UNIVERSITY of CREATIVITY(UoC)の近藤ヒデノリ(Hide)と平井美紗(Misa)がお届けするinterfmの番組「UoC Mandala Radio」。クリエイターに“ワクワクする社会創造の「種」を聞く”というテーマで、毎回さまざまな領域で社会創造をおこなっているゲストを招き、未来に向けた創造やアクションについて語らいます。6月1日(水)の放送では、近藤ナオさんがゲストに登場。これまでのキャリアを振り返り、「拡張家族プロジェクト」について語ってくれました。

(左から)Hide、近藤ナオさん、Misa


肩書を持たず、世界の複数の拠点で活動。手掛けている事業は10を超え、コーリビング運営、NFT、アーティストマネージメント、酪農、飲食など幅広く展開しています。特にアフリカの投資に特化したファンドでファンドマネージャーとしても活動しており、ケニア、ガーナ、ナイジェリアなどのアフリカの地を転々としながら、「釈然とする」暮らしの実現を目指しています。

◆「六本木ヒルズ万歳!」から「建物を作るのを一旦やめよう」に至るまで

Hide:ナオさんとはこれまで何回か会っているんですよね。面白いものを作ったり、いろんな場所に拠点を作ったりしているなと思っていたら、(気づけば)海外の何ヵ所にも会社を作ってタンザニアを拠点にしている、みたいな方です。このあいだ日本に帰ってきたときにたまたまお会いして、ちょっとお話を聞いたんですけど、なかなか周りにいないタイプというか、まさに僕らUoCがテーマにしている「社会を創造している人だな」と思いました。まず、海外に渡る前の活動について教えていただけますか?

近藤:大学で建築を学んでいて、大学3年生の頃に設計事務所を作ったんですけど、それが24年前の話です。その頃は起業することはまだ一般的ではなかったですね。

Hide:起業されたのが大学3年生ということは?

近藤:20歳です。そのちょっとあとぐらいにホリエモン(堀江貴文)さんとかが出てきて、若い人が起業していく流れが生まれてきました。最初のうちは設計と住宅やお店のデザインをやって、その後、都市計画といった規模の大きいものにだんだんと興味を持つようになったんですね。25、26歳の頃は「六本木ヒルズ万歳!」みたいな時代でした(笑)。

ああいう超商業的ものにも関わって仕事をしていたんですけども、急に「六本木ヒルズに住んでいる人とかって、最低限の食料と最低限のエネルギーがどこからどうやって作られているか、どうやって送られているかを知らないんじゃないか」と思ったんですね。僕自身も知らなかったわけなんですが、そういうことも知らずに街づくりをやってもいいのかなって、ふと思っちゃったんですよ。

Hide:なるほど。

近藤:そして25歳のときに「建物を作るのを一旦やめよう」と思いました。それで、山梨の山奥で、50人ぐらいしか住んでいない集落に移動して、農業や自然エネルギーを中心にしたNPOを立ち上げました。週の半分は山梨、残り半分は渋谷で、建物を“作らない”街づくり活動をしていました。

Hide:NPO法人「シブヤ大学」ですね。僕はちょうどその頃にナオさんのことを知りました。

近藤:「シブヤ大学」の「誰でも無料で学べる、まちの学び場」「シブヤの街がまるごとキャンパス」といった概念的なコンセプトは、現・渋谷区長の長谷部健さんの発想なんですよね。そのとき僕は長谷部さんに偶然、取材か何かで知り合って意気投合したんですよ。「『シブヤ大学』が面白そうだから一緒にやりたいです」と伝えました。

クリエイティブディレクターという肩書で仕事はしていたんですけども、もうちょっとプロジェクトデザイナー寄りといいますか。仕組みを作ったり、それに合わせて必要な人を連れてきて組織を作ったり、マネタイズの仕組みを考えたり、といった活動をしていました。

アートディレクターの方に入ってもらって、ロゴとかツールを作ってもらう感じだったので、俗に言うクリエイティブディレクターというよりかは、もうちょっと広い範囲で仕事をしていましたね。

