テトラ中性子核を生成する手法のイメージ(画像: 理化学研究所の発表資料より)

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 無電荷の核システム、つまり陽子を含まない原子核で、この宇宙で安定して存在できるのは中性子星だけである。中性子星は、太陽の8倍ないし10倍程度の質量を持つ恒星が、超新星爆発を起こした後にその中心核が圧縮された結果形成される、非常に特殊な存在だ。おうし座のかに星雲M1の中心星はその代表格である。

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 中性子星のように非常に強い重力によって圧縮を受ける状況では、中性子のみで構成される原子核が安定的に存在可能だ。だが実験室的にこのような原子核を作り出すことは可能なものの、存在できるのはごく短時間で、構造をじっくり観測してその謎を解明するのは至難の業だ。理化学研究所らの国際研究グループは23日、4個の中性子だけでできた原子核の観測に成功し、その状態を明らかにしたと発表した。

 研究には、理化学研究所の他、ダルムシュタット工科大学、東京大学、東京工業大学などが参加。その成果は、6月22日付の科学雑誌「Nature」オンライン版に掲載された。

 原子番号は、原子核に含まれる陽子の数を表すものだ。研究チームは、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」を使用し、陽子を含まないいわば「原子番号ゼロ」と言える奇妙な原子核を観測した。

 観測は、RIBFで得られるヘリウム-8(陽子数2、中性子数6)のビームと陽子の散乱により生成させ、成功させた。RIBFは全ての元素の不安定原子核を発生させ、それらの性質を調べる「多段式」の加速器だ。

 観測成功の鍵は、ヘリウム-8から4個の中性子を撹乱させることなく、ヘリウム-4(陽子数2、中性子数2)を瞬間的に抜き取る反応を用いたことだ。テーブルクロス(ヘリウム-4)の上に乗った4個のワイングラス(中性子)を壊すことなく、テーブルクロスを引き抜くのと同様の原理だという。

 中性子4個から成る「テトラ中性子核(4n)」は、約60年前から探索され続け、2015年にはRIBFを用いて初めて観測に成功していた。だがテトラ中性子核の状態を確定させるには、質量精度が不足していたという。

 今回、先に示した新たなアイデアを用いた実験により、4中性子系は束縛状態ではなく、共鳴状態にあることが確かめられた。この成果は原子核、元素の安定性を決定づける「核力」のモデルを大きく変える可能性があり、中性子星の理解にもつながることが期待されている。