自分の子どもが平均的な子どもと比べてどれだけ寝ているかが気になっている親は少なくないでしょう(写真:polkadot/PIXTA)

世の中の子どもたちはどれくらい眠っているのでしょう?

子どもにとって「十分な睡眠時間」とはどれくらいなのでしょうか?

『米国最強経済学者にして2児の母が読み解く子どもの育て方ベスト』の著者エミリー・オスター氏(ブラウン大学経済学部教授)は膨大な統計データにあたり、実際に乳幼児がどれくらい寝ているのか調査。「子どもの睡眠パターン」と、家庭間・個人差を踏まえたベストな選択を解説します。

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子どもの睡眠時間や昼寝の実態は?

子どもは1日に合計、どれくらい眠るのだろう?

アメリカ全体の平均に基づいた、睡眠時間のメタ解析研究を見てみよう。次の2つのグラフは、この解析をもとに、予測される最長の睡眠時間(夜間)とお昼寝の回数をそれぞれ月齢ごとに示したものだ。

(外部配信先ではグラフなどの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)


(出所)『米国最強経済学者にして2児の母が読み解く子どもの育て方ベスト』(サンマーク出版)

生後2カ月あたりで、平均最長睡眠時間が大きく跳ね上がっている。ここで夜間の睡眠が確立する。この時点からは、子どもの月齢が上がるとともに増加は穏やかになる。お昼寝のグラフにはさらに情報が含まれている。平均お昼寝回数は、生後9〜10カ月に2回に、18〜23カ月に1回へ移行している。この論文は睡眠の合計時間もまとめていて、新生児の平均は1日16時間、1歳では13〜14時間に減少する。

ここから平均的な子どもの睡眠時間が推定できるだろう。とはいえ、平均にぴったり当てはまる子どもばかりではないだろうし、グラフは子どもの間のばらつきを示していない。

ここで登場するのが「スマートフォン」だ。ここ数年間のデータ収集における最大の技術革新は、アプリからデータを集められるようになったことだ。スマートフォンによる子育ての時代になり、私たち研究者のデータ収集はフル回転で進んでいて、睡眠データもその例外ではない。当然、研究者はこの宝の山を調査している。

データが大量にある利点は、人によるばらつきを見ることができる点だ。

2016年、『ジャーナル・オブ・スリープ・リサーチ』誌に掲載された5人の著者による論文では、ジョンソン&ジョンソンの協賛アプリで親が記録した、赤ちゃんの睡眠パターンのデータが利用された。研究では、記録に信頼性があると思われる人々に注目し、841人の子どもの15万6989回の睡眠データを分離した。きめ細かなデータのおかげで、子どもによって睡眠がどれだけ違うかがわかる結果になった。かなり違うのだ。

たとえば、夜間の睡眠時間。研究データでは、生後6カ月の赤ちゃんは平均で夜10時間眠る。先の研究結果とだいたい同じだ。25パーセンタイルの赤ちゃん(下位25%の範囲。あまり寝ない赤ちゃんのはずだ)は9時間で、75パーセンタイルなら11時間だ。では、6カ月の赤ちゃんの全データの範囲はどうだろうか。データには、夜6時間しか眠らない赤ちゃんから15時間眠る赤ちゃんまでいた。子どもは夜何時間眠るかという問いの答えは1つではないのだ。

昼寝に関するデータでも同様のばらつきがあった。日中の睡眠で、1回で一番長い睡眠時間は、生後1年間で平均1時間から約2時間に増えるが、その範囲はかなり大きく、どの年齢でもまったく昼寝をしない子がいれば、3時間連続で眠る子どももいる。

同様に、昼寝が2回から1回に移行するタイミングも様々だ。多くの子どもは、11カ月前後ではっきり区別できるお昼寝を2回し、19〜20カ月には大半は1回になるが、データでは移行期間はかなり長く、お昼寝が1回に切り替わる時期は子どもによって大きく変わることがわかった。

「起きる時間」はどの子もだいたい同じ

つまるところ、生活スケジュールの多くの要素は子どもによって違い、自分の子どものスケジュールはこうした違いに合わせて立てることになる。

だが、何もかもが違うというわけではない。とくにあまり違いがないのは「起床時間」だ。生後5〜6カ月でも、過半数の子どもは午前6〜8時の間に起きている。2歳になる頃には、その幅は小さくなり、6時半〜7時半になる。

夜間の合計睡眠時間には違いがあり、起床時間には違いがないとなると、当然、就寝時間に相当の違いがあるはずだ。実際そうで、睡眠時間を多くしたければ、寝かせる時間を早くすべきかもしれない。現実的に起床時間を遅くできないからだ。就寝時間も起床時間も遅くしようとしても、おそらくうまくいかないはずだ。

少し違う角度から見てみよう。子どもがどこで、どういう状態で眠るかで、睡眠時間に差は生じるのだろうか?

子どもが親と同じ部屋で眠ることは安眠の妨げになる?

アメリカ小児科学会は、SIDS(赤ちゃんが眠っている間に突然亡くなってしまう症例)予防のために赤ちゃんを少なくとも生後6カ月まで、理想的には1歳まで両親の部屋で寝かせることを推奨している。同室であれば、両親が赤ちゃんの様子に注意しやすいという考え方だ。ただし、それ以上親子同室の期間を延長するメリットはないようで、むしろ実際にはリスクが生じる。子どもの睡眠だ。


2017年の研究で、子どもが親と同じ部屋で眠ることが安眠の妨げになるかどうか検討された。結果はその通りだった。生後4カ月では親子同室でも別室でも、赤ちゃんの総睡眠時間は同じだったが、後者のほうが集約していた(続けて眠る時間が長かった)。子ども部屋のほうが静かなのだ。

9カ月では、1人で寝ている赤ちゃんのほうが睡眠時間は長かった。効果は生後4カ月まで1人で寝るようになった子がいちばん大きかったが、4カ月から9カ月の間に子ども部屋に移った子でも効果はあった。

注目に値するのは、子どもが2歳半になってもまだ差が存在していたことだ。生後9カ月までに1人で寝ていた子どもは、同時期に親子同室だった子どもよりも、夜間の睡眠が45分長かったのだ。

子どもの睡眠時間には、次のような結論が導ける。

・睡眠スケジュールにはおおよその目安がある。
夜間の睡眠時間は生後2カ月頃に長くなる
生後4カ月頃にお昼寝3回に移行
生後9カ月頃にお昼寝2回に移行
生後18〜23カ月頃にお昼寝1回に移行
3歳頃にお昼寝がなくなる
・子どもによってばらつきが大きく、親が変えられることはほとんどない。
・いちばんばらつきが少ないのは、起床時間が午前6時半から8時。
・生後数カ月以降の乳幼児は1人で寝たほうがよく眠れる。

(エミリー・オスター : ブラウン大学経済学部教授)