チュニジアのW杯制覇待ったなし!
これが最後の強化、これが最後の選考、これが勝負の6月と言われたサッカー日本代表試練の4連戦が終わりました。ブラジルに負けるのは想定内ではありましたが、ワールドカップ出場国同士での対決となったチュニジア戦でも「枠内シュートゼロ」での0-3大敗を喫するとはなかなかに厳しい結果でした。「チュニジアのほうがブラジルより強いのでは…?」「ブラジルはネイマール頼み」「ブラジルの優勝はナイな」と、心の平安を保つための過剰なチュニジア上げをせずにはいられません。
↓おお、0-3で負けたか!ブラジル以上の得点力があるようだな!
やめろ!ブラジルが遊び半分だったとか言うのは!
遊び半分でハーフコートサッカーやられるわけないだろ!
股抜きで抜かれまくって茶化されたんだぞ!
んなわきゃーない!(※強い気持ち)
キリンカップサッカーの決勝戦として行なわれた14日のチュニジア戦。ひと昔前なら「優勝なるか!?」と盛り上がったものですが、キリンカップとキリンチャレンジカップの違いすら忘れてしまった人類にとって、もはや優勝とかはどうでもいいのかもしれません。「勝ったほうが午後の紅茶をもらうイベント」である、それぐらいの意識なのかなと思います。今出ている選手たちだと、あの熱く激しかった1998年とか2002年とかの記憶もそんなにないでしょうしね…。
日本代表はキャプテン吉田麻也さん(ベラジョン)を中心に、シュミットダニエルさん(シントトロイデン)や伊藤洋輝さん(シュツットガルト)、鎌田大地さん(フランクフルト)といった「もうひと押し」をしたいメンバーを並べる布陣。吉田麻也さん(ベラジョン)も「この試合が最後のアピールの場になる」と他人事風に自分を鼓舞しています。「もう冨安・板倉でええんちゃうか」「キャプテンが必要なら座ってるだけの約束で長谷部を呼ぶほうがマシ」「攻守ともに普通に遠藤中心じゃないの?」という声を払拭する活躍ができるかどうか、各位の奮闘に期待が懸かります。
すると前半、日本は立てつづけにチャンスを生み出します。前半28分、FKからゴール前にふわりとあげた日本は、吉田麻也さん(ベラジョン)がヘッドで落とすとドフリーの位置で待つ南野拓実さん(リヴァプール)の足元へ。しかし、ここは上手くミートせずボールは真上への小フライとなります。「逆に上手い」「よく真上に上がったね」「さすが欧州CLの決勝戦メンバーなだけのことはある!」と小観衆も唸ります。
さらに前半35分、伊東純也さん(ヘンク)が右サイドを突破してゴール前にクロスを送ります。ここで待ち受けるのは期待の鎌田さん。触って、ゴールの方向に飛ばしさえすれば何でも1点になりそうな大チャンス。しかし、足が上手く当たらず、ボールは後ろに抜けていきます。「本番でコレをやったら一生のネタになるな!」「足でなくてもよかったのに」「あんだけ余裕あるならしゃがんで胸で流しても入りそう」と、テレビの前の視聴者も本番で面白いものが見られそうだという期待を大いに高めました。
↓ボールは入らず鎌田さんが入った!
終わってみれば前半は0-0、枠内シュートはゼロという状態。それでもチャンス自体は数多く作りました。前半41分にはオフサイドで裏に抜け出した南野さんがゴールを揺らす場面もありました。チュニジア代表が「オフサイドだな」と自己判定してチンタラ歩きながら一斉に手を挙げている姿には、「ははーん、効いてないアピールだな?」と僕もニンマリしたもの。枠内に蹴り込みさえすれば何点でも入る。誰も触れないボールを枠内に蹴り込みさえすれば必勝である。強い確信を持って後半に向かいます。
↓よし、この調子で後半も頼むぞ!
後半頭から田中碧さん(デュッセルドルフ)を投入して変化をつけていく日本。DFラインからの長い球出しも冴え、効果的な攻撃を繰り出します。左サイドバックに入った伊藤洋輝さん(シュツットガルト)からスーッと味方の足元まで伸びていくパスのようなクロスは、惜しくもシュートには結びつきませんでしたが、シュートさえ打てれば1点という精度でした。これは本番に向けても大きなアピールとなりそうです。
ただ、好事魔多しとはこのことでしょうか。後半8分、日本は伊藤さんが積極的な守備からボールを失うと、DFラインの裏にボールを転がされます。ここに走り込む吉田麻也さん(ベラジョン)と相手のFW。いつでもボールに飛び込めそうな距離感の吉田さんでしたが、最終的には相手の足目掛けて飛び込みました。ボールには足を伸ばさず、相手の足に突っ込む形でのPKには、中継の解説陣も相手FWの走り方を褒めるばかりです。これぞ吉田さん、まさに吉田さん。画面内を横切っていく板倉滉さん(シャルケ)の「あー」「自分がいけたのに…」「いっちゃった…」みたいな顔が国民の感情と見事にシンクロしました。ベラジョンにPKを決められてチュニジアが先制!
