新たな電動クロスオーバー ジャガー、2025年までに3台の新型EV発売 ブランド再興目指す
高級路線の電動クロスオーバー
ジャガーは、2025年に3台の電動クロスオーバーを発売する計画を明らかにした。年間5万〜6万台のEVを製造する高級EVブランドとして、新たな領域に足を踏み入れようとしている。
【画像】英国の伝統受け継ぐ高級スポーツカーブランド【ジャガーの現行モデルを写真でじっくり見る】 全140枚
3台の新型車には、「パンテーラ」と呼ばれる新開発のプラットフォームを導入し、ジャガー・ランドローバーの英国ソリハル工場で製造する予定だ。
ジャガーは高級EVブランドとしての地位を確立すべく、電動クロスオーバーを開発中だ。(画像は予想レンダリング) AUTOCAR
2年前にジャガー・ランドローバー(JLR)のCEOに就任したティエリー・ボロレは、ジャガーのラインナップを再構成する計画を発表。数か月のうちに、ランドローバーのデザインチーフであったジェリー・マクガバンがグループ・クリエイティブ・ディレクターに昇格し、ジャガーのデザインチームも大きく再編された。しかしそれ以来、将来の計画についてはほとんど触れられてこなかった。
最新の情報によると、エントリーモデルとしては、レンジローバー・スポーツに近いコンパクトモデルが導入されるという。3ドアと5ドアのボディタイプがあり、それぞれ別のモデルとして分類される。価格は8万〜9万ポンド(約1300万〜1500万円)程度となる見込みだ。
パワートレインはシングルモーターとデュアルモーター(2輪駆動と4輪駆動)が用意され、高性能モデルの「SVR」もほぼ間違いなく設定されるだろう。
ジャガーブランドの伝統守れるか
また、フラッグシップモデルとして大型のクロスオーバーも計画されている。後部座席のスペースを広くとった、中国市場と北米市場で好まれる高級志向のモデルとなる見込み。デュアルモーター、4輪駆動のレイアウトが標準仕様となりそうだ。価格はおよそ12万ポンド(約2000万円)からとされているが、20万ポンド(約3300万円)近いSVRモデルも導入されるだろう。
JLRがジャガーの将来像について2年間も沈黙してきたのは、経営陣がジャガーのような長い歴史と伝統を持つブランドをオーバーホールすることのリスクに直面していたからだと考えられている。同社の幹部であるニック・コリンズによれば、新モデルを発表する前に「何か素晴らしいものを見せる」準備をしているとのこと。
2024年には、新型車のコンセプトモデルを見ることができるだろう。(画像は予想レンダリング) AUTOCAR
新型コロナウィルスの感染が広がる直前の2019年の世界販売台数は、レンジローバーが約5万5000台、レンジローバー・ヴェラールが約6万台、レンジローバー・スポーツが約8万5000台であった。こうした実績から、ジャガーも市場に受け入れられれば年間5万台を売ることも可能だという自信につながったのだろう。
ジャガーの言う「非常にエキサイティング」なデザインの新型車は、2024年にモーターショーなどでコンセプトとして公開されると見られている。
ジャガーのEV開発は、現在、サプライチェーンの問題と部品不足によって、困難な状況に陥っている。JLRは、世界的な半導体不足の影響を非常に強く受けているようだ。しかし、同社の幹部によると、新型レンジローバー、レンジローバー・スポーツ、ランドローバー・ディフェンダー130を無事にリリースしたことで、リソースをジャガーに集中させられるようになったという。
今後10年ですべてが生まれ変わる?
ジャガーの再編に伴い、新しいプラットフォーム、コネクティビティや自動運転機能に関するパートナーシップ、さらには英国での生産体制など、幅広い面で「変革」が進むと考えられる。
まず、「パンテーラ」と呼ばれる新プラットフォームは、個性的なデザインの実現を可能にするとともに、最先端のパワートレインや車載技術にも対応する。次世代のモーター技術、800Vの充電アーキテクチャ、コネクティビティ、高度な自動運転機能などの導入が期待される。
ジャガーが現在販売するEVは、2018年に発表されたIペイスのみ。
このプラットフォームは、JLRのエンジニアと、ジャガーIペイスを製造する自動車用品大手マグナが共同開発する予定だ。JLRは今後、プラットフォームの「共通化」を進めようとしているため、パンテーラのコンポーネントの重要性はさらに高まるかもしれない。
持続可能性とコネクティビティ
ジャガーの新型車は、環境負荷が低くなるように設計され、石油を原料とする製品の使用を避けた「持続可能」な素材を使用することになるようだ。例えば、ウールやシルク、リサイクルファブリックから作られたカーマットのほか、セラミックや石、ガラスでできたインテリアトリムなどだ。
先述のプラットフォームはアルミニウム製で、こちらもリサイクル素材から作られる可能性が高く、古い飲料缶などが使われるかもしれない。
今や高級車ブランドにIT技術の活用と持続可能性は欠かせない要素となっている。(写真はジャガーIペイス)
あるアナリストは、「プレミアムはグリーンとは切り離せない」と語っている。
コネクティビティの強化
コネクティビティも重要な要素だ。JLRはIT大手Nvidiaと協力して、クラウド接続機能(クルマと周辺環境からのデータ収集、および有料サービスの配信)および自動運転機能を備えたソフトウェアを開発中だと発表している。
JLR戦略ディレクターのフランソワ・ドッサは今年初め、次のように述べた。
「重要なのは、すべてのOEMがそれぞれ異なるエレクトロニクスを持っているということです。わたし達はEVAと呼んでいます。これは非常に洗練されたアーキテクチャで、Nvidiaと当社の技術を統合するつもりです」
英国での生産体制に変化も
ジャガーは、英国に拠点を置くサプライヤーからバッテリーを調達することも試みているようで、エンビジョンAESCと提携する可能性を示唆する報道があった。エンビジョンAESCはすでに日産自動車向けにバッテリー工場を建設している。
ジャガーのバッテリー工場は、イングランド北部のティーズサイドにある製鉄所跡地に建設される可能性がある。ただし、フィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、バッテリー関連のパートナー企業については「最終的な決定はされていない」という。
ジャガーの生産工場は現在、ウェスト・ミッドランズに位置するソリハルという町にある。
また、EVをどこで作るかという問題だが、1つの可能性として考えられるのは、既存のソリハル工場の拡張である。現地メディアでは、同工場に隣接するフットボール・クラブの敷地が拡張に利用できるかもしれないと報じている。
バーミンガム空港にほど近いソリハル工場は、飛行機での人の往来も容易であろう。ただし、ソリハルの拡張計画が本当にジャガーの新型車生産のためのものであるかどうかは、今のところ確認されていない。