※この記事は2013年10月01日にBLOGOSで公開されたものです

(niconico)
1日夕方、安倍総理が記者会見を行い、来年4月に予定されている消費税増税に向けて決意を述べた。安倍首相の冒頭の発言要旨は以下のとおり。

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半世紀ほどまえの本日、10月1日、東海道新幹線が開業しました。その10日後、東京オリンピックが開会しました。頑張る人は報われる、そう信じていた時代です。その少し前、国民皆保険・皆年金が実現をしました。今に続く、世界に冠たる社会保障制度の礎が築かれた時代です。

それから半世紀、日本経済はオイルショック、バブル、バブル崩壊を経て、15年以上を経て、長い長いデフレを経験しました。この間、国民所得は大きく減ってしまいました。こうした中、毎年増えゆく社会保障費をどう賄うか、それが大きな課題となっています。同時に、デフレから脱却し再び成長軌道を取り戻すことなしに、将来に向けて真に安定した社会保障制度はつくれません。

我が国の経済が希望と活力、成長への自信を取り戻す、そして国の信認を維持し、社会保障制度を次世代に引き渡す、これらを同時にすすめていくこと、これが私の内閣に与えられた責任であります。

本日、私は消費税率を法律で定められた通り、現行の5%から8%に、3%引き上げる決断をいたしました。社会保障を安定させ、厳しい財政を再建するために、財源の確保は待ったなしです。だからこそ、昨年、消費税率を引き上げる法律に、私たち自民党・公明党は賛成をいたしました。

調査によれば、民間給与はわずかに上昇傾向に転じましたが、景気回復の実感は全国津々浦々には波及していません。この中で増税を行えば、消費は落ち込み、日本経済はデフレに逆戻りしてしまう恐れもあります。財政規律も、社会保障の安定も、悪い方向へと行きはしまいか、最後の最後まで考え抜きました。

足元の日本の経済はどうか。三本の矢で回復の兆しをみせています。有効求人倍率も0.95まで回復しました。生産も消費も、そしてようやく設備投資も持ち直してきています。15年間にわたるデフレマインドによる"縮みマインド"は変化しつつあります。であれば、大胆な経済対策を果断に実行し、この景気回復のチャンスを確実なものにすること。経済成長と財政健全化は両立しうる。これが熟慮した上の私の結論です。

250年ほど前、私の故郷・長州藩は、巨額の財政赤字に苦しんでいました。財政再建のために検地を行い、その結果、収入は4万石あまり増えました。当主の毛利重就は、これを未来への投資に充てることを決断します。新田を開拓し、塩・紙・蝋といった新たな産業を育成しました。4万石の未来への投資が長州の人たちの生活を押上げ、明治維新の原動力となったのです。増えた4万石で一時しのぎをするのではなく、未来を描こうとしたのです。

今般まとめた経済政策のパッケージは、目先のための、一過性の対策ではありません。社会保障の充実や安定のために、お願いする内容は、将来に向かって投資を促進し、賃金を上昇させ、雇用を拡大させる、未来への投資です。賃金上昇が雇用拡大につながり、消費を押し上げることにより、さらなる企業収益、経済の好循環につながります。研究開発を促し、設備投資を後押しして、未来への成長につなげます。事業再編を促して企業体質を変え、新たなベンチャーを応援することで持続的な活力を生み出します。

実効税率が国際的にみて高い水準にある我が国の法人税。国際競争に打ち勝ち、投資を呼び込むためには、法人税について真剣に検討を進めなければなりません。収益を賃金として従業員に還元する企業を支援します。政労使の会合を通じて、成長の成果を雇用拡大、そして賃金上昇につなげていきます。加えて、足元の経済成長を賃金上昇につなげるため、復興特別税の一年前倒しの廃止について検討いたします。もちろん、25兆円の復興財源を確保することは大前提です。所得の低い方への給付、住宅ローンの大幅減税を行い、消費税引き上げによる負担を軽減することを決定しました。消費税引き上げにより、東日本大震災の復旧・復興に支障を生じることがあってはなりません。新たな経済対策の中で取り組むともに、被災者の住宅再建にかかる給付措置を創設します。これらを含む経済対策は12月上旬に策定します。その規模は5兆円規模とします。政府一体となって強力な価格転嫁対策を実行していきます。

世界に冠たる、我が国の皆年金・皆保険制度。これを次世代にしっかりと引き渡してまいります。少子化対策、女性が輝くための対策。我が国の喫緊の課題です。待機児童の対策をしっかり実行してまいります。そのための一体改革です。消費税で安定を維持し、社会保障を強化してまいります。消費税は、社会保障にしか使いません。当然、歳出の無駄は不断に削減いたします。

加えて、国の信認を維持してまいります。これが損なわれれば、日本経済と国民生活に深刻な影響が生まれます。そのような事態を招くわけには行きません。 財政収支の赤字を2015年度に半減し、2020年度に黒字化するという目標に向けて、大きな一歩を踏み出します。

増税をしながら他方で経済対策を実施することには批判があるかもしれません。しかし、増税をせずに経済再生だけを優先すれば、将来の安定と財政再建に疑問符が付くことになります。持続的ではありません。他方で、経済対策をせずに増税だけを優先すれば、景気が腰折れしてしまうリスクが極めて高い。これも持続的ではないのです。経済の再生と財政健全化、この二つを同時達成するほかに私たちに道はありません。

本日決定した政策パッケージは、そのためのベストシナリオである、私はそう確信しています。

4万石の投資は長州藩を豊かにし、吉田松陰先生をはじめとして、明治維新の原動力となった、若者たちの基盤となりました。

「志定まれば、気盛んなり。」

消費税の3%引き上げと、そのもとでの経済成長を持続する景気対策を、果断に実行してまいります。我が国が置かれている今回の私の結論に対して、国民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。私からは以上であります。

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