クワクボリョウタ「LOST #6」photo by Nakamura Osamu

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新潟県十日町市で開催されている『大地の芸術祭』。その展示作品2つが、修学旅行で訪れていた新潟市の中学生に壊されていたと6月6日に明らかとなった。

『BSN新潟放送』によると、壊された作品は越後妻有里山現代美術館『MonET』で展示されていたクワクボリョウタ氏の『LOST #6』。4月に修学旅行で訪れた生徒が、鑑賞中に作品を踏んだという。

『LOST #6』は修復が不可能で、公開できない状態となっている。作者のクワクボ氏は9日、Twitterで声明を発表。素材は修理や再生が可能であるといい、《作者はまだ生きていて作品を修復する気力も体力もあります》とコメント。

そのいっぽうで《それよりも重要なのは、生徒たちが内なる不満や怒りや欲望をさまざまな違った形で表現できるように支えることです。これはアーティストの力ではどうにもならない。大人や学校、友だちや地域の人たちの協力が必要です》ともつづっている。

さらにこのニュースが波紋を呼んだのは、警察に被害届を出した十日町市が、“新潟市に損害賠償請求をする”という点だ。ネットでは、「保護者が請求されるべきでは?」「税金を使うのか?」といった声が上がっている。

《新潟市に損害賠償請求?壊した中学生の保護者の間違いだろ?》
《新潟市は別に悪くないから賠償請求するなら壊した生徒達に請求するべき それか保護者に請求しないとダメだろ》
《新潟市に損害賠償を求めるって、この後に市から保護者に請求するのかなあ。新潟市民の税金・・》

そこで、本誌は十日町市に「なぜ新潟市に請求するのでしょうか」と問い合わせると、文化観光課の担当者はこう答えた。

「今回は、修学旅行という学校行事のなかで起こった出来事です。我々が請求先を指定したのではなく、窓口が新潟市なので、そういうことになっているのだと思います」

そして「今後、保護者が請求される可能性もあるのでしょうか」と尋ねると「それは新潟市に聞いていただければ。我々が触れられることではないので……」という返答だった。

■教育委員会は「美術館を訪問している最中に作品が破損した」と説明

では、新潟市の考えはどうだろうか。同市の教育委員会・学校支援課の担当者は「賠償の責任の有無についても、十日町と新潟市は協議を進めているところです」といい、こう続けた。

「ですので、“実際に誰が支払うのか”をお答えすることができません。また捜査の段階にありますから、保護者の方に支払う可能性があるのかどうかについても言及できません」

本誌は、展示作品が壊された経緯について改めて話を聞いた。すると担当者は、こう明かした。

「先ほども申し上げたように、この件は警察が捜査中なんですね。ですので、私たちのほうからコメントできる状況にはありません。“中学生が美術館を訪問している最中に作品が破損した”ということです。それが故意であったのか、そうでなかったのかも捜査しています」

故意であってもそうでなくても、生徒からの謝罪はあったのだろうか?しかし、担当者は「捜査中ですので……。あくまで、新潟市の中学校が訪問した際に壊れたということです。当市の教育委員会の代表や、当該校の校長が謝罪に伺いました」と言い留めた。“失われた作品”の今後は、どうなるのだろうか――。