十年前に、とある事件がきっかけで高校を去った臨時の英語教師の女性と、そのとき教室にいた生徒たちの十年間の挫折、喪失、そして再生を描いた、切ないながらも一歩踏み出す勇気を与えてくれる珠玉の青春漫画『あなたに聞かせたい歌があるんだ』(扶桑社刊)。週刊SPA! での連載から書籍化し、動画配信サービス「Hulu」でも成田凌さん主演で配信が開始。話題の作品の第一話をESSEonlineで無料公開します。原作の燃え殻さん、漫画を担当したおかざき真里さんのコメントも合わせてご紹介。

第1話「夢を殺したのは誰か?」

 

 

燃え殻さん×おかざき真理さんが作品に込めた思い

発売を記念し、原作の燃え殻さんと漫画を担当したおかざき真里さんのコメントを紹介します。

●おかざき真里さん(漫画)

「あんたもね 失敗するなら今しかないわよ あたしは挑戦できなかったことを後悔してこの店に立ってるの 成功するためにやるんじゃないのよ 納得するためにやるのよ 人生は」。

これは、バーのママが小説家志望の青年にかける言葉なんですが、このセリフが本当に大好きで。漫画を描くってしんどい作業で、どこかで手を抜けばいいんですけど、抜くと納得できなくなるので、ここまで描きたいと思ったら描くしかない。つまりは、納得なんですよね。『あなたに聴かせたい歌があるんだ』は、17歳から27歳の十年間の間に、夢に向かってがんばるけど、叶わなかったという人もたくさん出てくる。それを周りが「失敗」だと言ったとしても、納得できたかどうかのほうが大事。燃え殻さんの仕事への姿勢が、原作の中にも通底するテーマとして描かれていたんだなって思います。

1話につき1冊分くらいは描けそうな物語を、10話で1冊にぎゅっとまとめたので、私が今までに描いた漫画の中でも圧倒的に濃密な1冊になっていると思いますので、ぜひ手に取ってみてほしいです!

 

●燃え殻さん(原作)

僕は常々、いま思っていることや感じていること、おもしろいことも悲しいこともすべて通過点と思うことによってやりすごせると思っているんです。この作品の登場人物でいうと、先生にとっては深いトラウマになるようなことが起こる。でも、人にはいろんなトラウマがあると思うんですけど、そのトラウマに一生捉われるわけではないって、思いたい。

週刊SPA! での連載を経て単行本化したんですが、連載中は自分もイチ読者になって、「おぉ、こうなるのか」と楽しみました。正直、つらい仕事も日々たくさんあるんですけど…今回は本当に良かったなと思える仕事でした。単行化にあたって、改めて漫画のゲラを仕事場で通しで読んで、すぐにLINEしたんです。「おかざきさん、おはようございます。いま全部読み返したんですけど感動しました。おかざきさんと一緒にお仕事ができて光栄でした」と。よく、「お金じゃない」とかいうけれど、僕は結構リアリストなので、「なんでこんなにお金が儲からないんだ」と思ってしまうこともあったりして。でも、今回この作品が1冊になるのが本当に嬉しくて、「お金じゃない」としみじみ思いました。