家族会議を重ねて、満足の家をつくるはずが…。工事の途中で心変わり、変更依頼をしたのが運の尽き。現場はドタバタ、でき上がりもイマイチ。追加費用もかなりかかってしまい大後悔するはめに。そんな体験談をご紹介。間取りのありかたと変更にまつわるリスクについて、専門家の解説もあわせて。

家族会議が楽しくて、家づくりはみんなの一大イベントに!

子どもたちの成長にともない、賃貸住宅が手狭になったWさん夫妻は、思い切って家を建てることを決意。

「家づくりの工程を家族の思い出にしたい!」と、間取りは中学1年生と小学5年生の子どもも交えて、何度も家族で話し合ったそう。

その結果、家事効率のよい動線をはじめ、子どもたちが考えた個室、書斎や客室にも使える予備の洋室など、こだわりの間取りが完成しました。

 

心変わりが運の尽き…ドタバタの家づくりに!

工事が始まって順調に進んでいきましたが、基礎工事でまさかの中断という事態が発生。というのも、じつは、間取りが決まったあとも、妻は予備室を洋室か和室かのどちらにするか、ひそかに迷っていたからです。

「和室で寝転んでくつろぎたいし、ひと部屋ぐらい和室があったほうが、なにかと便利よね」

というわけで、あわてた夫は設計士たちと話し合いを…。すったもんだがあったものの、幸いにも工事を続けても、和室に変更できることが判明。工事は継続します。しかし、洋室で計画していたため窓には障子を追加、部屋の入り口は開き戸から片引き戸に変更。

 

壁一面に予定していたクローゼットは間口を狭め、一隅に床の間風のコーナーを造作し、壁や天井は和風の内装へ。大変だったのがフローリングから畳への変更です。

「部屋にぴったり納まるサイズの畳がなくて。床の一部を板の間にしてごまかすはめに。それに思いのほか、追加費用がかかったのも痛かったですね。でも、これも家族の希望ですから…」と、力なく笑う夫です。

アドバイス:間取りは、今の家族ではなく、成長した将来を見据えて考える

プランを決めたあとでの変更は、なにかとドタバタを招くものです。加えて、多くのリスクも発生します。そもそも、Wさん夫妻の間取りの考え方自体、もう少し長期的な視点があってもよかったかもしれません。一級建築士・大島健二さんが解説。

 

●大島さんのアドバイス

子どもが子どもである期間は最大でも18年ほどで、さらに個室を必要とする期間はもっと短くなります。また、家族は増えるかもしれないし、将来介護のために親と同居することになるかもしれません。

「間取り」とは、現在の欲望をカタチにするのではなく、自分たちが成長していく、老ていく将来を見据えながら、柔軟に空間をつくっていくことです。

想像しきれない場合は「間取らない」という方法もあり、住みながら少しずつ間仕切りを変化させたりするのが賢明です。

 

着工後は確認申請に提出した図面と壁の位置や窓の大きさ、位置が変更になる場合には、「計画変更」という追加の申請を行わねばなりません。また構造計算を行っている場合は、再計算が必要になることもあり、追加工事費用だけでなく、設計者に対しても追加の費用と手間が発生します。

工事現場の士気の低下にもつながるので、できる限り「着工後の間取りの変更」は行わないことが望ましいです。