勢を見ていたら、決して絵空事ではない。日本にはアメリカ軍基地があるから守ってくれるなんて思っているかもしれないけど、まず日本が、自衛隊が動かないことには、アメリカは動かないのは当たり前の話だよ。しかし馬鹿な事に自衛隊には軍法が無く刑法に縛られているので殺人行為である戦闘は出来ない。

大山:前田さんから見て、今の日本はどうですか?

前田:若い人がかわいそうだと思うよ。今、アウトサイダーに出てくる選手って不良だけじゃなくて、元々いじめられっ子だったとか、不良に仇討ちしたいっていう選手もいる。そういう選手と話していると、奨学金の返済が何百万もあるって言うんだよ。なのに、当時5、6年前でアルバイトの時給は800円とかで、40年前とたいして変わらない物価は倍違うのに。今の若い人は覇気がないから車も買わないってよく言われているけど、それは違う。金がないんだよ。おかしいでしょ?若者の青春を大人が取り上げている。

大山:これから日本が良くなるためにどうしたらいいと思いますか?

前田:生まれた時から政治家になることが決められているような二世議員が、庶民の生活なんてわかるはずないんだよ。だからまずは選挙制度を変えて二世議員を廃止か政治家の子供が政治家になりたいというなら、遥か遠くの新しい地盤からしか出られないとか、そのくらいしないといけない。いずれ少子化になるって俺が高校生くらいの時から言われていたのに、何十年もかけて何も変わっていない。日本は世界3位の経済大国なのに、なんでそんなに国民にかけるお金がないの?おかしいよ。

大山:これほどハッキリと物申せる人はそういないですからね。前田さんみたいな人が政治の世界に出ることで日本は変わっていくんじゃないのかなと思います。

前田:民主党から出ようと思ったことがあったけど、あるインタビューで民主党が推進している外国人参選権をどう思いますか?って聞かれて、俺は反対って答えた。俺の家系は父型も母型も在日韓国人で自分は在日3世だけど、生まれた時から日本だし、韓国語も話せないし、韓国なんて外国にしか思えない。でも在日って言った瞬間に外国人扱いされるから、俺の中では国籍同一性障害ですよ。在日の中でもいろんな人がいるから、成人したら自分で国籍を選べばいい。日本人になりたいって言うなら、国家に忠誠を誓って日本人になればいい。

総合はルールの整備ができていない。周囲が選手を守る必要がある。

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大山:前田さんがプロデューサーを務める「THE OUTSIDER」出身の朝倉未来・海兄弟が活躍していますが、今の格闘技界をどう見ていますか?また、これからどうなると思いますか?

前田:総合(格闘技)はまだまだルールの整備ができていないと思うね。危ない攻撃がいっぱいある。踏みつけとかサッカーボールキックは普通にやっているけど、大事に至る可能性があるから、考えないといけない。デンジャラスでスリリングなことをやって見ている人の興味を引こうなんて考えでいたら、スポーツじゃなくなるよ。

大山:2021年の年末に行われた「RIZIN」のバンタム級トーナメントで、朝倉海選手が骨折しながらも試合に出続けるというのもありました。

前田:RIZINチャンプの斎藤選手はこめかみを切っただけで試合を止めたのに、骨折した選手に試合をさせる。海は同じところを前にも骨折しているし、本人はもう治ったって言っているけど、全力で打った時にたぶん痛みが出るよ。主催者の都合でこんなことを繰り返していたら、無意識の内にちゃんとしたパンチが打てなくなってしまう。未来のある選手、若者の競技人生を終わらせてしまう可能性だってある。

大山:選手が潰れちゃいますよね。競技と興行の間で悩ましいとは思いますが、選手のその後の人生がかかっていますから。昔、桜庭(和志)さんが「HERO’S」の試合で失神状態なのに試合が続行するということもありましたけど、選手のダメージを考えると危険ですよね。

前田:俺もあの時はあの場にいたから、何度も「止めろ!選手を殺す気か!」って止めようとしたけど、止められなかった。選手は夢中になっているから、周囲が選手を守ってあげないといけない。

大山:前田さんはUWF、リングス、アウトサイダーと次々に新しいことにチャレンジされてきましたが、次は何か考えていますか?

前田:アウトサイダーは約2年半ぶりに開催することになって。嬉しいことに、アウトサイダー出身選手がビジネスで成功して、スポンサーになりたいという声もある。「今の自分があるのは前田さんとアウトサイダーのおかげです  」って言ってくれて。俺のことを父親のように慕ってくる子もいるし、格闘技が彼らの人生の役に立ってくれているなら嬉しいね。アウトサイダーにはずいぶん私財と時間を投資してきたから(笑)。

大山:前田さんの存在自体が、選手たちに大きな影響を与えたと思います。前田さん自身、明確な夢や目標があってここまでたどり着いた訳ではなく、人との出会いや実直さが人生を作ってきた。コロナ禍で見通しが立たず、人生に夢や希望を持てないって言う人も多いですが、今の世の中に向けてメッセージをお願いします!

前田:サルトルっていう実存主義の哲学者が、「人生に意味など無い、自分の人生の意味は自分で生み出す物だ」というようなことを言っているんだけど、まさにそうだと思う。生まれながらに何になるって決まっているわけではないから、経験値を上げる為にとりあえず何でもいいから3年くらいやってみないと、自分が本当に何をやりたいとか向いているとかがわからない。だからまず興味を持ってやってみることが大事だと思う。行き当たりばったりでも懸命にやっていくうちに経験や人脈ができてきて、道が開けていくと思うね。

大山:好奇心が人生を開拓していくということですね。前田さんならではの考えやお話しを伺えてとても興味深かったです!今日はありがとうございました!

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[文/構成:ココカラネクスト編集部]

大山峻護(おおやま・しゅんご)

5歳で柔道を始め、全日本学生体重別選手権準優勝、世界学生選手権出場、全日本実業団個人選手権優勝という実績を持つ。2001年、プロの総合格闘家としてデビュー。同年、PRIDEに、2004年にはK-1・HERO‘Sにも参戦。2012年ロードFC初代ミドル級王座獲得。現在は、企業や学校を訪問し、トレーニング指導や講演活動を行なっている。著書に「科学的に証明された心が強くなる ストレッチ」(アスコム)。ビジネスマンのメンタルタフネスを高めていくための本「ビジネスエリートがやっているファイトネス〜体と心を一気に整える方法〜」(あさ出版)を出版。