【MLB】大谷翔平との対決に注目も…進化の87球 菊池雄星を支える“2つの変化”とは?
大谷翔平との今季初対戦で3打数無安打、5回9安打2失点で勝敗付かず
ブルージェイズの菊池雄星投手が28日(日本時間29日)、敵地でのエンゼルス戦に先発。5回を投げ9安打1四球4奪三振の内容で勝敗は付かなかった。岩手・花巻東高の後輩・大谷翔平投手との今季初対戦では、遊ゴロ、空振り三振、中飛と3打数無安打に抑えた一方、毎回安打を許し今季最多の9被安打。1点をリードした5回に2失点で逆転され、6回から救援にバトンを渡した。
今季初の同郷対決が注目された試合。菊池は球速140キロ台前半のスライダーを中心に組み立てるプランで臨んだ。
「スライダーを中心にカウントを整えて最後は真っすぐというプランでした。いい感じでいいカウントも作れたなと思います」
決めにいったストレートがファール、ボールとなりその際の大谷の反応を見て配し方を変えた打席もあったが、意図を明確にした12球で大谷封じに道筋をつけた。ボールが先行した打席はなく、第3打席は思い描いたとおりにスライダー2球で追い込み最後は96マイル(約155キロ)のストレートで中飛に仕留めた。
昨季に軸球としたカットボールを持ち球から外したのは4週間ほど前のこと。アドバイスをしたのは2004年に横浜(現DeNA)に在籍したピート・ウォーカー投手コーチだった。
同コーチはその意図を明確にした。
「正直に言うと、マリナーズ時代に多投していたカッターって実はあまり効果的じゃなかった。僕が集めたデータに現れている。その球をストレートのカウントでも投げていることが多く、さらにゾーンに甘く入る割合が高かった。だから再考しようという話になった。キャンプからもっと変化量を出すように取り組んでいたけど時間がかかった。そして“ハードスライダー”として使えるようになった。つまり、昔のスライダーが消えて昔のカッターが新しいスライダーになったということだよ」
プレートを踏む位置を三塁側へ「横振りになりにくくなります」
今季の軸球は順回転のストレート。マリナーズでの3年間で球速と球威は増した。しかし、制球力には課題が残った。その元凶は体が横振りになりなること。メジャー4年目を安定させるために菊池が決断したのが、プレートの踏み位置の変更だった。
今季は三塁側へ足場を移している。
「スリークウォーター気味の僕が一塁側を踏んで投げれば、腕はボールゾーンにはみ出てからストライクゾーンへと投げることになります。この腕の角度になるから体の横降りを助長させるんですね。でも、こっち(三塁側)からだと、ホームベースの中で腕が振れるので、ストライクを取りやすいというか、横振りになりにくくなります」
菊池は理にかなった踏み位置を選択した――。横幅約61センチのプレート板。その左側(三塁寄り)に軸足を据えれば、左腕はプレートの中で挙がり、ストライクゾーンの延長戦上でボールをリリースできることになる。
さらに、移した足場はチェンジアップにも効果をもたらす。右打者の外角低めへ緩く落ちるその球は、一塁側からであればゾーンから外れる傾向にあったが「いい方向に向かっていると思います」。足場の変更でボールの軌道がゾーン内で変化するようになりつつある。
「いまは3球種で(昨季より)少なくなりましたけど、逆に一つ一つの球種に関しては自信を持って投げられているかなと思います」
大谷翔平との今季初対決が注目された登板で、菊池雄星は「進化」に値する87球を投じた。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)