↓???:「これは伊藤に難がある、若さが出たね」
???:「自分たちのミスからの失点」
???:「軽率なプレーだった」
???:「本番では許されない」
↓???:「GKにもこのぐらいのタコ踊りで勝利への執念を見せて欲しかった」
???:「もっと世界を意識したプレーが必要」
???:「アピールが足りなかったね」
???:「アピールがなければ世界には行けない」
失点するならこういう形と思い描いていたようなプレーで失点をした日本ですが、アピールはこれでは終わりません。日本が古橋亨梧さん(セルティック)、三笘薫さん(サンジロワーズ)、久保建英さん(レアル・マドリード籍)、堂安律さん(VISA)を投入して「せめてシュートだけでも」と追い上げを図るなか、あの男が再びやってくれました。
後半31分、日本DFラインの裏に雑に送られたボールに対して、吉田麻也さん(ベラジョン)はプレミアで一時代を築いた的確な判断力を見せ、「これはGKのボールだな」と瞬時に見切ります。頼むぞシュミット、任せたぞダニエル、そんな顔です。しかし、シュミットダニエルさん(シジガユルイネン)は行きそうな顔をしながらバックしていきます。おおっと、いかないのか。
ただ、そこはプレミアで一時代を築いた吉田さんです。「そうか、ならば板倉だ」と横にいた板倉滉さん(シャルケ)をチラッと見て、「これは板倉のほうがイケるな」と任せることを選択。しかし、板倉滉さん(シルカボケ)は「え!?」と戸惑ったでしょうか、スピードを緩めてボールを見送ってしまいます。
いこかもどろかでふたりが戻ってしまった局面にあっても、さすがプレミアで一時代を築いた吉田さんです。「じゃ、俺か」と的確な判断でボールに向かい、一度は相手FWを弾き飛ばしました。不運にも競り合ったボールが相手の足元にこぼれたことで攻撃を断ち切ることはできませんでしたが、このわずかな時間で三度の的確な判断を繰り出したキャプテンシーはさすがプレミアで一時代を築いた選手です。
もしも周囲がプレミアリーガーであったなら、この場面は何事もなく終わったことでしょう。まさか相手にボールを取られるとは想像ができなかった味方が中央への戻りが遅れたのも、周囲がプレミアリーガーであれば起きなかったことだろうと思います。ベラジョンの2点目でチュニジアがさらに点差を広げました!
↓???:「プレミアではこんなことは起きない」
???:「まずGKが出てくるべき」
???:「他人任せにしてはいけない」
???:「声を出せ、声を!」
もうこうなってしまってはどうしようもありません。ワールドカップ出場国で先に2点をリードしてから、残り15分程度で追いつかれたり逆転されたりするようなマヌケはそうそういないのです。チュニジアはじっくり構えて前掛かりになる日本のカウンターを狙えばいいだけ。日本には枠内シュートすら生まれないまま迎えた後半48分、日本は吉田麻也さん(ベラジョン)のパスと受け手の動きが合わずに奪われると、一気にチュニジアが持ち上がります。
吉田さんが止めに行くも止まらず、別の選手(デュッセルドルフ)は縦に走ろうとする相手の横を切ってドッシリ構えており、小観衆が「はぁ?」と思っていた矢先、吉田さんが転ばした相手に引っ掛かってそのまま立ち往生する始末。さらに別の選手(サンジロワーズ)が飛び込んで一度はボールを奪うも、テキトーにバックパスしたらそのまま相手に返してしまうなど、数々のトンチキ連鎖により次々にかわされる日本は、ついに2対3という数的不利に。ここで左右にいる選手を怖がって真ん中を放置したままズルズル下がったら、真ん中の選手に普通にゴールに叩き込まれるという絵に描いたようなトドメの一撃。これで0-3、ベラジョンがハットトリック達成です!
↓???:「あの距離からのシュート、ベルギーのクルトワなら止めてる」
???:「チャンスで決めきれず」
???:「自分たちのミスから崩れてしまった」
???:「悔しいです」
まぁ、サッカーは得てしてこんなものでしょう。1点が重くのしかかる競技だけに、先に1点取るか取らないかで結果はガラッと変わります。日本代表の伝統である「大チャンスを外し」「PKを献上する」という悪癖が出てしまいましたが、前半のチャンスを決めてさえいれば逆のスコアで勝利している展開もあったはず。決めてさえ、いれば。
ワールドカップの1本、ワールドカップの1点は一生ものです。どんなに簡単なことでも、一生に1回、この日・この時・この1回で決めなければならないとなれば難しいのです。それができるようになるには、その日を想って、その1回のために千回・万回を決めつづけるしかありません。千回・万回を守りつづけるしかありません。
この1点が一生ものと思えば、簡単にボールを奪われたり、行くべきときに行かなかったり、いらんときに飛び込んだり、他人任せにしたりするはずがないのです。他人に託すにしても「お前だぞ!」「お前だぞ!」「お前だぞ!」とすべてが終わるまで確認するものでしょう。絶対に間違いがあってはならないと思えば。
指の先まで集中して臨むこと、それが永遠の課題であり、唯一の目標かなと思います。「やらない」をすべて排除して、「できない」で負けるならば、それはそれで清々しいというもの。優勝チュニジア、2位ブラジル、3位日本という最終結果をイメージしながら、ワールドカップ本番に向けて頑張ってもらいたいものです!
↓???:「日本の弱点、ではない。俺の、だ!」
???:「こんなことで御自慢とは」
???:「素人でも見ればわかること」
???:「この程度で分析とは言わない!」
???も「本番はウチの冨安が出る、俺じゃない」と申しております!