ちょっとした用事のために、LDKから玄関までの長い廊下を行ったり来たり。そして買い物帰りは、重い荷物を持って、キッチンまで…。人通りを気にして窓を高い位置につけたことで、疲れがたまる生活になってしまった。そんな建主の失敗談を紹介します。あわせて、一級建築士からのアドバイスも。

夢に描いていたとおりの家が完成!当初は快適で大満足

「子どもが小学校に上がる前に家を建てよう」と、Kさん夫妻は土地を買い、間取りやデザインが気に入った会社に設計を依頼しました。

完成した間取りはL字型。道路から見て北側の角に玄関があり、北から南に向かって並ぶように、手洗いコーナー、トイレ、LDKを配置。さらに、キッチンは道路側に大きく張り出させ、玄関前に設けた駐車場と隣り合う位置関係に。

「キッチンの駐車場側は、壁の高い位置に横滑り出し窓をつけたので、玄関前の人通りも気にならずに快適です。玄関やトイレ、手洗いコーナーは間口が広く、友人が来てもゆったり使えます」と、喜んだ妻。しかし、それがあだになるとは!

 

暮らしの変化で、ささいなことが「ちりも積もれば」状態に

住み始めは快適でしたが、子どもが学校に上がり、通学と通勤の時間帯が重なってくると状況は一変。

「わが家は手洗いやトイレの間口が広く、LDKから玄関までの廊下がちょっと長いんです。普段は気にならないけれど、夫が忘れていった携帯電話を渡しに玄関まで走ったかと思えば、今度は子どもが忘れた体操着を持って玄関へ走る。私へのこんな負担が続くと、さすがに疲れが」(妻)

しかも、自分が重い食材を買って戻ったときは、思わず駐車場で、キッチンの壁を見ながら悔やむそう。

「当初設計士さんに、腰高窓や勝手口なら使いやすいと言われたんです。そのとおりにしておけば、窓越しに手渡せ、重い食材もキッチンに最短距離で運べたのに」と残念がります。

アドバイス:それぞれの窓の意味と機能を把握することが重要

このような失敗を避けるには、どうすればよかったのでしょうか。一級建築士・大島健二さんが解説します。

 

●大島さんのアドバイス

窓には、「採光」「通風」「眺望」「視認」「出入り」といった5つの機能があるので、なんとなく窓を設けるのでなく、しっかりとした意思を持ってその形状や開き方、透け方、位置、配置を計画する必要があります。

今回の「東南側に開けたL字型の間取り」は、午前中の気持ちのいい光を家の中に取り込むことのできる、本来はとてもよいプランのはずです。しかし、南に面した部分に「トイレ・手洗いコーナー」を配置してしまっているため、気持ちのよい光が玄関横の廊下に届かず「狭く・長く」感じる結果になってしまっています。

「トイレ・手洗いコーナー」をリビングの北側に配置していたなら、廊下は単なる廊下ではなく、南に面し掃き出しの大きな窓のある快適な空間となります。キッチンの駐車場側の高窓も同様で、気持ちのよい外部空間とつながりを感じられるアメニティ性と、クルマからの荷物の積み降ろしがラクになるような機能性を兼ね備えた窓にすべきでしたね。