メッツ戦で今季5勝目を挙げたパドレス・ダルビッシュ有【写真:Getty Images】

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ツーシームを軸にした配球で「やりたいことをやらせなかった」

■パドレス 7ー0 メッツ(日本時間8日・サンディエゴ)

 パドレスのダルビッシュ有投手が7日(日本時間8日)、本拠地サンディエゴでのメッツ戦に登板し、7回を投げて2安打6奪三振無失点で今季5勝目(3敗)を挙げた。6回2死まで無安打無失点でナ・リーグ勝率1位の相手を圧倒。同地区首位のドジャースに1.5ゲーム差に詰め寄る100球の力投で存在感を放った。

 相手に流れを渡さない快投を支えたのが、ツーシームを軸にした配球だった。

 相手はナ・リーグ1位の勝率.667を誇るニューヨーク・メッツ。パドレスは前日の初戦を落とし、同一カード勝ち越しのためには負けられない試合だった。「ここ負けたらすごく嫌なこと。なんとか勝ちたい気持ちはすごくありました」。気力の充実は、左打者に多投したツーシームに映っていた。スイッチヒッター2人を含め7人の左打者がラインナップに並ぶ打線に対し、ダルビッシュは臆することなくその球で内角を突いた。

「右に対しては最近ずっとインコースにコントロールがよくて。(今日も)もちろんよかったですけど、左に対して(ボールの)動きはそこまでよくはなかったと思うけど、いっぱい使えた。相手に対してやりたいことをやらせなかったなという感じだと思います」

 2回の先頭から2者連続で死球を与えた後、2番マルテに左前打を許す6回2死まで14打者連続で抑え込んだ。

 ツーシームの威力とプレートの踏み位置は呼応している。2019年からはほぼ中央に右足を据えてきたダルビッシュは、6月1日(同2日)の前回登板から足場を三塁側へと移した。

 昨季は一人限定で試みた。

昨季終盤の“テスト”経て、投手板踏む位置を三塁側へ変更

 股関節を痛めた昨季は、対左打者に苦しむシーンが中盤以降に増えた。左打者に3本塁打を浴びた9月13日(同9月14日)のジャイアンツ戦では、プレートの真ん中に置いていた軸足を中盤でそっと三塁側へと移した。しかし、活路は見いだせなかった。「左には内角のツーシームが投げづらく感じるし、スライダーのバックドアは引っかけた感じで。そこでやめました」。今季、体はほぼ万全だ。「去年とは状態がまた違うので、今は三塁側で投げていってもツーシームを内から曲げることができる」と自信を深める。

 足場の移行は右打者にも有効になった。

 4番に座る右の大砲アロンソには2回の打席で死球を与えたが、右手に当たった95マイル(約153キロ)は「普通に避ければデットボールの球じゃないしスイングしていた。状態はいいって思いました」と切れ具合を確認できる1球となり、「自信を持っていきました」と振り返っている。

 まとまりを見せる速球にスライダー、ナックルカーブとスローカーブ、スプリット、そして7球連続で投じ凡打に仕留めたカッターを織り交ぜた100球で6月初勝利につなげた。導いたのは、今季から正捕手を務めるノラだった。攻撃中のダグアウトでも意見交換を重ねダルビッシュは捕手目線からのアドバイスを噛み砕いて新たな回のマウンドに向かった。

「配球に関してはいちばんよかった。スローカーブがいっぱい使えましたし、スプリットともいいところでいい落ち方をしたのが結構あったので。体の状態としてはいちばんではなかったけど、ゲームプランではいちばんだと思います」

 今季11試合目の登板で対峙した強力メッツ打線を封じ、8度目のクオリティ・スタート(6回以上を投げ自責点3以下)を決めたダルビッシュは、プレーオフで激突する可能性もある相手に、はばかることなく言った。

「なめられては困る」

 ダルビッシュ有の凛とした表情が変ることはなかった。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)