ルノー・ルーテシアEテック・ハイブリッド試乗 古き佳き「サンク・バカラ」の再来
ルノーのハイブリッド第2弾
ルノー初というだけでなく、輸入車としても初というフルハイブリッド車、アルカナを本邦デビューさせたばかりのルノー。
【画像】アルカナに続くフルハイブリッド上陸【ルーテシア&アルカナ Eテック・ハイブリッドモデルを比べる】 全129枚
そのEテック・ハイブリッド搭載モデル第2弾はルーテシアだった。
ルノー・ルーテシアEテック・ハイブリッドは、アルカナに続くルノーのフルハイブリッド第2弾。 宮澤佳久
現行のルーテシアは昨年登場した5代目。Bセグらしからぬスタイリッシュなボディと質感高めのコックピットが好評な1台。
そのバリエーションモデルとして今回、ルノー独自のハイブリッドシステム、Eテック・ハイブリッドを搭載したモデルが追加された。
アルカナと基本的に一緒だというパワートレインは1.6L自然吸気の直列4気筒エンジン(91ps)に、メインのモーター(49ps)、さらにサブモーター(HSG=ハイボルテージスターター&ジェネレーター:20ps)という2つのモーターを追加した構成。
さらにF1由来のドグクラッチを採用したモーター側2枚、エンジン側4枚というマルチモードATでエンジンとモーターとパワーを融合させる。
ハイブリッドシステムを搭載することで車重はガソリンのルーテシアに比べ110kg重くなってしまう。
ところが燃費はWLTCモードで17.0km/L(ガソリン)から25.2km/L(ハイブリッド)まで伸びている。
30km/L以上を記録するトヨタ・アクアには敵わないが、輸入車としてはトップレベルの数字である。
重量増がコンパクトなBセグハッチの足を引っ張るのか、はたまたハイブリッドの完成度がルーテシアを格上に見せてくれるのか?
古き佳きルノーのしっとり感
ガソリンモデルとの見た目の違いは驚くほど少ない。
今どきの日本で「ハイブリッド!」はエバれないから、これくらいでいいのかも。
独特のしっとり感が「古き佳きルノー」を彷彿させると筆者 宮澤佳久
エネルギーフローの表示はデジタルのメーターパネルの左上にあるが、小さくて見にくい。
センターコンソールに紛れているEVスイッチを押せばEVに限定して走行することは可能だ。
そしてもちろん、スタートスイッチを押してもいきなりエンジンは始動しない。
説明では低速域(40km/h以下)はモーター、中速域(40-80km/h)はハイブリッド、高速域では加速時こそモーターのアシストが入るが基本的にはエンジンのみで走るとのこと。
だがアルカナのときもそうだったのだが、実際に走りはじめてみるとパワートレイン内部の「切り替え!」を察知することはできない。
ハイブリッド特有の静粛性よりも重心の低さの方が気になった。
車体の前後にモーターとバッテリーが載ったおかげで、乗り味がしっとりとしている。
アルカナのインプレッションに「ルーテシアのしっかり感」と書いたが、いやいやルーテシアEテック・ハイブリッドの方がよっぽどしっかり感が高い。
まるで昔のシュペール・サンクみたい。
コンパクトな軽さとしっとりとしたラグジュアリー感が同居した小さな高級車! サンク・バカラの再来だ! といっても、今となってはわからない人も多いのかな(?)。
あとガソリンの1.3Lターボに対し、自然吸気の1.6Lエンジンとモーターによる「しっとりパワフル」なマナーも車体全体の上質なキャラクターに貢献していると感じた。
唯一の弱点? 高級感とトレードオフ
Eテック・ハイブリッドによって今まで以上のプレミアム感を纏ったルーテシア。
とはいえスポーツ性を期待するなら軽くてターボのパンチが効いたガソリンモデルを選ぶべき。
ちょっと速く走るユーザーにEテックはもってこいと筆者。 宮澤佳久
Eテックによる重量増は、高級感と引き換えに軽快さを若干スポイルしてしまっている。
また「高級」とは言え、そこはBセグハッチなのでロードノイズはそれなりに騒々しいし、たまに鳴る「ガチャッ」という機械的な音もアルカナよりうるさい。
これはルーテシアEテックの唯一の弱点といえるだろう。
ガソリンのルーテシアとEテック・ハイブリッドの価格差は52〜62万円ほどだが、ハイブリッドは重量税など約12万円の減税が受けられるのでその差はもう少し詰まるはず。
一方ほかの輸入Bセグハッチと比べれば、充分に競争力のある価格設定だと感じた。
最後にEテックに関して多くの人が抱くであろう疑問について。
なぜルノー/日産/三菱アライアンスの中にeパワーとEテックという守備範囲の似た2つのシステムが存在するのか?
その答えは130km/hあたりを多用する欧州ではeパワーの効率が上がらないという点にあるようだ。
このため欧州ではEテック搭載の日産ジュークが販売されているので、シナジー効果がないわけではないのだ。
だからといってEテックが日本の道路事情にあわないということでは、もちろんない。
とはいえ少し走行ペースが速めのユーザーの方がこのクルマの旨味を享受できる傾向はありそう。
高級感が上手く伝われば、Bセグハッチの中でルーテシアの存在感が高まるはずだ。
ルノー・ルーテシアEテック・ハイブリッドのスペック
価格:329〜344万円
全長:4075mm
全幅:1725mm
全高:1470mm
ホイールベース:2585mm
車両重量:1310kg
パワートレイン:直列4気筒1597cc
最高出力:91ps/5600rpm
最大トルク:14.7kg-m/3200rpm
最高出力(メインモーター):49ps/1677-6000rpm
最大トルク(メインモーター):20.9kg-m/200-1677rpm
最高出力(サブモーター):20ps/2865-10000rpm
最大トルク(サブモーター):5.1kg-m/200-2865rpm
ギアボックス:電子制御ドッグクラッチマルチモードオートマティック
ルノー・ルーテシアEテック・ハイブリッド 宮澤佳久