カブス戦に先発したパドレス・ダルビッシュ有【写真:Getty Images】

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「あんまり調子は良くなかった」多彩な球種と配球で8回1失点6勝目

■パドレス 4ー1 カブス(日本時間14日・シカゴ)

 パドレスのダルビッシュ有投手が13日(日本時間14日)、古巣のカブス戦で今季最長の8回を5安打1失点7奪三振の内容で今季6勝目(3敗)を挙げた。2018年から2020年まで在籍したかつての本拠地リグレー・フィールドで果たした初凱旋登板で107球を投げ、カブスを7連敗の泥沼へと引きずりこむ力投を見せた。

 2019年9月22日(同23日)のカージナルス戦以来となる8回を投げ切った登板は、ゲームプランで描いた投球から修正を余儀なくされた。試合後の会見でダルビッシュは開口一番、言った。

「あんまり調子は良くなかったですね、正直。ツーシームも今日は全然ダメでした。ほとんどカッターとフォーシーム、スローカーブ。あとチェンジアップで押し切った感じでした。(複数の球種を)うまいことミックスして配球で8回を投げたかなっていう感じですね」

 試合前の会見で、カブスのデビッド・ロス監督は横と縦に変化させるダルビッシュのカットボールを「違う軌道のスライダー」と定義し「鍵はストライクゾーンに来るのを捉えること」と攻略法に言及した。2回には、先頭6番・ゴームズに甘いスライダーを左翼スタンドに運ばれ先制点を許したが、ここから組み立てを変えた。今季全登板でバッテリーを組むオースティン・ノラ捕手の「途中から真っすぐでバンバンいこう!」の言葉で切り替えた。先制被弾後は、11打者連続でアウトを取る。スライダーを見せ球にし、カットには斜めの変化もつけ、ツーシームは完全に封印した。

 試合前、ノラが挙げた重要ポイントは「真っ直ぐの回転と変化球の動き」とし、「常に気にしているのがそこ。コースと高低にどの球を配していくかは、イニング間のベンチでも意見交換するんだ」。キレのない球をあえて口にせず、投手に不安を抱かせることを嫌い要求の頻度を減らしながら配球を変えるタイプの捕手もいるが、ノラの考えは違うという。この日はブルペンでキレていたチェンジアップも効果的に配し、今季初の2登板連続無四球をも導いた。

安定感の理由は「精神的に落ち着いたんですかね」

 昨季まで専属捕手を務めたカラティニが開幕直前でブルワーズにトレードされ、ダルビッシュは今季の全12登板をノラとバッテリーを組む。前回7日(同8日)のメッツ戦ではキレ味抜群のツーシームを軸に7回2安打無失点の好投で5勝目を挙げ「配球では(今季)いちばん良かった」と振り返っている。新たな相棒との信頼は投球の度に深まっている。

 2か月後に36歳になるダルビッシュは安定感のある投球を重ねる要因を問われ、内省的にも響く言葉をつないだ。

「精神的に落ち着いたんですかね、多分。試合の日もそうですし、試合に向ける準備もそうですし。いろんなところが、この歳になって良くなってきたという感じで。やっと大人になってきているという感じはしますね」

 試合前から「野球を俯瞰することができている」と言うダルビッシュ有。豊富な球種で「稼ぐ」「追い込む」「誘う」「崩す」の投球を展開しアウトを重ねる。その構想と創造を生む“視界”の陰には捕手オースティン・ノラがいる。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)