「ESHIKOTO」内にある天井の高いイベントホール「臥龍棟」。
左に見えるのが樹齢200年の地元の杉を丸ごと使ったバーカウンター。

人気の日本酒ブランド「黒龍」や「九頭龍」などを展開する黒龍酒造の親会社、石田屋二左衛門は、地元・福井県吉田郡永平寺町に建設中の約3万坪の敷地からなる酒蔵観光施設「ESHIKOTO」(えしこと)内に、6月17日(金)、レストランや酒ショップ、貯蔵セラーやイベントスペースをオープン。それに先駆け、メディアツアーが開催されました。今回はその時の様子をレポートします。

まずは「ESHIKOTO」(えしこと)とは?
「えし」は古い言葉では「良い」の意味。つまり「えしこと」とは「良し事」。逆に読むと「とこしえ(永)」となり、「永久の豊かな時間」という想いを込めて、石田屋二左衞門の代表取締役 水野直人氏が、約10年前より構想してきた巨大プロジェクトなのだそう。

今回は敷地全体の3分の1の規模で開業しますが、今後さらに醸造施設、醸造ラボ、宿泊施設…と続々と建設していく予定とのこと。2年後に同社では創業220年を迎えますが、ちょうどその頃、北陸新幹線が福井県にも開通。

つまり注目すべき観光スポットとして、これからどんどん熱くなるのが福井、そして北陸。「国内外に向けて福井の食や酒、自然、伝統工芸の魅力を存分に発信していきたい!」と黒龍酒造の8代目でもある水野氏は熱く語っておられました。

左が石田屋二左衞門 代表取締役 水野直人氏、右が黒龍酒造 醸造部部長 杜氏 畑山浩氏。

まずは施設右側の「臥龍棟」へ。天井の高さが約11メートルもあり、尖った天井が教会や大聖堂などを彷彿させる厳かで上質な空間(冒頭写真)。イギリス人建築家 サイモン・コンドル氏(日本の西洋建築の礎を築いたジョサイア・コンドルの子孫)がデザインしたもので、イベント空間として様々なシーンでこれから利用されるとか。結婚式やその二次会などにも良さそうです。

福井ならではの希少な笏谷石(シャクダニイシ)の壁に囲まれた貯蔵セラー「臥龍房」は、瓶内2次発酵の高級スパークリング日本酒を約8,000本も熟成中。こんなに巨大なセラーを見るのは生まれて初めてで感動的。まるでフランス・シャンパーニュ地方にでも来たようです。

実はこのセラーの前で、俳優の斎藤工さんがテレビの番組収録をしたのだとか。ファン垂涎の観光スポットとして、開業前からすでに注目されているようです。私も斎藤さんの大ファンなので、さっそく同じ位置で撮影してみました!

貯蔵セラー「臥龍房」のガラス前が“斎藤工さん収録スポット”です!

次は徒歩数分で着く隣の建物「酒樂棟」へ。移動中に龍などの楽しいアート作品とたくさん出会いますが、これらは女優でデザイナーでもある結城美栄子の作品とか。

2階のエントランスに着くと圧巻!素晴らしい景観に心を奪われ、言葉を失ったまましばらく動けなくなります。

車で移動していた時にはよく見えなかった九頭竜川の流れが一望でき、川面の白い飛沫まではっきり見え、それを取り囲むように美しい里山、そして自然豊かな新緑の山々が辺りに広がります。ちょうど建物の柱が1枚の絵画の額縁のような位置にあり、完璧な構図になっているではありませんか!建築家のその意図に気づくと、さらに感動はひとしおです。

階段を登ったら突然こんな景観が!見ているだけで心が浄化されます。
お酒とともに過ごす贅沢な大人時間。

「酒樂棟」内のレストラン「acoya」では、朝8時からモーニング御膳を提供し、ランチ御膳、カフェ、夕方のアペロタイムと1日中楽しめます。梅酒造りから出る黄金の梅や酒粕などを利用したパウンドケーキやチーズケーキなどの焼き菓子も提供(テイクアウトも可能)。

他にもランチでいただいた黒龍豚は、黒龍の酒粕を食べて育った豚で、ほろほろとやわらかく絶品。エディブルフラワーがあしらわれた美しいサラダは地元で有機栽培されたもの。福井特産の“へしこ”を使ったお椀まであり、福井テロワールを存分に楽しむことができます。酒造りで出る酒粕や梅など、フードロスをなくすためのSDGsの取組みにも感動しました。

黒龍の酒粕を食べて育った豚の料理や、酒粕入りの風味豊かなパンなどのランチ御膳。
ドリンクバー付き。

「酒樂棟」内、レストラン隣の酒ショップ「石田屋」では、ここESHIKOTOでしか販売していない限定酒が約15種販売されています。訪問時は3種のテイスティングもできました。その名も「永」(とこしえ)というお酒や、「ESHIKOTO AWA 2019 Extra Dry」という瓶内2次発酵で15ヶ月以上熟成した特別な高級スパークリング日本酒など。

前述の畑山杜氏の話では、「シャンパンのように瓶内2次発酵させますが、製造過程でドサージュ(糖分調整)をしていないのが特徴」とのこと。つまり、より難易度の高い製造方法で、より米本来の旨味を表現したナチュラルで上質なお酒ということですね。ちなみに畑山杜氏は先日、「第118回能登杜氏自醸清酒品評会」(能登杜氏組合主催)にて最高賞である「金沢国税局賞(能登杜氏名工賞)」を受賞されました。

瓶内2次発酵のスパークリング日本酒は芳醇でドライ。
乾杯酒としてはもちろん、食中酒としてもおすすめ。

酒ショップには越前箪笥や地元の伝統工芸品なども飾られており、とても文化的で粋な空間。レストランの壁は越前和紙を固めて作られており、また施設の至る所に、水野社長が地元を探し回ったという古民家の柱や木材、福井の希少な石「笏谷石」(しゃくだにいし)も多用されています。

1つの施設ながら福井県のテロワールがぎゅっと詰まったような、特別に濃厚な旅が送れました。次回北陸地方に行く際は、ぜひ立ち寄っていてはいかがでしょうか?

「ESHIKOTO」 
住所:福井県吉田郡永平寺町下浄法寺12-17
ESHITOKO公式サイト:https://eshikoto.com

<酒楽棟>
酒ショップ石田屋 営業時間10時から17時、定休日 水曜日 
acoya(あこや)   営業時間:8時〜18時、定休日:水、第1、第3火曜日
※営業時間は変更の可能性あり 

≪筆者プロフィール≫
▪滝口智子

国際きき酒師&サケエキスパート
飲食ライター歴20年の食いしん坊バンザイ!記者&PRプランナー。
日本酒やワインなどもこよなく愛す。
株式会社GreenCreate代表。
テレビ番組などにも出演中。