※この記事は2021年12月29日にBLOGOSで公開されたものです

文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等性と指導上の諸課題に関する調査」によると、2020年度の児童生徒の自殺者数は415人となり、過去最多となった(13年度からは通信制を含む)。自殺死亡率も上昇傾向だ。全人口の自殺者数・自殺死亡率と比べると、逆の傾向を示している。自殺者が増えるということは、その自殺者の周辺にいる家族や友人・知人も増えることを意味する。

小学校から中学まで、九州地方に住むカスミ(仮名、20代)は、小規模の学校に通っていた。地域人口が減少し、子どもたちの人数は少なくなっていたが、それでもいじめは発生しており、カスミが被害者になることもあった。そんな小規模校で、いじめを原因として中学生が自ら命を絶つが起きた。

その生徒とカスミは同級生で、後追いを考えたこともあった。当時の心境を聞いた。

小規模校だからこそ、起きるいじめ

「小学3年生のときのいじめがありました。靴や鍵盤ハーモニカのホースがなかったりしたんです」

カスミが通った小学校は規模が小さく、クラスの人数は10人もいなかった。全校でも生徒は50人いなかっため、複式学級での授業が行われていた。小規模校ではコミュニケーションが密になり、顔が見える関係になる。反面、人間関係が固定化して、役割や序列化をうみ、いじめの要因になることもある。

靴がなくなった時に先生に相談しに、職員室へ行った。

「相談をしに行ったら、その後、先生が『あったけん』と言って、靴を持ってきてくれました。隠したのは、多分、1学年上の先輩でした」

「困っている」子を選んで、いじめの対象に

休み時間は全校児童で遊ぶような学校だった。にもかかわらず、なぜ、カスミはいじめのターゲットになったのか。

「あるとき、転校生の女子が来たんです。とてもいい性格で人当たりはよかったんです。しかし、授業中にお漏らしをしたんです。私は気にしないよう、困っていたその子をフォローしたんです。なぜなら、私は、新しく出会った人が好きなんです。いじめはその頃からですね。私は、何かあったらすぐに親に言う子だったので、母親はすごく怒っていました。連絡帳にも、靴を隠された話などを書きました。しかし、それに対する反応は、先生からありませんでした」

小学4年や5年のときも、学校内でいじめがあった。しかし、このときは、カスミはいじめのターゲットにならなかった。

「正直、いじめられるのが自分じゃなくてよかったというのはありました。でも私は、いじめる側にはなりませんでした。それだけは嫌だったんです。1対1の喧嘩はありましたが、いじめの加害者側にならなかったのは、正義感が強いからかな。でも、それはどこからくるんだろう。わからないですね」

いじめの理由は、「先生に期待された」から?

小学校6年生になると、再び、いじめを受けることになる。周囲から無視された。

「口を利いてくれないんです。『おはよう』と言っても、誰も返事をしてくれないし。だから、精神的にきつくなってしまった。なぜそうなったのかはわかりませんでした。このときのいじめについて、中学生のときに聞いた話では、〝カスミばかりが先生に期待されている〟と思った女の子がいたようです」

このときのいじめの理由については、思い当たることがあった。

「先生に期待されていたとは思います。児童会でも企画していましたし、文化祭でも、司会進行の原稿を考えていましたし。いじめ加害者の子はよく、〝□□先生がいるから、きょうは、カスミに優しくしよう〟と言っていました。味方はいませんでした。下の学年の子と遊びたくても、遊べないんです。このころから、親に申し訳ないなと思っていたんです。近所は幼馴染ばかりで、親同士も仲が良いんです。親に言っても、〝お前が、ちゃんと『おはよう』と言わないからじゃない?〟と言われただけでした。でも、毎回無視されると、言うのが辛くなるんですよね」

小学校の保護者たちは仲が良い。そのため、カスミが小学校でいじめられているという話をすると、保護者たちの関係も悪くなりかねない。教師も、カスミの訴えに対しては動いてくれなかったという。しばらくすると、徐々にいじめの加害行為は減っていったが、ゼロにはならなかった。

中学でもおきたローテーションいじめ

こうしたなかで中学に進学する。中学でもいじめがあった。ターゲットが変わっていく、ローテーションいじめだった。中学2年の春頃、聞こえるように「うざい」や「きもい」という言葉を投げられた。こうしたいじめを主導した生徒は、小学校からいじめをしている首謀者だった。

