土星の衛星テティスとディオーネの赤道に沿った楕円形のクレーターのパターン (c) NASA / JPL / SSI / Lunar and Planetary Institute

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 天体の表面にあるクレーターは円形で、楕円形はまれである。だが、土星の衛星であるティティスとディオーネには楕円形のクレーターが多く存在する。これらの星では、他の外惑星の衛星とはクレーター形成年代分布傾向が異なっている。これは土星には他の外惑星と異なる特別な事情があることを示唆する事実である。

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 米国サウスウエスト研究所は21日、この謎に挑んだ研究成果を公開した。今回用いられたのは、クレーター年代学と呼ばれる手法で、クレーターの形や大きさ、分布密度から年代特定するものだ。

 浸食や風化が起きない場合、古い地形ほどクレーターの数は多くなる。このことを利用して、天体や地形の形成年代を特定するのがクレーター年代学だ。最近では大阪大学らによる研究チームが月面クレーター調査において、8億年前に小惑星帯で大規模な小惑星同士の衝突が起きていたことを突き止めた実績がある。  サウスウエスト研究所の研究では、土星の衛星ティティスとディオーネには、クレーターとしてはまれな存在とされる楕円クレーターが何千個も存在するという。

 赤道付近の楕円クレーターは、長軸が主に東西方向を向いており、高緯度領域に見られる楕円クレーターは、長軸方向がランダムである。高緯度領域に見られるクレーターの分布傾向は、海王星の衛星トリトンのそれに類似していたという。

 今回の研究によると、ティティスとディオーネで楕円クレーターが多く見られる原因は、土星の周りを局所的に周回する塵円盤が存在していたためという。

 従来、クレーター年代学は、岩石サンプルの回収による年代測定と、クレーター観測による年代推定値の比較がなされ、クレーター観測の信頼性が確認できている月面のみで盛んにおこなわれてきた経緯がある。近年外惑星の衛星の鮮明な画像データが蓄積されてきた結果、月以外の浸食や風化が起きない天体への適用が広まってきている。この分野の今後の研究には大いに期待が持てそうだ。

 今回の研究成果に関する論文は、Earth and Planetary Science Lettersで公開されている。