韓国は現地時間6月21日夕方、国産ロケット「ヌリ号」の打ち上げと衛星の軌道投入に初めて成功しました。韓国航空宇宙研究院(KARI)は、「韓国が独自の宇宙輸送能力を確保し、自主的な国家宇宙開発能力を備えるようになった点で大きな意味を持つ」と述べています。


【▲ 羅老宇宙センターから打ち上げられる「ヌリ号」(Credit: KARI)】


ヌリ号は現地時間6月21日午後4時に、羅老宇宙センターから打ち上げられました。羅老宇宙センターは、ソウルの南500kmにある外羅老島に位置します。打ち上げから2分後、第1段機体のエンジンが予定通り燃焼を停止し、第2段機体のエンジンが燃焼を開始しました。打ち上げから4分後には、ロケットの先端にあるフェアリング(衛星を保護する部分)の分離にも成功。そして約14分後、搭載されていた性能試験用の衛星と模擬衛星を予定の軌道へ投入することに成功しました。


KARIによると、打ち上げから42分後に南極の世宗基地にあるアンテナを通じて、性能試験衛星との初期地上局交信を成功させ、衛星の位置を確認することに成功したということです。今後は地上局との双方向交信を実施し、衛星の状態を確認していくと発表しています。


韓国のユン・ソンニョル大統領は「韓国からの宇宙への道が開かれた」と今回の成功を称賛しており、韓国の宇宙開発の進歩に期待が寄せられます。なお、KARIによると2027年までに4回の発射を計画しているということです。


【▲ 発射台にて打ち上げ準備が進められる「ヌリ号」(Credit: KARI)】


今回打ち上げられたヌリ号には、性能試験用の衛星「PVSAT」と韓国国内の大学と研究所が開発・設計した4機の超小型衛星、および1.3tの模擬衛星が搭載されました。PVSATは、重量162kgの衛星です。ここに4機の超小型衛星が搭載されており、軌道に投入されます。「STEP Cube Lab-II」は、朝鮮大学校によって開発された、重量が9.6kgある6Uサイズ(CubeSat規格)の衛星です。ソウル大学校によって開発された3Uサイズの「SNUGLITE-II」、延世大学校によって開発された「MIMAN」、韓国科学技術院によって開発された「RANDEV」も搭載されました。


ヌリ号はKARIが約10年かけて開発した韓国の国産ロケットです。全長47.2m、直径3.5m、重量200tの3段式ロケットで、1500kgの衛星を高度600〜800kmに投入する能力を持ちます。燃料はケロシンと液体酸素を用いており、第1段ロケットには推力75tのエンジン4基をクラスター化し、推力300tを出す仕組みです。また第2段には推力75tのエンジンが1基、第3段には推力7tのエンジン1基が搭載されています。


【▲ 発射台に屹立する「ヌリ号」(Credit: KARI)】


ヌリ号の初めての打ち上げは2021年10月21日に実施されました。打ち上げ後、第3段エンジンの点火と燃焼まで成功したものの、衛星の軌道投入までは至りませんでした。KARIによると、ロケット第3段にある酸化剤タンクの圧力低下により、第3段の液体エンジンが予定していた512秒の燃焼時間のところ、475秒で終了したためと発表されています。そのため、軌道投入に必要な速度まで及ばず、軌道投入に失敗しました。


 


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Image credit: KARIKARI - 대한민국 우주 시대 개막! - 대한민국 독자개발 우주발사체 「누리호」 발사 성공 -KARI - ヌリ特設サイトSpaceNews - South Korean rocket puts satellites in orbit for the first time in second flightSpaceflightNow - South Korea’s all-domestic satellite launcher reaches orbit for first timesorae打ち上げ速報 - 韓国、国産ロケット「ヌリ」2回目の飛行試験を実施 -打ち上げ情報

文/sorae編集部