「自動車整備士不足」が指摘されている。日本自動車整備振興会連合会の調べ(以下、同じ)によると、2014年度の整備士の数は34万2486人。これが減少をし続け19年度には33万6897人。確かに「不足」トレンドが認められる。

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 何故か。「高齢化社会の進捗」、「若者の自動車離れ」が大きな要因とされる。前者が「リタイア」であることは分かる。後者はどう受け止めればよいのか。

 「(若者の多くが生活する)都市部での交通網の整備」は頷ける。が、ハッとさせられたのが「高コスト」という角度。車の高級化が進み、いまや軽自動車でも「200万円」を超えるものが少なくない。これに駐車場や車検費用などのランニングコストを勘案すると、若者層の車離れも分かる。余談だが、某大手自動車保険の専務から「若い社員で免許なし、というのがけっこういる」と聞いたことがある。

 しかし、整備工場数の状況をみると14年度:9万2135件に対し20年度で9万1533件。「ほぼ横這い」状況。斯界に明るい向きは「一昔前に比べ車に対する消費者の姿勢が変わっている。性能が日進月歩で高くなり、長く乗るようになった」とし、こう続けた。「つまり整備工場数が横這いであることと考え合わせると、整備工需要はある。自動車の性能は今後とも高まることは必至で、むしろ整備士需要の高まりが考えられる」。

 困った。ならば整備工の収入はどうなのか。14年度の年収は378万円。対して18年度は391万円。幅はともかく上積み状態にある。そして、この数値はあくまで平均値。整備士には3級から1級まであり、資格に応じた収入体系になっている。

 本稿の落としどころに困っていた最中、『60代のシニア自動車整備士の就業が2.5倍に増加、8割が1カ月以内に内定』というリリースが届いた。発信元は50歳以上のシニア人材に特化した人材紹介と人材派遣を展開する、シニアジョブ。2018年10月から開始した自動車整備士派遣を開始。今年3月23日時点までに転職・再就職を仲介した233名を基にした調査データだという。それによると・・・

・(整備士、以下同)約7割、60代では約8割が登録から1カ月以内に内定を得た。

・全体の就業数は2年で約1.5倍と年々増加、60代も約2.5倍に増加。

・転職・再就職のうち60代が占める割合は約1割から、3年で約2割と増加傾向。

・派遣社員として転職・再就職する割合が2年で4%に、60代の場合は20%へと急増。

 整備士が求められている市場環境は、この調査からも容易に伺える。シニアジョブのビジネスが果たしている役割も評価できる。

 だがその一方で若者層が整備士を職業として選ぶ「環境未整備」を、痛感した。