「先生もわかっていたはずです。相談もして、逐一、先生に状況を言ったんです。〝気をつけてみていくから〟とは言うんですが、何もしてもらえなかったんです。ただ、半年後、年が明けると、いじめのターゲットが変わっていきました。中3になったら、いじめがなくなったんです」

小規模校の学校がある地域は、地域の人間関係も密になる。学校と地域、学校と親との距離が近い。カスミへのいじめ加害の生徒の親は、地域の中でみんなが気を遣っている人だった。

いじめ放置の中で同級生が自死

いじめが放置されていた小中学校。中学3年の1月、とうとう、その歪みが表にでてしまう。同級生の男子生徒が命を絶ってしまったのだ。のちの行政との和解では、男子生徒への悪口や無視、嫌がらせ行為が存在したこと、そのいじめによって男子生徒が自死を選んだこと、そのいじめを教職員はいじめの存在に気付いたこと、その対策を怠ったことを認めた内容になった。

事件に関する調査の結果、「目立ったことをすればそれでやられる」「表面上の付き合いしかできない」という証言が生徒からあった。一方で、教師からは「静か」「礼儀が良い」:「手がかからない」との評価もあった。教師からの見立てと生徒の実感はズレていた。カスミもそんな雰囲気の中で、いじめを受けていたことになる。

「(亡くなった男子生徒とは)仲が良かった。私がいじめを受けていたときにもメールをしていたことがありました。当時、携帯電話を持っていなかったので、親のガラケーを借りて、やりとりしていました。彼のいじめは知っていましたが、普通に接していました。先生にも言ったんですが、何もしませんでした」

始業式の日に起きた事件

男子生徒が自死したのは始業式の日だった。担任は、男子生徒が通学のバスに乗っていなかったことを教頭に伝えたが、何の対応もしていない。その後、連絡したところ、父親から返事があった。

2日前にも彼とメールしたんです。《明後日、学校だね》って送ったのを覚えています。始業式が終わって、教室に戻っても、先生が来ないんです。救急車の音がしていたこともあり、クラスの中で、〝本当に死んだ?〟という会話をしているのが聞こえました。そうしていると、再度、全校生徒が集められました」

全校集会で男子生徒が亡くなったことが知らされた。校長が、「○○君が、亡くなりました」と報告した。その後、3年生だけが残され、校長が「○○君のことを忘れないで、前向きに生きていきましょう」と話をしていた。

「聞いたときは衝撃で、泣きました。信じられないけど、死んだんだ。でも、死ぬわけがないと思ったりました。不思議な感じでした。その日は、ずっと、ぼーっとしていました。布団にくるまって寝ようとしたんですが、眠れませんでした。受験前だったこともあってか、家族とは何も話さず、普段通りにしようとしていました」

翌日、彼の家に行き、遺体と対面した。

「ご遺族は、当時、彼に対するいじめを知らなかったこともあり、ご〝同級生が亡くなったのに、こんなに会いにこないものなのかな?〟と言っていました。みんな、やましいことがあったからなのかな」

お互い、いじめを受けていたものの、彼はカスミに「死にたい」などとは発言したり、メールでは言ってきていない。しかし、別の友人にはLINEで、自死をほのめかすやり取りをしていた。

「仲が良かったはずだし、メールもよくしていました。彼との距離は一番近いと思っていました。それなのに、私には(自死をほのめかすような話など)一切、ありませんでした。何も相談を受けていません。なんで私に言ってくれなかったんでしょうか。私も死んで、彼に会いに行きたいと思っていた時期もあります」

カウンセリングや取材が〝治療〟になった

亡くなった理由について、地域の中では、いじめという話が出てきていなかった。そのため、遺族が事実を知りたいとの思いがあり、調査委員会が設置された。カスミも調査委員会に協力したり、メディアの取材に協力した。

「高校のときは、彼のことを考えたり、病んでいるのが普通だった。ただ、副担任は私の話を聞いてくれました。月一回、カウンセリングを受けました。それに、メディアの取材を受けたことが、私にとっては治療になりました。自傷をしようとしたこともありました。ハサミを手首に当てたことがあったんですが、切れませんでした。切ったら血が出るし、そうすれば、私が病んでいることをみんなに知られてしまうと思ったんです。次第に、『死にたい』と思わなくなっていきました」

こうした経験から、カスミは援助職を目指している。

「私ができることは最大限にやっていきたい」