中井貴一・松山ケンイチ 撮影/廣瀬靖士

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中井貴一​「こんなに芝居がやりやすい人はいないなと思いました」

松山ケンイチ「どんな球を投げても受け止めてくれる。芝居以外でも僕のことを見てくれていて、ものすごく安心感があるし、信頼しています」

 お互いの印象を教えてくれた中井貴一と松山ケンイチ。初の日本地図に隠されたドラマを現代の喜劇と、江戸時代の感動秘話の2軸で描く映画『大河への道』で大河ドラマ『平清盛』以来の共演を果たしたふたり。

 作品では、郷土の偉人・伊能忠敬を大河ドラマにしようと奮闘する令和の市役所職員と部下、日本地図を完成させるために心血を注ぐ忠敬の弟子たちを支える天文学者とその助手の一人二役をそれぞれが演じている。

 原作は、立川志の輔の新作落語『大河への道―伊能忠敬物語―』。'11年の初演以来、何度も再演を繰り返す人気作品の存在を耳にした中井が志の輔に直談判したことからスタートした作品が、ついに形となった。

【写真】松山ケンイチの話にじっくりと耳を傾ける中井貴一

プライベートの雰囲気を映画でも

中井「ここ数年、時代劇の残しかたというものをいろいろと考えてきました。そんな中、現在と過去を行き来する物語の場合、ほとんどがタイムスリップという手法がとられますが、この落語に関してはタイムスリップを使うことなくふたつの時間をひとつの映画の中に存在させることができる。

 自分の中でぼんやりとそんな映像が浮かんだので志の輔さんに“映画化させていただけませんか”と、お話を持っていきました」

 当初、中井は俳優として参加する予定はなかったのだという。

中井「企画だけでいいかなと思っていたんです。ただ、(市役所職員の)木下という役は最初から松山くんがいいなと思っていました。芝居をすると相手の素の部分がよくわかる。

 以前、共演させていただいたときに、彼の力の抜き方が素晴らしいと思ったんです。仕事とプライベートの区別だったり、興味があることとないことがはっきりしていたり。そこに木下との共通点みたいなものを感じて、直接、松山くんに電話をして逃げられない状況をつくりました(笑)」

松山「(オファーを受けたのは)圧力をかけられて、っていうことではないですよ(笑)。貴一さんとは大河ドラマ『平清盛』などで親子役をやらせていただいたご縁があります。こんなに笑わせてくださる俳優さんはいません。すごく話が面白い方なんです。プライベートでも楽しい時間を過ごさせていただいていて、その雰囲気を今回初めてカメラの前で出せるなと思って、お話を引き受けさせていただきました」

田舎での生活で連携プレーができる

 共演の北川景子が撮影時を振り返り、「ふたりともずっと笑っていて、子ども同士がじゃれているようでした」と語った雰囲気は、このインタビューでも。天文暦学を究めたいと自ら日本中を歩き、日本地図を作り上げた忠敬のように何か極めたいことがあるかを聞くと、

中井「松山くんはいっぱいあると思いますよ」

松山「まずは、トマトジュース。そして、革製品。田舎での生活を極めたいんですよ。衣食住を自分で完結できるようになりたいんです」

中井「松山くん、いま田舎生活をなさってらして。そこで作ったトマトジュースを映画の現場に持ってきてくださったんです。本当においしくて。

 “うまいな”って言ったら、“貴一さん、こんなもんじゃないです”と。まだ、時期が早いトマトだったようで(笑)。それから、革製品も作っていらして。人間が生活する中でやむを得ず廃棄される革を無駄にせず、別の形で蘇らせる取り組みをなさっている」

松山「はい。いまも貴一さんの誕生日プレゼントの長財布を作っているんですけど」

中井「ただ、誕生日(9月18日)過ぎてますけどね(笑)」

松山「だいぶたってしまいましたが、制作中です!!すみません!!(笑)」

中井「彼とは年齢的に23歳ちがうのかな。ですけど、僕も田舎生活っていいなと思っているんです。どこかで牧場をやりたいという気持ちがあって。子どものころから馬が好きで、馬と一緒に寝たいというのが夢なんです。僕が牧場をやって、松山くんには農業をやってもらって」

松山「馬糞は堆肥として、かなりいいので。連携できると思います!!」

中井「僕と松山くんの話、答えとして合っていますか?(笑)。若いころ我慢して60代になった僕らの世代って、いま、ようやく発言できる年齢になったと思うんです。

 でもこれからは、松山くんたち若い世代が主軸となって自分たちの未来を考え、今を作っていき、私たち世代は若者たちが声を上げる場所を提供し、応援する。もちろん、苦言も含めて……。これからは、そういう社会にすべきだと思っています」

今作で感じた相手の魅力とは?

中井:今回、自分も俳優として参加することが決まって、余計に松山くんと一緒にやることにこだわりました。なんていうんですかね、変な緊張をしなくていいんです。いい加減なんですよ。本当に、いい加減といいかげんの間にいる感じがあるっていうんですかね(笑)。

 僕がどんな芝居をしても、それに松山くんがどう返してくれても成立する。それができるパートナーってそういないんです。

松山:僕も同じように感じていて、貴一さんはどんな球を投げても全部受け止めてくれる。だから、自由にカメラの前で演技ができました。本編ではカットされてしまったシーンがたくさんあるんです。本当は、そのシーンも全部見てもらいたいですね(笑)。

 先ほど貴一さんが話されていた、時代劇をどう残していくか、どう継承していくかを考えていらっしゃることにすごく影響を受けています。僕自身もいろいろなことを受け継いでいかなくちゃと。

笑いと感動の歴史発見エンターテイメント
映画『大河への道』5月20日全国ロードショー 配給:松竹

〈【松山ケンイチ】スタイリスト/五十嵐堂寿 ヘアメイク/勇見勝彦(THYMON Inc.)衣装協力:ジャケット、パンツ/ともにトゥモローランド ピルグリム(トゥモローランド)、Tシャツ/ジェームス パース(ジェームス パース 青山店)、ほか私物〉