Hide:仕組みとか全体のプロデュースに近い形のお仕事だったんですね。

近藤:そうですね。25、6歳ぐらいからはそういうような仕事をしていました。

◆赤の他人と“家族”のように暮らすプロジェクト

近藤:2017年に手掛けた「Cift(シフト)」プロジェクトは、今の僕の人生にかなり繋がっていると思います。東急電鉄さんが持っている渋谷キャストという建物の13階がレジデンスになっていて、「クリエイティブな人たちに暮らしてほしい。どうしたらいいですか?」という、ざっくりとしたオーダーが来たんですね(笑)。

考えてたどり着いたのは、「世界中の人たちが全員“家族”になれば、世の中は平和になるんじゃないか」という答えでした。“拡張家族”というコンセプトです。ワンフロア19部屋を全部借り切って、最初は39世帯ぐらいで暮らしをスタートさせました。

Misa:おお〜!

近藤:赤の他人を家族のように扱えるのかどうか。僕にとっての“いい家族”っていうのは、楽しく過ごすってことじゃなくて、相手がピンチだったときに時間やお金を使って救えるかどうかだと思っているんですね。契約書上、赤の他人と言われる人たちと家族のようにやっていけるのか、という社会実験を始めたっていうのが、僕のなかではすごく大きな出来事でした。

今まで資本主義の世界のなかでやってきた仕事って“力”を使っていたんですよ。僕はその力を“父性”と言っているんですけども。なんとか自分でいろんな力を手に入れて、クライアントもなんとか納得させて、世の中に必要なものを作ってきたんですね。

一方で、家族として暮らしていると“母性”がないといけないんですよね。いろんな価値観の人たちと家族になるには母性がいる。ここで言う母性とは、忍耐とか包容力ってことですかね。

Hide:忍耐とか包容力。なるほどねえ。

近藤:そこで起こったことをすべて受け容れるっていうのは、それまでの僕の人生でやったことがなかったので、本当に修行って感じでした。「Cift」での生活が、愛とか母性を知るための“道場”でしたね(笑)。楽しいっていうよりは、毎日ざわざわしながら家族たちと対話を重ねて、お互いを理解し合っていくことに時間を割きました。

Hide:僕の友達の何人かが「Cift」に入居していたので、遊びに行ったことがあるんですけど、面白い実験だなと感じましたね。子どもたちを皆で世話をしたりとか。

近藤:そうやって暮らしていくなかで、世界中の人たちと家族になれれば平和になるのかなって思い始めちゃったんですね。そのあたりから、僕のなかで地球全体の方に意識が向くようになったんです。

Hide:意識が拡張していったんですね。

近藤:ところが、英語が全然できなかったんですよ(笑)。

Misa:意外です。

近藤:3年前、とあるきっかけでオランダにも拠点を増やすことになったんですね。「Cift」とは別なんですけども、そちらでも拡張家族というコンセプトで新たな拠点を持ったんです。現地の人たちを含めて一緒に暮らしていたんですけども、隣に通訳がいる状態ってちょっと違和感があるじゃないですか(笑)。

Hide:たしかにねえ。

近藤:それはありえないと思ったから、自分で英語を勉強するようになりました。いまだに英語は全然できないですけど、気がついたら世界中に12個も会社を作っていたんですよね。

Hide & Misa:(笑)。

*   *   *

次回6月8日(水)は、引き続き近藤ナオさんがゲストに登場します。お楽しみに!

番組でお届けしたトークは音声サービス「AuDee」 https://audee.jp/voice/show/45097と「Spotify」 https://open.spotify.com/show/6biaO40gUuf4gbI2QhdTsL?si=C2-xOifkQz230V6X514UlAでも配信中。ぜひチェックしてみてください!

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聴取期限 2022年6月9日(木)AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:UoC Mandala Radio
放送日時:毎週水曜23:00-23:30
パーソナリティ:近藤ヒデノリ(Hide)、平井美紗(Misa)
番組Webサイト:hhttps://www.interfm.co.jp/mandala