優勝は果たせなかったが、大会のラストマッチは勝利し3位でフィニッシュ。6試合を戦い抜いたU-23アジア杯で、大岩ジャパンが得た経験値は貴重な財産となる。(C)2022 Asian Football Confederation (AFC)

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 2年後のパリ五輪に向け、実り多き活動となった。

 U-23アジアカップに挑んだU-21日本代表は、3位決定戦でU-23オーストラリア代表に3−0で勝利し、3位で大会を終えた。大岩剛監督が大会前から口にしていた「優勝」は果たせなかったが、2年後に行なわれる同大会(パリ五輪の最終予選を兼ねる)の組分けで第1ポッドに入る権利を得た価値は大きい。

 今大会を振り返ると、収穫は大きく分けて3つある。1つ目が、アジアの強豪国と真剣勝負の場で対戦できた点だ。

 グループステージ(GS)では、力があるU-23UAE代表に2−1で競り勝って白星スタート。後に大会を制することになるU-23サウジアラビア代表とはスコアレスドローで、U-23タジキスタン代表こそA代表に主力が参加していた関係でベストメンバーではなかったが、きっちりと3−0で勝利を収める。グループ2位で決勝トーナメント進出を決めると、準々決勝ではMFイ・ガンイン(マジョルカ)を擁するU-23韓国代表に3−0で快勝した。

 準決勝は開催国のU-21ウズベキスタン代表に0−2で敗れたが、3位決定戦では、海外組を招集しているU-23オーストラリア代表に3−0。中東勢、韓国、オーストラリア、ウズベキスタンといった2年後の最終予選でも立ちはだかるライバルたちと対戦し、異なるスタイルの相手と戦えたことは大きな財産だ。大岩監督も「アジアの中で“強い”と言われるチームと対戦できて、選手もそうですけど、私も含めたスタッフにとっても今後に向けて実のある大会だった」と振り返る。

 特に今回のアジアカップは真剣勝負の場。冒頭でも述べた通り、2年後の同大会に関わるコンペディションで、ほとんどの国がベストメンバーを揃えてきた。パリ五輪世代のU-21世代ではなく、レギュレーションに則してU-23世代で挑んできたチームが多く、力があるアジアの強豪国と緊張感を持って戦えた経験は他では味わえない。1つのミスが命取りになるようなシビアな場だからこそ、選手たちも学びがあるし、段違いのスピードで1試合ごとに成長を遂げていく。
 
 チーム最年少の18歳、DFチェイス・アンリは今大会を通じて大きく成長した選手のひとり。4月上旬に尚志高からシュツットガルト入りが発表されたCBは、直後に渡独してU-23チームでトレーニングを積んでいたが、3月下旬のドバイカップ以降は試合から遠ざかっていた。

 そうした状態を考慮して、指揮官はチェイスを積極的にスタメンに抜擢。UAEとの初戦では連係ミスから失点に絡み、決して褒められるようなパフォーマンスではなかったが、続くサウジアラビア戦では見違えるようなプレーを披露。韓国戦でも年上の相手に臆さずに挑み、得意の空中戦でバチバチとやり合った。

 ウズベキスタン戦では疲労の影響で足が思うように動かなかったが、そうした経験も中2日で戦う日程だから味わえたこと。「足が重くなってしまったのはある」と反省しつつも、「パスは怖がらずに出せた」と序盤戦では通せなかった縦パスやフィードで成長の跡を示した。

 メンバーで唯一の大学生であるMF佐藤恵允(明治大)も試合毎に成長。序盤戦は得意のドリブルを封じられる機会が多かったが、オーストラリアとの3位決定戦では身体の強さを生かした仕掛けでチャンスを作り、角度のない位置から強烈な一撃をねじ込んでチームの勝利に貢献した。真剣勝負の場が選手の成長に繋がったことを考えれば、今大会で積み重ねた経験値は価値あるものだ。
 
 2つ目は、チームとしての成熟度を高められた点だ。3月に発足した大岩ジャパンの活動は、今大会が4回目となる。うち2回は国内のショートキャンプで、じっくりとチームを作る機会は3月下旬に10日間ほどあったドバイカップだけだった。今後も長期間の活動ができる機会は限られており、スタッフと選手の関係性を深める場として、6試合をこなせた今回のU-23アジアカップは大切な時間だったと言える。