ビジネスやIT、医療分野など、ニュースがよりわかりやすくなるための、メディアでよく見聞きする用語のその意味や使用例を連載で紹介しています。これまでの「ホールディングス」「エビデンス」「コンプライアンス」などの用語は文末のリンク先を参照してください。

今回・第14回は、パソコンやスマホの操作中に表示されることがある「Cookie(クッキー)」という用語の意味を、編集スタッフ・藤原椋(ふじわら・むく)が大正大学表現学部の非常勤講師で情報文化表現が専門の大島一夫(おおしま・かずお)さんに尋ねました。

「Cookieを有効にする」とどんなメリットがある?

パソコンやスマホ、タブレットでネット検索をして特定のサイトにアクセスすると、最近、「すべてのCookieを受け入れる」、「Cookieを有効にする」などと大きく表示されることがあります。

友人たちは、「詐欺注意のアラートか!? と身がまえる」「よくわからないので、無視して表示画面を閉じる」と言います。まずは、「Cookie」とは何なのかを教えてください。

「Cookie」(クッキー)とは、ウェブサイトにアクセスした際に、ユーザーのパソコンやスマホ内に保存される情報データのことです。そのサイトへの訪問回数、日時、パスワード、メールアドレス、閲覧履歴、検索キーワードなど、ユーザーの入力した情報や操作が、特別なファイルに保存されます。そうした情報が「Cookie」と呼ばれ、保存容量は小さく、基本的には不正利用されないようになっています。

自分のサイト閲覧の様子が、自分のパソコンやスマホに保存されるということですね。何のための機能ですか。

ユーザーにとっては、再びそのサイトを使用する際に便利になります。例えば、会員登録をしたサイトにログインするとき、アクセスのたびにIDやメールアドレス、パスワードを入力するのは面倒でしょう。しかし「Cookie」によってそれらが保存されていれば、入力せずとも自動ログインができます。

また、ショッピングサイトで気になる商品を「お気に入り」やカートに一度保存すると、後日でも、その続きから買い物ができます。広告も、ユーザーの興味や関心のあるものが表示されやすくなります。こうしたことが、「Cookieを受け入れる」、「Cookieを有効にする」をオンにしていると可能になるわけです。

事業者はマーケティングに活用する

では、ウェブサイト側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

「Cookie」は、そのウェブサイトを運営する事業者や広告配信事業者にも利用され、ユーザーが興味のある情報を知ることができます。どの商品、サービスが注目をされているか、どの時間帯にサイトが閲覧されているかなどを、ビジネスのマーケティングに活用することが可能になるわけです。

改正個人情報保護法の施行で表示されるように

それなら、冒頭でお話しした友人たちの意見のように、個人情報に不正アクセスや不正利用をされかねないなどと、警戒されることもありそうです。

近ごろ、画面に「Cookie」に関する警告が頻繁に表示されるのは、4月1日(2022年)から改正個人情報保護法が施行されたからです。これまではユーザーがあまり意識することなく「Cookie」を使っていましたが、今後は「Cookie」が利用されることを予告したうえで、ユーザーに「Cookie」を使うか使わないかを判断してもらうようになったのです。

「Cookie」は第三者が勝手に使えるものではなく、あくまでもサイト側とユーザーが互いに有益な情報を利用する仕組みです。しかし、それがユーザーに伝わっていなかったり、サイト側で「Cookie」の情報管理が適切でなかったりすると、悪用される恐れもあるわけです。

これまでも、ユーザーが「Cookie」のデータを守りたい場合は、各ブラウザから削除することができました。ブラウザとはウェブサイトを閲覧するためのソフトで、「Google Chrome(グーグル・クローム)」、「Safari(サファリ)」、「Microsoft Edge(マイクロソフト・エッジ)」などがあります。削除の方法は各ブラウザごとに違うので、検索して調べてください。

このシステムはスマホで使用するブラウザでも同様で、「Cookie」を削除する、または使わないようにすることができます。

共有のパソコンでは「Cookie」を無効に

「Cookie」は個人情報漏洩(ろうえい)のリスクはないのでしょうか。

誰かとパソコンを共有している状態、例えば会社の共有パソコンやネットカフェのパソコンなどでは、自分が知らぬ間に「Cookie」に残した情報を使われて、不正ログインされることが起こりえます。

またパソコンやスマホを紛失した際に、ロックがかかっていなければ悪用される可能性もあるでしょう。とくに、ショッピングサイトに登録したクレジットカードや電子マネーなどの決済情報、有料サイトにIDとパスワードを保存している場合は、常にそのリスクを想定しておく必要があります。それを考えると、不審なサイトでは「Cookie」は使わない方がいいですね。

子どもが親のパソコンで勝手に買い物をしていた、というケースもよく耳にします。

最低限、パソコンやスマホにロックをかける、2段階認証などの設定は必要です。日常的にネットを利用している状況では、便利な「Cookie」を使わざるをえないでしょう。しかしその背後では、「Cookie」などさまざまな仕組みが働いています。こうしたことを意識して、リスクがあることも忘れずに使ってください。

ありがとうございます。「Cookie」とパーソナルな情報利便性、そして背中合わせにリスクもひそんでいることを前提に、取り扱いかたを理解して利用したいものです。

次回・第 15回は「ストレージ」についてお尋ねします。

(構成・取材・文・イラスト 藤原 椋/ユンブル)