代表合流の前に、AZで残り2試合、ビッグマッチを残している菅原。(C)Getty Images

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 5月22日に行なわれたオランダリーグ・プレーオフ準決勝第2レグで、AZがヘーレンフェーンを2−0で下した。2試合合計4-3と上回り、フィテッセとの決勝戦を戦うことになった。この試合の勝者が来季の欧州カンファレンスリーグに出場する。

 AZの菅原由勢は1−0とリードして迎えた61分から出場し、5バックの右ウイングバックとしてプレー。87分からアディショナルタイムを含む8分間は右CBを務めて、ヘーレンフェーンの反撃を凌いだ。

 今季の菅原は開幕から45試合連続出場を果たしていたが、オランダ・リーグ最終節のRKCでは出番がなく、記録が途絶えてしまった。今回のプレーオフ準決勝第1レグでは84分からの出場に留まった。

「スパルタ戦(第31節)で膝を蹴られてちょっと」と、ヘーレンフェーン戦では左膝にテープを貼りながらプレーした菅原が言った。

「僕は『別に先発でも良い』ということを監督に話しました。昨日もいろんなプランを話したりして、監督とコミュニケーションを取りながらやってます。自分のことを使いたいと思ってくれいるだけでも嬉しいですよね」
 
 20日に発表された日本代表のメンバーに菅原の名前があった。彼にとって、2021年5月以来約1年ぶりのA代表だ。

「代表はいつも勝負。ずっと座っていられる椅子があるわけではない。初招集、久々に選ばれたとか、ずっといるとか関係なく毎回競争があるべきだと思います。特に今回はワールドカップ前で、いろんなものを成熟させていかないと思いますが、僕が代表に行く以上は、自分のパフォーマンスを最大限に出さないといけない。今シーズンやってきたことを含め、自分が持っているものをすべて出せたら良いなと思いますね。いい対戦相手でもあるので」

 右SBのレギュラーである酒井宏樹(浦和)が右足第5中足骨の手術を受けて試合に出られないことから、予てから「日本代表の6月シリーズでは菅原の代表復帰が濃厚」という情報が駆け巡っていたが、そのとおりの代表招集となった。

「どの大会でもイレギュラーなことがたくさん起こる。ブラジル大会のときは、本番前に内田篤人さんが怪我をした。ロシアの前には監督が交代した。もちろん、自分にも起こるかもしれないし、他の選手が怪我をするかもしれない。そのことは誰にも読めない。誰にもチャンスはあると思います。

 今回、僕は自分の力を見せつけて、強豪相手にどこまでプレーをすることができるかやるだけ。予測不可能な部分はありますが、そこはすべて準備に尽きると思う。本当に考えながらやれたらなと思います」

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 2021年夏に行なわれた東京五輪では、メンバーから漏れて一時は失意の時を過ごしたが、AZから「早くオランダに戻ってきてくれ。我々はお前の力が必要なんだ」という連絡を受けて、気持ちを切り替えて今シーズンを迎えた。あれから早くも1年が経とうとしている。

「AZへの移籍をつかめたこと、A代表に入れたりしたということ含め、ここまで確実にいい階段を登ってきすぎたと自分では思っています。オリンピックに行きたかったですけれど、それは自分の実力不足だと何回も言い聞かせた。今でも、それは自分の実力不足だったと考えています。実力不足が全てだと思っていたので、いい意味で割り切ってシーズンに入ることができました。

 今シーズンはかなり試合数をこなせましたし、成長を実感できている。『あの落選が良かった』とは悔しいんで言いたくないですが、それをエネルギーに変えることができたのは良かった。酒井選手が(東京五輪のオーバーエイジ枠で)メンバーに入ったということは、そこが“穴”だと考えられていたということ。自分は攻守においてすべてレベルアップしないといけない。それを突きつけられたので燃えた。『ここからやってやる』という気持ちにさせてくれました」
 
 公式戦出場47試合で1ゴール・7アシスト(うちオランダ・リーグでは1ゴール・4アシスト)という数字に本人は「物足りなさが残る」と語るが、この1年間を振り返って「攻守、すべてにおいてレベルアップした」という実感を得た。

 国際マッチウイークに来ると、AZ内では「お前、代表チームに行くの? どうなの?」という話になる。そこで菅原が「俺、行かないんだよね」と答えると「大丈夫。このパフォーマンスを続けていれば、お前はすぐに日本代表に行ける」と言ってくれたのだという。

「それで、本当にすごく頑張ろうと思いました。このチームは選手同士、そういうところもサポートしてくれる。だから、すごく良いチームだなと思います」

 フィテッセとのプレーオフは26日(アウェー)、29日(ホーム)と続く。6月2日のパラグアイ戦(札幌)との間隔は短いが、まずはAZでの試合にフォーカスし、来シーズンのカンファレンスリーグ行きを決めてから代表に合流したいところだ。

取材・文●中田徹