エンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

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2回までは直球が軸、3回から軸球変更「確率の高いものを各回ごとにチョイス」

■エンゼルス 4ー1 マリナーズ(日本時間17日・シアトル)

 エンゼルスの大谷翔平投手が16日(日本時間17日)、敵地でのマリナーズ戦に「3番・DH兼投手」で出場し、6回を投げ3安打6奪三振無失点の好投で今季5勝目を挙げた。打撃では右前打と左前打を放ち、自己最多タイの11試合連続安打を記録した。

 今季11試合目の先発登板は、配球の妙で6回を無失点に抑えた投球だった。打者23人に対して93球を投げ7回から救援につないだ。1、2回は直球を軸に組み立てたが、一転、3回は直球2球スライダー9球、4回は直球3球スライダー7球と軸球を変更。そして再び直球主体で残りの2回を組み立てた。

「もちろん打者の傾向も見ますし、あとは自分の調子。球種の曲がり具合だったりとか。それで確率の高いものを各回ごとにチョイスして、打者ごとに選んで投げたという感じです」

 6回2死一塁の場面で迎えた5番ローリーには、直球で3球勝負に出た。最後、この試合最速タイの99マイル(約159キロ)で空振りの三振を奪って雄叫びを上げた。この圧巻の勝負の初球、ローリーは守備シフトでがら空きになっていた三塁方向へセーフティバントを試みているが、それが伏線となって渾身の直球勝負としたのかという問いかけに、大谷は敏感に反応した。

「全体的に最後の方は(相手打者が)変化球ケアが強くなっていたので。最初(序盤)は変化球。その裏というか確率の高い方を投げたという感じですね」

 感情を抜きに、冷静な視線で打者の反応を見ながら組み立てた93球だった。

打者1人に対して何球を費やせるのか…常にある“逆算”の道筋

 ただ一人、2安打を許した「4番・DH」のスアレスに対しては、打たれた“結果球”から次の打席の“入り球”に根拠のある一投を選択している。

 初回、内角の直球でスアレスのバットをへし折ったが、中前に運ばれると、次打席の初球はスライダーで入った。この打席でも直球を安打されたが、3打席目はスプリットで入りスライダーで外野フライに打ち取った。この日、最も警戒すべき打者にも「裏=確率の高い」配球で一球一球打ち取るための作業を、時に大胆にかつ繊細に遂行していった。

 そして、判定を下す審判の存在も俯瞰してマウンドに立った――。

 四球と安打、そして暴投で走者を二、三塁に置いた初回、大谷はこの試合最も多い23球を費やし無失点で終えると、アリエタ主審に歩み寄り内外角と高低のストライクゾーンをあえて確認している。これは本来、捕手がもつべき心得の一つだが、マウンドに立つ大谷が直接動くことで審判の心理も違ってくる。打者心理、投手心理があれば審判心理というものもある。大谷は、この3つ目を読むしたたかさを身につけた。

 今季3度目の7回には到達できなかったが、「7球から15球少なかったら全然いけるんじゃないかなと思います」と大谷。長い回を投げるためには、打者1人に対して何球を費やせるのか、“逆算”の道筋が常に頭に描かれている証左の言葉だ。

 大谷翔平はかくして今季5つ目の白星を手にした。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)