日本の都市部で活動する中国人が増えている。企業買収、不動産買い占め、爆買いと人民元パワーはとどまるところを知らない。以前は中華レストランや飲み屋の従業員として働く人が多かった中国人。今では日本の一流企業や研究機関など大規模組織のリーダーとして活躍する人も少なくない。 

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 ビジネスシーンで中国人と接する時、彼らの押しの強さや自己主張の激しさに辟易とすることがあるだろう。変わり身の早さ、自責の無さ、目的のためには手段選ばずという様子に幻滅を覚えたという話も耳にする。こんなことが重なると疑心暗鬼が膨れて自分が疲弊する。最終的にはエネルギーが枯渇し全て相手側の思惑通りに事が運んでいくことも。

 中国の人々と付き合う上で大切なのは、彼らの行動の根本にある価値観を深く正しく理解することだ。一見無秩序で非道徳的に見える彼らの言動が、実は彼らが数千年の歴史の中で身にまとった処世術や生存本能からくるもので、個人的な問題ではないということを知っておきたい。ことわざはその土地で暮らす人々が世代を超えて伝え合う価値観の集大成であり文化の精髄だ。今回は中国人の逞しさやしたたかさの根幹が知れることわざを中心に紹介したい。

■1. 打肿脸充胖子(Dǎ zhǒng liǎn chōng pàngzi)

 意味: 顔が腫れ上がるほど打って太った人のふりをする。虚勢を張る、やせ我慢をする。から元気を出す。 日本の類似のことわざ: 武士は食わねど高楊枝

 中国人は何よりも面子を重く見る。自分の不利になることは決して言わないし、逆に相手の不利になることを本人の目の前では口にしない。ケチな贈り物や品数の足りない宴席なども相手のメンツを損なうので注意が必要だ。

■2. 世上无难事,只怕有心人(shì shàng wú nán shì,zhǐ pà yǒu xīn rén)

 意味: やる気がありさえすればできない事はない。努力をする決心さえあればいかなる困難も乗り越えられるだろう。 日本の類似のことわざ: 為せば成る

 不屈の精神を貴ぶことを表すことわざは第1弾の記事でもいくつか紹介した。「やる気があればできないことなど存在しない」という価値観が、世界各地で活躍する中国人の成功を後押ししているのかもしれない。中国人の逞しさの源となる類似のことわざは数えきれない。

■3. 不达目的不罢休(Bù dá mùdì bù bàxiū)

 意味: 目的が達せられるまで決してあきらめない

 上記のことわざのように二重否定で強調する同じ意味のことわざは、他にも「不磨不练不成好汉(鍛錬しなければ立派な男になれない)」などがある。また「不怕山高就怕腿软(困難よりもそれを臆する心が問題だ)」、「不怕天寒地冻就怕手脚不动(凍える寒さよりも行動しないのが問題)」は、「不怕〜,就怕〜」「不怕〜,只怕〜」など同じ文字の繰り返しでテンポよく耳に入りやすい。

■4. 此一时彼一时(cǐ yī shí,bǐ yī shí)

 意味: 以前と現在とでは事情が違う。あの時はあの時、今は今

 中国人と付き合っていて、あっけらかんとした変わり身の早さに呆れることがある。利害関係や相手の立場の変化でコロコロと態度が変わる姿に目を見張る思いをした人も少なくないだろう。中国は多民族間の争いの中で膨張と分裂を繰り返して発展した国家だ。制度や環境の変化に順応する能力が、生き残るためには必須であったのかもしれない。

■5. 多一个敌人不如多一个朋友(Duō yīgè dírén bùrú duō yīgè péng you)

 意味: 友達をひとり増やすことは、敵をひとり増やすより良い。敵を増やすな、味方につけろ。

 中国では誰でも友達だ。日本では「外国からのお客様」、「ご来場の皆様」、「新しいメンバー」と紹介する関係性でも中国では「外国朋友」、「在场的朋友」、「新朋友」と親しみを込めて紹介する。ルールではなく関係性が重視される中国では、チャンスや便宜は友人がもたらすことが多い。

 黄河流域の小部落に住む華夏族からスタートし、今や人口14億人の巨大民族に膨張した中国人。これだけ発展するにはそれなりの理由があるはずだ。鷹揚に多種の価値観を受け入れる姿勢、そして厳しい環境や大きな障害にも決して怯まない強靭さは学んでも損はないだろう。

 中国人はすごいから損得で割り切って100%中国色に染まろう!と言っているわけではもちろんない。全世界が中国化したら、それは人類にとってきつい生存環境になるだろう。生活環境の改善につながる優れた文化を受容し、逆の価値観は断固として否定する、このように積極的に異文化へ立ち向かう姿勢が大切なのかもしれない。