部活と勉強の両立について解説します(漫画:©︎三田紀房/コルク)

記憶力や論理的思考力・説明力や抽象的な思考能力など、「頭がよい」といわれる人の特徴になるような能力というのは、先天的に決められている部分があり、後天的に獲得している能力は少ないと考える人が多いのではないでしょうか。

その考えを否定するのが、偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠氏です。漫画『ドラゴン桜2』(講談社)編集担当で、MBS/TBS系『100%!アピールちゃん』でタレントの小倉優子さんに大学受験の指導もする西岡氏は、小学校、中学校では成績が振るわず、高校入学時には東大に合格するなんて誰も思っていなかったような人が、一念発起して勉強し、偏差値を一気に上げて合格するという「リアルドラゴン桜」な実例を集めて全国いろんな学校に教育実践を行う会社「カルペ・ディエム」を作っています。

そこで集まった知見を基に、後天的に身につけられる「東大に合格できるくらい頭をよくするテクニック」を伝授するこの連載(毎週火曜日配信)。第13回は「部活動や課外活動をやめて勉強に専念すること」の弊害について、西岡氏が解説します。

この連載のほかの記事はこちらからご覧ください。

「文武両道」の東大生はけっこう多い

「東大生って、高校生活を勉強一筋できた人が多いんでしょ?」ということをよく言われます。確かに、東大生と言えば、高校3年間をとにかく勉強に捧げてきたような人……というイメージがありますよね。

しかし実は面白いことに、東大生って意外と「勉強一筋で東大に合格した人」って少ないんです。

高校2年生までは部活一筋だった、という人がけっこういます。文化部が多いというわけでもなく、サッカー部や野球部などの運動部に所属していた人も少なくありません。

これらのことについて正確なデータはありませんが、僕が東大1年生のときに所属していた英語の授業では、7割の人が部活動の元部長または生徒会長経験者でした。かなり多くの人が部活や課外活動も勉強と同時並行で実践していた「文武両道」の東大生なのです。

でもこれって、実は何もおかしなことではないのです。頭がよくなるためには、勉強だけを頑張るよりも運動やその他のことを本気でやったほうがいいのです。このことについて、『ドラゴン桜』で桜木先生がこんなふうに説明しています。


(漫画:©︎三田紀房/コルク)





(漫画:©︎三田紀房/コルク)





(漫画:©︎三田紀房/コルク)




(漫画:©︎三田紀房/コルク)

「勉強も部活も……、の『も』がよくない」

私たちは複数の何かを実践するときに、つい2つのことを同時にやっている感覚になってしまいます。

勉強も部活も、仕事も趣味も、資格試験の勉強もいつもの業務も、と。だから多くの人は、どちらかを切ってどちらかに専念しようとします。僕のところにも、多くの学生が「部活をやめて、勉強に専念したほうがいいでしょうか」と聞いてきます。

でもこれは実はあまり得策ではないのです。確かに片方をやめれば時間を作ることはできるかもしれませんが、だからといって片方をやめてできた時間って、簡単に流れていってしまいます。

「時間がない」という感覚が薄くなることの弊害

これは高校3年生までサッカー部の部長をやっていた東大生から聞いたことなのですが、時間がない人の1時間と、時間がある人の1時間では、1時間の価値が違うのだそうです。

何かのことを複数やっていて時間がない人のほうが1時間をうまくやりくりすることができるようになりますが、何かをやめて時間を作った人は「時間がない」という感覚が薄く、うまく時間をやりくりできなくなってしまうことがあります。

彼自身、一時期部活を離れて勉強しようかと考えたことがあったそうなのですが、いざ時間があるとなると、時間の使い方がびっくりするくらい下手になり、結局部活と勉強を両方やる生活に戻ったのだそうです。

僕は、これはかなり本質的な話だと考えています。

例えば僕は学生に「1週間のタイムスケジュールを教えて」と聞いてシートに書いてもらうことがあるのですが、部活動をやっていたり時間がない子のほうが詳細なタイムスケジュールを書くことができます。逆に勉強だけの子というのは詳細が書けず、「何もやっていない時間/ただ無為にスマホなどをいじってしまっている時間」が非常に長いことが多いです。時間って、あればあるほどいいわけじゃないんですよね。

それに、桜木先生の言っているとおり、1つのことばかりを実践していると、バランスが悪くなってしまいます。

例えばビジネスでも、家族と話をしている時間が長い人のほうが、雑談力が高く結果を出しやすい、という話があります。勉強でも同じように、部活や生徒会などをやっている人のほうが、視野が広くて国語や英語の小説の問題への理解度が高くなる、ということはよくある話です。

何か1つのことに専念していると、視野が狭くなって見えてこなくなることも多くなってしまいます。ニュートンが万有引力を見つけたのは机の上で本を読んでいるときではなくリンゴの木をぼんやり眺めていたときであったように、何か別のことに触れているほうが見えてくることも多くなるというわけですね。

東大生もスーパーマンではない

ちなみに僕は高校3年生のときから浪人1年目のときまで本当に勉強しかしていなかった人間です。それで成績は伸び悩み、うまくいかないことが多かったです。典型的に、1つのことに専念しすぎてどんどん視野が狭くなって余裕がなくなっていってしまった状態でした。


でも、2浪してからは「このままではダメだ」と思い、東大に受かった友だちにアドバイスをもらって、勉強だけでなくランニングをしたり身体を動かしたりするようになりました。

すると伸び悩んでいた成績が上がって、東大に合格することができました。こんなふうに別の何かに触れたほうが、頭がよくなるということもあるのです。そしてそれは、「勉強もランニングも」という意識で実践するのではなく、「片方のために片方が必要だ」という意識のほうが成功しやすいのです。

いかがでしょうか。部活も勉強も、なんてスーパーマンのように聞こえるかもしれませんが、実はそういうわけではないんですよね。「自分は部活をやっていなかったら東大には合格できなかったと思う」なんて語る東大生も複数います。みなさんもそういう意識を持って、物事に取り組んでみてはいかがでしょうか。

(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)